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智囊 / 制勝・李靖

蕭銑之罷兵營農也,才留宿衛數千人。聞唐兵至,大懼,倉卒徵兵,皆在江嶺之外,道途阻遠,不能遽集。乃悉見兵出拒戰,孝恭將擊之,李靖止之曰:「彼救敗之師,策非素立,勢不能久,不若且駐南岸,緩之一日,彼必分其兵,或留拒我,或歸自守,兵分勢弱,我乘其懈而擊之,蔑不勝矣!今若急之,彼則並力死戰,楚兵剽銳,未易當也。」孝恭不從,留靖守營,自帥銳師出戰,果敗走,趣南岸。銑眾委舟,收掠軍資,人皆負重。靖見其眾亂,縱兵奮擊,大破之。乘勝直抵江陵,入其外郭,大獲舟艦。李靖使孝恭盡散之江中,諸將皆曰:「破敵所獲,當借其用,奈何棄以資敵?」靖曰:「蕭銑之地,南出嶺表,東距洞庭,吾懸軍深入,若攻城未拔,援兵四集,吾表裡受敵,進退不獲,雖有舟楫,將安用之?今棄舟艦,使塞江而下,援兵見之,必謂江陵已破,未敢輕進,往來窺伺,動淹旬月,吾取之必矣。」銑援兵見舟艦,果疑不進。

新字:蕭銑之罷兵営農也,才留宿衛数千人。聞唐兵至,大懼,倉卒徴兵,皆在江嶺之外,道途阻遠,不能遽集。乃悉見兵出拒戦,孝恭将撃之,李靖止之曰:「彼救敗之師,策非素立,勢不能久,不若且駐南岸,緩之一日,彼必分其兵,或留拒我,或帰自守,兵分勢弱,我乗其懈而撃之,蔑不勝矣!今若急之,彼則並力死戦,楚兵剽鋭,未易当也。」孝恭不従,留靖守営,自帥鋭師出戦,果敗走,趣南岸。銑衆委舟,収掠軍資,人皆負重。靖見其衆乱,縦兵奮撃,大破之。乗勝直抵江陵,入其外郭,大獲舟艦。李靖使孝恭尽散之江中,諸将皆曰:「破敵所獲,当借其用,奈何棄以資敵?」靖曰:「蕭銑之地,南出嶺表,東距洞庭,吾懸軍深入,若攻城未抜,援兵四集,吾表裡受敵,進退不獲,雖有舟楫,将安用之?今棄舟艦,使塞江而下,援兵見之,必謂江陵已破,未敢軽進,往来窺伺,動淹旬月,吾取之必矣。」銑援兵見舟艦,果疑不進。

書き下し

蕭銑の兵を罷めて農に営ましむるや、才かに宿衛数千人を留めたるのみ。唐兵の至るを聞き、大いに懼れ、倉卒に兵を徴するも、皆江嶺の外に在り、道途阻遠にして、遽かには集まる能わず。乃ち悉く見兵を出して戦いを拒ぐ。孝恭将に之を撃たんとす。李靖之を止めて曰く、「彼は敗を救うの師にして、策は素より立たず、勢い久しき能わず。且く南岸に駐まり、之を緩くすること一日にしかず。彼必ず其の兵を分かち、或いは留まりて我を拒ぎ、或いは帰りて自ら守らん。兵分かれ勢い弱まらば、我其の懈るに乗じて之を撃たば、勝たざる蔑し。今若し之を急にせば、彼は則ち力を並せて死戦せん。楚兵は剽鋭にして、未だ当たり易からず」と。孝恭従わず、靖を留めて営を守らしめ、自ら鋭師を帥いて出戦し、果たして敗走して南岸に趣く。銑の衆舟を委て、軍資を収掠し、人皆重きを負う。靖其の衆の乱れたるを見て、兵を縦ちて奮撃し、大いに之を破る。勝ちに乗じて直ちに江陵に抵り、其の外郭に入り、大いに舟艦を獲たり。李靖、孝恭をして尽く之を江中に散ぜしむ。諸将皆曰く、「敵を破りて獲る所は、当に其の用を借るべし。奈何ぞ棄てて以て敵に資するや」と。靖曰く、「蕭銑の地は、南は嶺表に出で、東は洞庭に距る。吾は軍を懸けて深く入り、若し城を攻めて未だ抜けず、援兵四もに集まらば、吾は表裏に敵を受け、進退獲ず。舟楫有りと雖も、将た安くにか用いん。今舟艦を棄て、江を塞ぎて下らしめば、援兵之を見て、必ず江陵は已に破れたりと謂い、未だ敢えて軽々しく進まず。往来窺伺して、動もすれば旬月を淹まらん。吾が之を取ること必せり」と。銑の援兵、舟艦を見て、果たして疑いて進まず。

現代語訳

蕭銑は兵を解散して農業に就かせていたので、宿営の護衛兵を数千人残しているだけでした。唐軍が来ると聞いて大いに恐れ、慌てて兵を徴集しましたが、みな長江や嶺南の外にいて、道が遠く険しく、すぐには集まりません。そこで、手元の兵をすべて出して防ぎました。李孝恭が撃とうとすると、李靖が止めて言いました。「彼らは敗戦を救うための軍で、策は日頃から立てておらず、勢いは長続きしません。しばらく南岸にとどまり、一日ほど緩めるのがよい。敵は必ず兵を分け、留まって我々を防ぐ者と、帰って自分の城を守る者とが出る。兵が分かれて勢いが弱まれば、その緩みに乗じて撃つと、勝てないことはありません。今急いで攻めれば、敵は力を合わせて死に物狂いで戦います。楚の兵は素早く鋭く、簡単には当たれません」。李孝恭は聞き入れず、李靖を留めて陣を守らせ、自ら精鋭を率いて出撃しましたが、果たして敗れ、南岸に逃げ戻りました。蕭銑の兵は舟を捨てて物資を略奪し、誰もが重い荷を背負っていました。李靖はその乱れを見て、兵を放って奮戦し、大いに破りました。勝ちに乗じてそのまま江陵に着き、外城に入り、多くの舟や艦船を獲得しました。李靖は李孝恭に、それらをすべて川の中に流させました。諸将は皆言いました。「敵を破って得たものは、使うべきです。なぜ捨てて敵の助けにするのですか」。李靖は言いました。「蕭銑の領地は、南は嶺南に出て、東は洞庭湖に至る。我々は軍を孤立させて深く入り込んでいる。もし城を攻めて抜けず、援兵が四方から集まれば、我々は前後から敵を受け、進退できなくなる。舟があっても何の役に立つか。今、舟を捨て、川を埋めて流れ下らせれば、援兵はそれを見て、必ず江陵はすでに破れたと思い、軽々しく進まない。行ったり来たりして様子をうかがい、ひと月ほどは足止めされるだろう。私が江陵を取るのは確実だ」。蕭銑の援兵は舟艦を見て、果たして疑って進みませんでした。

解説

李靖の判断は二段構えです。まず、敵が追い詰められているときに急いで攻めず、分散を待ちます。これは、窮地の相手に退路のない戦いをさせない配慮です。もう一つは、戦利品の舟を捨てて、援軍に誤った情報を与えました。得たものを使うより、相手の判断を狂わせるほうが価値が高いと見たわけです。現代の競争でも、目先の取り分より、相手にどう見えるかを計算に入れる視点が役立ちます。孝恭が聞かずに出て危うかった点も、助言を受け入れる大切さを示します。

この章句が説くこと

緩之一日棄舟艦李靖孝恭蕭銑心理戦

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