智囊 / 靈變・鮑叔牙
公子糾走魯,公子小白奔莒。既而國殺無知,未有君。公子糾與公子小白皆歸,俱至,爭先入。管仲扞弓射公子小白,中鉤;鮑叔御,公子小白僵,管仲以為小白死,告公子糾曰:「安之,公子小白已死矣!」鮑叔因疾驅先入,故公子小白得以為君。鮑叔之智,應射而令公子僵也,其智若鏃矢也。〔述評〕王守仁以疏救戴銑,廷杖,謫龍場驛。守仁微服疾驅,過江,作《弔屈原文》見志,尋為《投江絕命詞》,佯若已死者。詞傳至京師,時逆瑾怒猶未息,擬遣客間道往殺之,聞已死。乃止,智與鮑叔同。
新字:公子糾走魯,公子小白奔莒。既而国殺無知,未有君。公子糾与公子小白皆帰,倶至,争先入。管仲扞弓射公子小白,中鉤;鮑叔御,公子小白僵,管仲以為小白死,告公子糾曰:「安之,公子小白已死矣!」鮑叔因疾駆先入,故公子小白得以為君。鮑叔之智,応射而令公子僵也,其智若鏃矢也。〔述評〕王守仁以疏救戴銑,廷杖,謫竜場駅。守仁微服疾駆,過江,作《弔屈原文》見志,尋為《投江絶命詞》,佯若已死者。詞伝至京師,時逆瑾怒猶未息,擬遣客間道往殺之,聞已死。乃止,智与鮑叔同。
書き下し
公子糾は魯に走り、公子小白は莒に奔る。既にして国は無知を殺し、未だ君有らず。公子糾と公子小白、皆帰り、俱に至りて、先に入るを争う。管仲、弓を扞して公子小白を射、鉤に中たる。鮑叔御す。公子小白僵れ、管仲は小白死すと以為い、公子糾に告げて曰く、「安んぜよ。公子小白は已に死せり」と。鮑叔因りて疾く駆りて先に入る。故に公子小白、以て君と為るを得たり。鮑叔の智、射に応じて公子をして僵れしむるや、其の智は鏃矢の若し。〔述評〕王守仁、疏を以て戴銑を救い、廷杖を受け、龍場駅に謫せらる。守仁微服して疾く駆り、江を過ぎ、『弔屈原文』を作りて志を見し、尋いで『投江絶命詞』を為り、佯りて已に死せし者の若くす。詞は京師に伝わる。時に逆瑾の怒り猶お息まず、客を遣わして間道より往きて之を殺さんと擬するも、已に死せりと聞き、乃ち止む。智は鮑叔と同じ。
現代語訳
公子糾は魯に逃れ、公子小白は莒に逃れていた。その後、国では無知が殺され、君主がいなくなった。公子糾と公子小白はともに帰国を目指し、同時に着いて、先に入城することを争った。管仲は弓を引いて公子小白を射て、帯の留め金に当たった。鮑叔が御者をしていた。公子小白は倒れ、管仲は小白が死んだと思い、公子糾に告げた。「ご安心ください。公子小白は死にました」。鮑叔はそこで急いで馬車を走らせ、先に入城した。こうして公子小白は君主となることができた。鮑叔の知恵は、矢に応じて公子を倒れさせたことであり、その知恵は矢じりのように鋭かった。〔述評〕王守仁(王陽明)は、上書して戴銑を救おうとして、廷杖を受け、龍場駅に流された。守仁は身をやつして急ぎ、長江を渡り、「屈原を弔う文」を書いて志を示し、続いて「投江絶命詞」を作り、すでに死んだ者のようにふるまった。その詞は都に伝わった。そのとき劉瑾の怒りはまだ収まらず、刺客を遣わして間道を行かせて殺そうとしていたが、すでに死んだと聞き、中止した。知恵は鮑叔と同じである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・貴卒③齊の襄公位に即き、公孫無知を憎みて、其の祿を収む。無知說ばずして、襄公を殺す。公子糾、魯に走り、公子小白、莒に奔る。既にして國、無知を殺し、未だ君有らず。公子糾と公子小白と皆歸り、俱に至り、先を爭いて公家に入らんとす。管仲、弓を扞きて公子小白を射て、鉤に中つ。鮑叔、公子小白を御して、僵れしむ。管子以て小白死せりと為し、公子糾に告げて曰く、「之を安んぜよ。公子小白已に死せり。」鮑叔因りて疾驅して先づ入る。故に公子小白以て君と為るを得たり。鮑叔の智、射に應じて公子小白をして僵れしむるは、其の智、鏃矢の若きなり。
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『管子』大匡乃ち車駕を命ず、鮑叔御し、小白乘りて莒を出づ。小白曰く、「夫れ二人の者は君令を奉ず、吾以て試む可からず」と。乃ち將に下らんとす。鮑叔其の足を履みて曰く、「事の濟るは此の時に在り、事若し濟らずんば、老臣之に死せん、公子は猶お之れ免れん」と。乃ち行き、邑郊に至る、鮑叔車二十乘を先にし、十乘を後にせしむ。鮑叔乃ち小白に告げて曰く、「夫れ國の二三子を疑うは、老臣に忍ぶ莫し、事の未だ濟らざるや、老臣是を以て道を塞ぐ」と。鮑叔乃ち誓いて曰く、「事の濟るや、我が令を聽け。事の濟らざるや、公子を免るる者を上と為し、死する者を下と為す。吾五乘の實を以て路に距らん」と。鮑叔乃ち前驅と為り、遂に國に入り、公子糺を逐う。管仲小白を射て鈎に中つ。管仲と公子糺・召忽と遂に魯に走る。桓公位に踐み、魯齊を伐ち、公子糺を納れんとして能わず。
