智囊 / 敏悟・秦觀・蘇軾・蘇小妹
秦少游為謎難東坡,云:「我有一間房,半間租與轉輪王。有時射出一線光,天下邪魔不敢當。」坡公應聲曰:「我有一張琴,琴弦藏在腹。憑君馬上彈,彈盡天下曲。」小妹曰:「我有一隻船,一人搖櫓一人牽;去時牽纜去,來時搖櫓還。」三謎皆指木馬,而後二謎更勝。
新字:秦少游為謎難東坡,云:「我有一間房,半間租与転輪王。有時射出一線光,天下邪魔不敢当。」坡公応声曰:「我有一張琴,琴弦蔵在腹。憑君馬上弾,弾尽天下曲。」小妹曰:「我有一隻船,一人揺櫓一人牽;去時牽纜去,来時揺櫓還。」三謎皆指木馬,而後二謎更勝。
書き下し
秦少游、謎を為して東坡を難ず。云く、「我に一間の房有り、半間は転輪王に租与す。時有って一線の光を射出し、天下の邪魔、敢えて当たらず」と。坡公、声に応じて曰く、「我に一張の琴有り、琴弦は腹に蔵す。君が馬上に弾ずるに憑せ、弾き尽くす天下の曲」と。小妹曰く、「我に一隻の船有り、一人は櫓を揺かし一人は牽く。去る時は纜を牽いて去り、来る時は櫓を揺かして還る」と。三謎、皆木馬を指す。而して後の二謎、更に勝れり。
現代語訳
秦少游が謎かけを作って蘇東坡を試した。「私に一間の部屋がある。半分は転輪王に貸している。ときどき一筋の光を放ち、天下の邪魔ものも近づけない」。東坡公はすぐに答えた。「私に一張の琴がある。弦は腹の中にしまってある。君が馬上で弾くのにまかせれば、天下の曲を弾き尽くせる」。妹君(蘇小妹)は言った。「私に一艘の船がある。一人は櫓をこぎ、一人は綱を引く。行くときは綱を引いて行き、帰るときは櫓をこいで戻る」。三つの謎はみな木馬を指しており、後の二つはとくにすぐれている。
解説
秦観が出した謎に、蘇軾とその妹が即座に謎で返した話です。三人の答えは同じ木馬ですが、見立てが違います。一番目は体を張った遊び、二番目は馬上の琴、三番目は船の往復と、発想が一つずつ広がっていきます。『智囊』はこれを敏悟、つまり頭の回転の速さの例に置いています。管理職の場面で言えば、同じ課題を前に誰かが出した案を、一度受け止めて別の切り口で言い直せる人が議論を前へ進めます。正解を言い当てる速さより、相手の問いの形に合わせて返す柔らかさが、会議や商談で効いてくる力です。
この章句が説くこと
一線の光馬上に弾ず船を牽く敏悟発想の転換機転
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