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智囊 / 善言・施仁望

南唐周鄴為左衙使,信州刺史本之子也,與禁帥劉素有隙。升元中,金陵告災,鄴方潛飲人家,醉不能起,有聞於主者,主顧親信施仁望曰:「率衛士十人詣災所,見其馳救則釋,不然,就戮於牀!」仁望既往,亟使召鄴家語之。鄴大怖,衣女子服,奔見仁望。仁望留之,洎火息,覆命,至便殿門,會劉先至,亦將白災事。仁望揣劉意不能蔽鄴,又懼與偕罪,計出倉卒,遽排劉,越次見主,曰:「不為災,鄴誠如聖旨。」主曰:「戮之乎?」仁望曰:「鄴父本方臨敵境,臣未敢即時奉詔。」主撫幾大悅曰:「幾誤我事!」仁望自此大獲獎用,鄴乃全恕。

新字:南唐周鄴為左衙使,信州刺史本之子也,与禁帥劉素有隙。升元中,金陵告災,鄴方潜飲人家,酔不能起,有聞於主者,主顧親信施仁望曰:「率衛士十人詣災所,見其馳救則釈,不然,就戮於牀!」仁望既往,亟使召鄴家語之。鄴大怖,衣女子服,奔見仁望。仁望留之,洎火息,覆命,至便殿門,会劉先至,亦将白災事。仁望揣劉意不能蔽鄴,又懼与偕罪,計出倉卒,遽排劉,越次見主,曰:「不為災,鄴誠如聖旨。」主曰:「戮之乎?」仁望曰:「鄴父本方臨敵境,臣未敢即時奉詔。」主撫幾大悦曰:「幾誤我事!」仁望自此大獲獎用,鄴乃全恕。

書き下し

南唐の周鄴、左衙使為り、信州刺史本の子なり。禁帥劉素と隙有り。升元中、金陵災を告ぐ。鄴方に潜かに人家に飲み、酔いて起つ能わず。主に聞こゆる者有り、主親信の施仁望を顧みて曰く、「衛士十人を率いて災所に詣り、其の馳せ救うを見れば則ち釈せ、然らずんば、牀に就きて戮せ」と。仁望既に往き、亟かに鄴の家を召して之に語げしむ。鄴大いに怖れ、女子の服を衣て、奔りて仁望に見ゆ。仁望之を留む。火息むに洎び、命を覆し、便殿の門に至る。会たま劉先に至り、亦た災の事を白さんとす。仁望、劉の意が鄴を蔽う能わざるを揣り、又た与に罪を偕にするを懼れ、計は倉卒に出で、遽かに劉を排して、次を越えて主に見え、曰く、「災を為さず、鄴は誠に聖旨の如し」と。主曰く、「之を戮せしか」と。仁望曰く、「鄴の父本は方に敵境に臨む。臣未だ敢えて即時に詔を奉ぜず」と。主几を撫して大いに悦びて曰く、「幾んど我が事を誤らんとす」と。仁望此より大いに獎用を獲、鄴乃ち全く恕さる。

現代語訳

南唐の周鄴は左衙使で、信州刺史の周本の子であった。禁軍の長官である劉素と仲が悪かった。升元の年間に、金陵で火事が起きた。周鄴はそのとき、ひそかに人家で酒を飲み、酔って起き上がれなかった。これを君主に告げる者がおり、君主は側近の施仁望を呼んで言った。「衛士十人を率いて火災の現場に行き、鄴が駆けつけて消火に当たっているのなら許せ。そうでなければ、寝床のところで斬れ」。仁望は出向くと、まず急いで周鄴の家の者を呼んで事情を伝えさせた。周鄴は大いに恐れ、女の服を着て、走って仁望に会いに来た。仁望は彼を引き留めた。火が収まると、復命のため便殿の門まで来た。そこへ劉素が先に来ていて、同じく火事のことを報告しようとしていた。仁望は、劉素が周鄴をかばうはずがないと推し量り、また一緒に罪を問われるのを恐れ、とっさに考えて、いきなり劉素を押しのけて順番を越え、君主にお目にかかって言った。「消火には動きませんでした。鄴はまことに陛下のお見立てどおりです」。君主は「斬ったのか」と尋ねた。仁望は言った。「鄴の父の本は、ちょうど敵の国境に臨んでおります。私は即座に詔を奉じることを控えました」。君主は机をたたいて大いに喜び、言った。「危うく我が大事を誤るところだった」。仁望はこれ以後、大いに重用され、周鄴も完全に赦された。

解説

大火の最中に酒に酔って消火に出なかった左衙使を、主は斬れと命じていました。施仁望は、その場で処刑せず本人に事情を知らせ、さらに宿敵の劉素が先に報告して罪を重くしようとするのを遮って、先に主に会いました。そして、父が国境で敵に備えている最中なので即刻の処刑をためらったと述べ、主の怒りを情勢判断へ切り替えています。命令を機械的に執行すれば後で取り返しがつかない場合、いったん保留して上司に再考の材料を示すのも忠義です。ただし、仁望の最初の一言の意味などには文意が確かでない箇所があります。

この章句が説くこと

率衛士十人就戮於牀臣未敢即時奉詔危機管理命令保留情勢判断

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