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智囊 / 靈變・顧琛・李迪

宋文帝遣到彥之經略河南,大敗,悉委棄兵甲,武庫為之空虛。帝宴會,有歸化人在座,帝問庫部郎顧琛:「庫中仗有幾許?」琛詭辭答:「有十萬人仗。舊庫仗秘,不知多少。」帝既發問,追悔失言,得琛此對,甚喜。真宗不豫,李迪與宰執以祈禳宿內殿。時仁宗幼衝,八大王元儼素有威名,以問疾留禁中,累日不出。執政患之,無以為計,偶翰林司以金盂貯熟水,曰:「王所需也。」迪取案上墨筆攪水中盡黑,令持去,王見之,大驚。意其毒也,即上馬馳去。

新字:宋文帝遣到彦之経略河南,大敗,悉委棄兵甲,武庫為之空虚。帝宴会,有帰化人在座,帝問庫部郎顧琛:「庫中仗有幾許?」琛詭辞答:「有十万人仗。旧庫仗秘,不知多少。」帝既発問,追悔失言,得琛此対,甚喜。真宗不予,李迪与宰執以祈禳宿内殿。時仁宗幼衝,八大王元儼素有威名,以問疾留禁中,累日不出。執政患之,無以為計,偶翰林司以金盂貯熟水,曰:「王所需也。」迪取案上墨筆攪水中尽黒,令持去,王見之,大驚。意其毒也,即上馬馳去。

書き下し

宋の文帝は到彦之を遣わして河南を経略せしむるも、大いに敗れ、悉く兵甲を委棄し、武庫は之が為に空虚なり。帝の宴会に、帰化人の座に在る有り。帝は庫部郎の顧琛に問う、「庫中の仗は幾許か有る」と。琛は詭辞して答う、「十万人の仗有り。旧庫の仗は秘にして、多少を知らず」と。帝は既に発問し、追いて失言を悔ゆるも、琛の此の対を得て、甚だ喜ぶ。真宗の不豫なるや、李迪は宰執と祈禳を以て内殿に宿す。時に仁宗は幼衝にして、八大王の元儼は素より威名有り、問疾を以て禁中に留まり、累日出でず。執政は之を患え、為に計る無し。偶々翰林司が金の盂を以て熟水を貯え、曰く、「王の需むる所なり」と。迪は案上の墨筆を取りて水中に攪せば盡く黒し、持ち去らしむ。王は之を見て大いに驚く。其の毒かと意い、即ち馬に上りて馳せ去れり。

現代語訳

宋の文帝は、到彦之を遣わして河南を攻略させたが、大敗し、武具をことごとく捨てて、武器庫が空になってしまった。皇帝が宴会を開いたとき、帰順した異国の人が座にいた。皇帝は庫部郎の顧琛に尋ねた。「倉庫の武器はどれくらいあるか」。琛は偽って答えた。「十万人分の武器があります。古い倉庫の武器は秘蔵していて、どれだけあるかは分かりません」。皇帝は問うてしまってから、うっかり失言したと悔いていたが、琛のこの返答を得て、たいへん喜んだ。真宗が病んだとき、李迪は宰相らとともに祈禱のため内殿に泊まっていた。そのころ仁宗はまだ幼く、八大王の元儼は昔から威名があり、病気見舞いと称して宮中に留まり、何日も出なかった。執政たちはこれを憂えたが、策がなかった。たまたま翰林司が金の鉢に湯冷ましを入れて、「王がお求めのものです」と言った。迪は机の上の墨筆を取って水の中でかき混ぜ、すっかり黒くして、持って行かせた。王はこれを見て大いに驚いた。毒かと思い、すぐに馬に乗って走り去った。

解説

顧琛は、機密を問われたとき、具体的な数字を言わず、できる限り大きな虚勢の答えを選び、さらに旧庫は秘蔵だから分からない、と逃げ道を用意しました。国力の弱みを外国人の前で明かさない配慮です。李迪の話は、水を墨で黒くして、毒が入っているかのように見せて相手を恐れさせる策で、直接対決を避けて、相手に自ら退く判断をさせています。両方とも、真実をそのまま示すことが得策でない局面で、相手に与える印象を操作して目的を達する例です。ただし、虚偽や脅しの手法は信頼を損なうこともあり、使うべき場面を慎重に選ぶ必要があります。

この章句が説くこと

十万人仗詭辞墨水危機管理虚勢印象操作

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