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『管子』小匡鮑叔受けて之を哭す、三たび舉ぐ。施伯從いて之を笑い、大夫に謂いて曰く、「管仲必ず死せざらん。夫れ鮑叔の忍びて賢人を僇せざるは、其の智賢を稱して以て自ら成すなり。鮑叔公子小白に相たり、先に入りて國を得たり。管仲・召忽は公子糺を奉じ、後れて入り、魯と與に以て戰い、能く魯をして敗れしむ。功以て天を得ると天を失うとに足る、其の人事は一なり。今魯懼れ、公子糺・召忽を殺し、管仲を囚えて以て齊に予う。鮑叔後事無きを知り、必ず將に管仲を勤めて以て其の君を勞し、願わくは以て其の功を顯さんとす。衆必ず之に得る有るを予えん。力めて死するの功すら、猶お尚お加う可きなり。生を顯すの功は、將に何如ならんとす。是れ德を昭らかにして以て君に貳するなり。鮑叔の知は是を失わざるなり」と。
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『韓非子』說林下二十三乃ち之を去る。果たして文子の後車二乗を収めて之を其の君に献ず。周趮、宮他に謂ひて曰く、「我が為に斉王に謂ひて曰へ、斉を以て我を魏に資けよ、請ふ魏を以て王に事へん、と」と。宮他曰く、「不可なり。是れ之に魏無きを示すなり。斉王必ず魏無き者を資けずして、以て魏有る者に怨まれん。公曰ふに如かず、『王の欲する所を以て、臣請ふ魏を以て王に聴かしめん』と。斉王必ず公を以て魏有りと為し、必ず公に因らん。是れ公斉有るなり、因りて以て斉・魏を有たん」と。白圭、宋の大尹の為に曰く、「君長じて自ら政を知らば、公事無からん。今君は少主なり、而して名を務む。荊をして君の孝を賀せしむるに如かず。則ち君、公の位を奪はず、大いに公を敬重せん。則ち公常に宋に用ひられん」と。管仲・鮑叔相謂ひて曰く、「君の乱甚だし、必ず国を失はん。斉国の諸公子の其の輔くべき者は、公子糾に非ずんば則ち小白なり。子と人ごとに一人に事へ、先に達する者相収めん」と。管仲乃ち公子糾に従ひ、鮑叔は小白に従ふ。国人果たして君を弑す。小白先に入りて君と為る。魯人、管仲を拘へて之を效す。鮑叔言ひて之を相とす。故に諺に曰く、「巫咸善く祝すと雖も、自ら祓ふこと能はず。秦医善く除くと雖も、自ら弾ずること能はず」と。管仲の聖を以てして鮑叔の助けを待つ、此れ鄙諺の所謂「虜自ら裘を売りて售れず、士自ら辯を誉めて信ぜられず」なる者なり。荊王、呉を伐つ。呉、沮衛・蹶融をして荊師を犒はしむ。而して将軍曰く、「之を縛れ、殺して以て鼓に釁らん」と。之に問ひて曰く、「汝来るに、卜せしか」と。答へて曰く、「卜せり」と。「卜は吉なりしか」と。曰く、「吉なり」と。荊人曰く、「今荊将に女を以て鼓に釁らんと欲す、其れ何ぞや」と。答へて曰く、「是れ故に其の吉なる所以なり。呉の臣をして来らしむるは、固より将軍の怒りを視んとてなり。将軍怒らば、将に溝を深くし塁を高くせんとす。将軍怒らずんば、将に懈怠せんとす。今や将軍臣を殺さば、則ち呉必ず警守せん。且つ国の卜は、一臣の為に卜するに非ず。
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『列子』力命篇管夷吾・鮑叔牙の二人相い友として甚だ戚し。同に齊に處る。管夷吾は公子糾に事え、鮑叔牙は公子小白に事う。齊の公族に寵多く、嫡庶並び行われ、國人亂を懼る。管仲は召忽と公子糾を奉じて魯に奔り、鮑叔は公子小白を奉じて莒に奔る。既にして公孫無知亂を作し、齊に君無く、二公子入るを爭う。管夷吾小白と莒に戰い、道に射て小白の帶鉤に中つ。小白既に立ち、魯を脅して子糾を殺さしむ。召忽之に死し、管夷吾は囚わる。
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『新序』雜事第五管仲齊の公子糾に傅たり。鮑叔公子小白に傅たり。齊の公孫無知襄公を殺す。公子糾は魯に奔り、小白は莒に奔る。齊人無知を誅し、公子糾を魯に迎う。公子糾と小白と爭いて入る。管仲小白を射て、其の帶鉤に中つ。小白死せるを佯り、遂に先に入る。是れ齊の桓公爲り。公子糾死し、管仲魯に奔る。桓公立ちて國定まり、人をして管仲を魯に迎えしむ。遂に立てて以て仲父と爲し、國を委ねて之に聽く。九たび諸侯を合わせ、一たび天下を匡し、五伯の長と爲る。
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