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智囊 / 靈變・管仲

齊桓公因鮑叔之薦,使人請管仲於魯,施伯曰:「是固將用之也。夷吾用於齊,則魯危矣!不如殺而以屍授之。」魯君欲殺仲,使人曰:「寡君欲親以為戮,如得屍,猶未得也!」乃束縛而檻之,使役人載而送之齊。管子恐魯之追而殺之也,欲速至齊,因謂役人曰:「我為汝唱,汝為我和。」其所唱適宜走,役人不倦,而取道甚速。呂不韋曰:「役人得其所欲,管子亦得其所欲。」陳明卿曰:「使桓公亦得其所欲。」

新字:斉桓公因鮑叔之薦,使人請管仲於魯,施伯曰:「是固将用之也。夷吾用於斉,則魯危矣!不如殺而以屍授之。」魯君欲殺仲,使人曰:「寡君欲親以為戮,如得屍,猶未得也!」乃束縛而檻之,使役人載而送之斉。管子恐魯之追而殺之也,欲速至斉,因謂役人曰:「我為汝唱,汝為我和。」其所唱適宜走,役人不倦,而取道甚速。呂不韋曰:「役人得其所欲,管子亦得其所欲。」陳明卿曰:「使桓公亦得其所欲。」

書き下し

斉の桓公、鮑叔の薦めに因り、人をして管仲を魯に請わしむ。施伯曰く、「是れ固より将に之を用いんとす。夷吾、斉に用いらるれば、則ち魯危うし。殺して屍を以て之に授くるに如かず」と。魯君、仲を殺さんと欲し、人をして曰わしむ、「寡君、親ら以て戮と為さんと欲す。如し屍を得るとも、猶お未だ得ざるが如し」と。乃ち束縛して之を檻し、役人をして載せて之を斉に送らしむ。管子、魯の追いて之を殺さんことを恐れ、速く斉に至らんと欲し、因りて役人に謂いて曰く、「我、汝の為に唱わん。汝、我の為に和せよ」と。其の唱う所、適々走るに宜しく、役人倦まずして、道を取ること甚だ速し。呂不韋曰く、「役人は其の欲する所を得、管子も亦た其の欲する所を得たり」と。陳明卿曰く、「桓公をして亦た其の欲する所を得しめたり」と。

現代語訳

斉の桓公は、鮑叔の推薦により、人を魯に遣わして管仲の引き渡しを求めた。施伯は言った。「これは必ず管仲を用いるつもりです。夷吾(管仲)が斉に用いられれば、魯は危うくなります。殺して屍を引き渡すのがよいでしょう」。魯の君は管仲を殺そうとしたが、斉の使者が言った。「わが君は、自らこの者を処刑したいとお考えです。もし屍を得ても、得なかったのと同じです」。そこで魯は管仲を縛って檻に入れ、護送の役人に載せて斉に送らせた。管仲は魯が追ってきて自分を殺すことを恐れ、一刻も早く斉に着きたいと思い、そこで護送の役人に言った。「私がおまえたちのために歌おう。おまえたちは私のために合わせよ」。その歌う歌は、ちょうど走るのに向いたもので、役人たちは疲れを感じず、道を急ぐ速度はたいへん速かった。呂不韋は言った。「役人は自分の望むものを得、管子も自分の望むものを得た」。陳明卿は言った。「桓公もまた望むものを得たのだ」。

解説

囚われの管仲が、護送の役人に歌を歌わせて、疲れを忘れさせながら道を急がせた話です。自分の目的である速い到着を、役人にとっても心地よい楽しみに重ね合わせたところがポイントです。呂不韋の評にあるとおり、役人は楽に進み、管仲は逃げ切ることができました。陳明卿の言葉では、桓公も望みを得ます。三者の利益が一致するよう設計した点が優れています。管理職が人を動かすとき、命令や説得で無理に動かすより、相手にとってもメリットがあり、自然に動きたくなる形にすると効果が出ます。目的を押しつけるのではなく、相手の欲求と重ねる発想が大切です。

この章句が説くこと

管仲唱和護送速く至る呂不韋三方よし

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