智囊 / 辯才・王守仁
所云奏功升職,意亦如此。夫鏟除寇盜,以撫綏平良,亦守士常職。今縷舉以要賞,則朝廷平日之恩寵祿位,顧將何為?使君為參政,已非設官之舊,今又干進不已,是無抵極也,眾必不堪。夫宣慰,守土之官,故得以世有其土地人民;若參政,則流官矣,東西南北,唯天子所使,朝廷下方尺之檄,委使君以一職,或閩或蜀,弗行,則方命之誅不旋踵而至。若捧檄從事,千百年之土地人民,非復使君有矣。由此言之,雖今日之參政,使君將恐辭之不速,又可求進乎?」後驛竟不減。〔評〕此書土官宜寫一通置座右。
新字:所云奏功升職,意亦如此。夫鏟除寇盗,以撫綏平良,亦守士常職。今縷舉以要賞,則朝廷平日之恩寵禄位,顧将何為?使君為参政,已非設官之旧,今又干進不已,是無抵極也,衆必不堪。夫宣慰,守土之官,故得以世有其土地人民;若参政,則流官矣,東西南北,唯天子所使,朝廷下方尺之檄,委使君以一職,或閩或蜀,弗行,則方命之誅不旋踵而至。若捧檄従事,千百年之土地人民,非復使君有矣。由此言之,雖今日之参政,使君将恐辞之不速,又可求進乎?」後駅竟不減。〔評〕此書土官宜写一通置座右。
書き下し
云う所の功を奏して職を升せんとするも、意も亦た此くの如し。夫れ寇盗を鏟除して以て平良を撫綏するは、亦た土を守る常職なり。今、縷挙して以て賞を要むれば、則ち朝廷平日の恩寵禄位、顧って将た何をか為さん。使君の参政と為るは、已に設官の旧に非ず。今又進むを干めて已まず、是れ抵極無きなり。衆は必ず堪えず。夫れ宣慰は、土を守るの官なり。故に世よ其の土地人民を有するを得。参政の若きは、則ち流官なり。東西南北、唯だ天子の使する所なり。朝廷、方尺の檄を下し、使君に一職を委ぬれば、或いは閩、或いは蜀、行かずんば、則ち命に方うの誅旋踵せずして至らん。若し檄を捧げて事に従わば、千百年の土地人民は、復た使君の有に非ず。此れに由りて言わば、今日の参政と雖も、使君は将に之を辞すること速やかならざるを恐る。又進むを求む可けんや」。後、驛竟に減ぜられず。〔評〕此の書、土官宜しく一通を写して座右に置くべし。
現代語訳
功績を上奏して官職を上げようとしているというお考えも、同じ筋の話です。盗賊を除いて善良な人々を安んじるのは、土地を守る者の通常の職務です。いま一つ一つ数え上げて賞を求めるなら、朝廷が普段与えている恩寵や禄位は、いったい何のためなのでしょうか。使君が参政になったことは、すでに官を設けた昔の制度とは違っています。いままた昇進を求めてやまないのは、限りがありません。人々はきっと耐えられないでしょう。宣慰使は、土地を守る官であるため、世襲して土地と人民を保有できます。しかし参政は流官です。東西南北、ただ天子の使わすままに動く官です。朝廷が一枚の文書を出して、使君に一つの職を命じれば、閩であれ蜀であれ、行かなければ命令に背く罪で誅罰が直ちにやって来ます。もし文書を捧げて任務に従えば、千百年の土地と人民は、もう使君のものではありません。これによって言えば、いまの参政でさえ、使君は辞退するのが遅すぎないかと心配です。まだ昇進を求めることができましょうか。」その後、駅はついに減らされませんでした。〔評〕この書簡は、土官たるもの、一通を写して座右に置くべきである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』八説第四十七明主の國は、官を遷し級を襲ね、官爵功を受く、故に貴臣有り。言行を度らずして僞有らば、必ず誅す、故に重臣無きなり。
-
