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智囊 / 靈變・劉備

曹公素忌先主。公嘗從容謂先主曰:「今天下英雄,唯使君與操耳!本初之徒,不足數也!」先主方食,失匕箸。適雷震,因謂公曰:「聖人云,訊雷風烈必變。良有以也。一震之威,乃至於此,」〔述評〕相傳曹公以酒後畏雷,閒時灌圃輕先主,卒免於難。然則先主好結髦,焉知非灌圃故智?

新字:曹公素忌先主。公嘗従容謂先主曰:「今天下英雄,唯使君与操耳!本初之徒,不足数也!」先主方食,失匕箸。適雷震,因謂公曰:「聖人云,訊雷風烈必変。良有以也。一震之威,乃至於此,」〔述評〕相伝曹公以酒後畏雷,閒時灌圃軽先主,卒免於難。然則先主好結髦,焉知非灌圃故智?

書き下し

曹公は素より先主を忌む。公は嘗て従容として先主に謂いて曰く、「今、天下の英雄は、ただ使君と操とのみ。本初の徒は数うるに足らず」と。先主は方に食し、匕箸を失う。適々雷震う。因りて公に謂いて曰く、「聖人云う、迅雷風烈には必ず変ず、と。良に以有るなり。一震の威、乃ち此に至る」と。〔述評〕相い伝う、曹公は酒後に雷を畏れ、閒時に圃に灌ぎて先主を軽んじ、卒に難を免る、と。然れば則ち先主の好んで髦を結ぶは、焉んぞ灌圃の故智に非ざるを知らん。

現代語訳

曹操はもとから劉備を警戒していた。あるとき曹操はゆったりと劉備に言った。「今、天下の英雄といえば、あなたと私だけだ。袁紹の連中など、数に入らない」。劉備はちょうど食事中で、思わず匙と箸を落とした。そのとき折よく雷が鳴った。劉備はそこで曹操に言った。「聖人は、激しい雷や烈しい風には必ず居ずまいを変える、と言いました。まことにもっともです。ひと鳴りの雷の威力が、これほどとは」。〔述評〕言い伝えでは、劉備は酒を飲んだあと雷を怖がり、暇なときは畑に水をやって自分を取るに足らない者と見せ、それで難を逃れたという。そうであれば、劉備が好んで髪を結う仕事に励んだのも、畑に水をやる偽装と同じ昔からの手だったかもしれない。

解説

曹操に本心を見抜かれたと感じた劉備が、雷への驚きを口実に、匙と箸を落とした理由をすり替えた場面です。自分の動揺を隠すのではなく、別のもっともらしい理由に置き換えています。弱みを見せることで、警戒を解く効果も得ています。馮夢龍の評は、劉備が畑仕事や髪結いにいそしんだのも、危険な野心家に見られないための擬態だったかもしれないと示唆します。優れた人が評判や存在感をあえて抑えることで身を守る例です。管理職にとっては、実力があるほど周囲の警戒を呼ぶ場面があり、自分をどう見せるかも自己防衛の一部だと分かります。

この章句が説くこと

失匕箸英雄迅雷風烈擬態危機管理自己防衛

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