智囊 / 應卒・張彀
張彀為同州觀察判官,是時出兵備邊州,徵箭十萬,限以雕雁羽為之,其價翔踴,不可得。彀曰:「矢,去物也,何羽不可?」節度使曰:「當須省報。」彀曰:「州距京師二千里,如民急何?一有責,下官任之。」一日之間,價減數倍,尚書省竟如所請。
新字:張彀為同州観察判官,是時出兵備辺州,徴箭十万,限以雕雁羽為之,其価翔踴,不可得。彀曰:「矢,去物也,何羽不可?」節度使曰:「当須省報。」彀曰:「州距京師二千里,如民急何?一有責,下官任之。」一日之間,価減数倍,尚書省竟如所請。
書き下し
張彀、同州の観察判官たり。この時、兵を出して辺州に備え、箭十万を徴するに、限るに雕・雁の羽を以て為さしむ。その価翔踊して得べからず。彀曰く、「矢は去る物なり、何の羽か不可ならん」と。節度使曰く、「当に省報を須つべし」と。彀曰く、「州は京師を距つること二千里、民の急をいかんせん。一たび責むる有らば、下官これに任ぜん」と。一日の間に価数倍を減じ、尚書省ついに請う所の如くす。
現代語訳
張彀は同州の観察判官であった。このとき兵を出して辺境の州を守ることになり、矢十万本を徴発したが、羽は鷲か雁のものを使うよう限定されていた。そのため羽の値段が跳ね上がり、手に入らなくなった。張彀は言った。「矢は飛んでいくものだ。どんな羽でも構わないではないか。」節度使は言った。「中央への報告を待たねばならない。」張彀は言った。「この州から都までは二千里もあり、民の急を待っていられません。もし責められることがあれば、私が引き受けます。」一日のうちに羽の値段は数分の一に下がり、尚書省も最終的に彼の申し出どおりに認めた。
解説
矢の羽に鷲や雁と指定したため、市場で品薄になり価格が高騰したという、規格の過剰が招いた混乱です。張彀は、矢の本質は飛ぶことにあり、羽の種類は問わないと見抜き、仕様を現場の判断で緩めました。上への報告を待てば二千里先で時間を失うため、責任は自分で負うと引き受けた点が決め手です。管理職も、仕様書の字面に縛られて目的の達成を遅らせてはいけません。ただし、責任を負うと言い切れる覚悟と、後で追認してもらえる見通しがあってこそ成り立つ判断で、軽々しく真似てよいわけではありません。
この章句が説くこと
雕雁羽矢去物也一有責下官任之仕様緩和責任を負う判断
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