『政談』官位爵祿の次第並に勳階頭助允目の事且又役人を年久しく役換をさせねは、述懐することなく、其の役に器量相応にて、能く役儀のことを取り捌く人を外の役に替ふることは惜きことなり、是によりて一役に久しく仕置きて役換を申付ぬ時、加增か官位この外仕方なし、是上より下へ賜はりて下たるものに、勇まする道具少き故人を使ふに行支なるなり、町奉行、盗賊奉行なとをする人、役儀を能く勤めて外の役に換へ措しけれと、加增も度々はやられす、是非なく大目付などに役換をさせて、外の人を後役に申付たるとき、幾人申付けても初め大目付に役換をさせたる人の如き人なからんとき、又其人を元役に返すこと後へ歩むことなれは申付け難し、是は譬なり、外の役儀にも箇様なることあるへし、此差支皆な一役一席に立てたるより起りたるなり、
-
『正法眼蔵随聞記』巻三一日示して云く、宋土の海門禅師、天童の長老たりし時、会下に元首座と云僧ありき、この人は得法悟道の人にて、行持長老にも超たり、有時夜る方丈に参じて、焼香礼拝して云く、請すらくは某甲に後堂首座を許せと、時に禅師流涕して云く、我れ小僧たりし時より、未た此の如きの事を聞かず、汝坐禅僧として首座長老を所望すること大ひなる錯なり、なんぢ既に悟道せること我れにも越いたり、然あるに首座を望むこと是れ昇進の為か、許すことは前堂をも乃至長老をも許すべし、その心操卑劣なり、誠に是を以て余の未悟の僧は推察せられたり、仏法の衰微せること是を以て知ぬべしと云ふて、流涕悲泣す、
-
『長短経』察相天中は貴を主る。気平らかに満つる者は官禄に宜しきなり。〔天中は最も高く、髪際に近し。黄色を発し、上は正角に入り、高広に至れば、参駕して刺史牧守に遷る。黄色、日月の如く、天中の左右に在れば、天子に侍るなり。黄色、天中を出でて、円大光重なる者は、暴かに天子に見え、功有りて封を受く。年を経て井竈に及び、恒に黄気有りて、鐘鼓を懸くるが如きは、三公の相なり。又た黄気を発して龍形の如きも、亦た封を受くるなり。四時の官気、天部に発して、鏡光の如き者は、暴貴の相なり。〕
-
『韓非子』顯學第五十故に孔子曰く、「容を以て人を取らんか、之を子羽に失す、言を以て人を取らんか、之を宰予に失す。」・・・故に明主の吏・宰相は必ず州部より起こり、猛將は必ず卒伍より發る。
-
『政談』出家の公事の事出家程公事を好むものはなし、第一死罪になる気遣ひなし、妻子の足手まとひなし、元来住所を定めぬものなれは追放悲ます、法問論議を仕なれて理強く我慢なる者なり、偖出家の公事を能く捌きても国家の治めの益にならず、悪しく捌きても害にもならず、詮もなきこと多し、本此の公事曹洞宗に多きことなり、勧請開山と云ふことあるより起ると也、勧請開山と云ふこと元来公事を巧みて仕たしたることなれは偽なり、宗派の祖師の御影を其の寺に据ゑ置くことはあるべし、住持もせぬ人を第一世にすることなるまじきことの第一停止あるべきことなり、臨済派は宗派を堅くまもる門宗派の寺より外へなをることならす、何れの派よりも本寺へ輪番する故寺の高下に搆はす僧臘次第なり、故に公事少し、曹洞宗は伽藍相続と云ふことをして宗派乱れたる故、寺々格を守り、僧臘に搆はす本寺へもなをるなるによりて、寺法の害になる也、惣して寺を争ひ、金銀を争ふことは仏法に背くことなれは、公事には勝ちたりとも綸旨口帖を奪ふて平僧とすべきことなり、其の出家は徒刑たるへし、然らば自から出家の公事少くなるべし、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る