管子 / 小匡
鮑叔受而哭之,三舉,施伯從而笑之,謂大夫曰:「管仲必不死。夫鮑叔之忍不僇賢人,其智稱賢以自成也。鮑叔相公子小白,先入得國。管仲、召忽奉公子糺,後入,與魯以戰,能使魯敗。功足以得天與失天,其人事一也。今魯懼,殺公子糺、召忽,囚管仲以予齊,鮑叔知無後事,必將勤管仲以勞其君,願以顯其功。衆必予之有得。力死之功,猶尚可加也。顯生之功,將何如?是昭徳以貳君也。鮑叔之知不是失也。」
新字:鮑叔受而哭之,三舉,施伯従而笑之,謂大夫曰:「管仲必不死。夫鮑叔之忍不僇賢人,其智称賢以自成也。鮑叔相公子小白,先入得国。管仲、召忽奉公子糺,後入,与魯以戦,能使魯敗。功足以得天与失天,其人事一也。今魯懼,殺公子糺、召忽,囚管仲以予斉,鮑叔知無後事,必将勤管仲以労其君,願以顕其功。衆必予之有得。力死之功,猶尚可加也。顕生之功,将何如?是昭徳以貳君也。鮑叔之知不是失也。」
書き下し
鮑叔受けて之を哭す、三たび舉ぐ。施伯從いて之を笑い、大夫に謂いて曰く、「管仲必ず死せざらん。夫れ鮑叔の忍びて賢人を僇せざるは、其の智賢を稱して以て自ら成すなり。鮑叔公子小白に相たり、先に入りて國を得たり。管仲・召忽は公子糺を奉じ、後れて入り、魯と與に以て戰い、能く魯をして敗れしむ。功以て天を得ると天を失うとに足る、其の人事は一なり。今魯懼れ、公子糺・召忽を殺し、管仲を囚えて以て齊に予う。鮑叔後事無きを知り、必ず將に管仲を勤めて以て其の君を勞し、願わくは以て其の功を顯さんとす。衆必ず之に得る有るを予えん。力めて死するの功すら、猶お尚お加う可きなり。生を顯すの功は、將に何如ならんとす。是れ德を昭らかにして以て君に貳するなり。鮑叔の知は是を失わざるなり」と。
現代語訳
鮑叔は引き取って泣き、三度声を上げた。施伯はそれを見て笑い、大夫に言った、管仲は必ず死なない。鮑叔が忍んで賢人を殺さないのは、その知恵が賢者を推すことで自分を成り立たせるからだ。鮑叔は公子小白の補佐となり、先に入国して国を得た。管仲と召忽は公子糺を奉じて後から入り、魯とともに戦って魯を敗れさせた。功としては天を得るか失うかの分かれ目に足るが、その人としての働きは同じである。いま魯は懼れて公子糺と召忽を殺し、管仲を捕らえて斉に渡した。鮑叔は後の事がないと知って、必ず管仲を励まして自分の君を労し、その功を顕そうとするだろう。人々は必ずそれに応じるものを与える。力を尽くして死ぬ功でさえ、まだ上に足せる。生かして顕す功は、どれほどのものになるか。これは徳を明らかにして君に並ぶということだ。鮑叔の知恵は、そこを外さない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『管子』小匡公乃ち鮑叔をして成を行わしめて曰く、「公子糺は、親なり、請う君之を討て」と。魯人為に公子糺を殺す。又た曰く、「管仲は、讎なり、請う受けて焉に心を甘くせん」と。魯公許諾す。施伯魯侯に謂いて曰く、「予うる勿かれ。之を戮するに非ざるなり、將に其の政を用いんとするなり。管仲なる者は、天下の賢人なり、大器なり。楚に在らば、則ち楚天下に意を得ん。晉に在らば、則ち晉天下に意を得ん。狄に在らば、則ち狄天下に意を得ん。今齊求めて之を得ば、則ち必ず長く魯國の憂いと為らん。君何ぞ殺して其の屍を受けしめざる」と。魯君曰く、「諾」と。將に管仲を殺さんとす。鮑叔進みて曰く、「之を齊に殺さば、是れ齊を戮するなり。之を魯に殺さば、是れ魯を戮するなり。弊邑の寡君生きながら之を得て、以て國に徇し、羣臣の僇と為さんことを願う。若し生きながら得ずんば、是れ君と寡君の賊と比するなり。敝邑の君の謂う所に非ざるなり、使臣命を受くる能わず」と。是に於いて魯君乃ち殺さず、遂に生きながら束縛して柙にして以て齊に予う。
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『管子』大匡公曰く、「及ばざるを恐る、奈何」と。鮑叔曰く、「夫れ施伯の人と為りや、敏にして畏るること多し。公若し先ず反さば、怨みを注がんことを恐れ、必ず殺さざらん」と。公曰く、「諾」と。施伯進みて魯君に對えて曰く、「管仲急有り、其の事濟らず。今魯に在り、君其れ魯の政を致せ。若し之を受けば、則ち齊弱む可し。若し受けざれば、則ち之を殺せ。之を殺して以て齊に說ばん。與に怒りを同じくせば、尚お己に賢れり」と。君曰く、「諾」と。魯未だ政を致すに及ばずして、齊の使至りて曰く、「夷吾と召忽とは、寡人の賊なり。今魯に在り、寡人生きながら之を得んことを願う。若し得ざれば、是れ君と寡人の賊と比するなり」と。魯君施伯に問う、施伯曰く、「君之を與えよ。臣聞く齊君は惕にして亟やかに驕ると、賢を得と雖も、庸ぞ必ずしも能く之を用いんや。齊君の能く之を用うるに及べば、管子の事濟るなり。夫れ管仲は、天下の大聖なり。今彼齊に反らば、天下皆之に鄉わん、豈に獨り魯のみならんや。今若し之を殺さば、此れ鮑叔の友なり、鮑叔此に因りて以て難を作さば、君必ず待つ能わざらん、之を與うるに如かず」と。
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『管子』小匡公曰く、「管夷吾親ら寡人を射て、鈎に中たり死に殆し、今乃ち之を用うるは、可なるか」と。鮑叔曰く、「彼は其の君の為に動くなり、君若し宥して之を反さば、其の君の為にすること亦た猶お是くのごとし」と。公曰く、「然らば則ち之を為すこと奈何」と。鮑叔曰く、「君人をして之を魯に請わしめよ」と。公曰く、「施伯は、魯の謀臣なり。彼吾が將に之を用いんとするを知らば、必ず吾に予えざらん」と。鮑叔曰く、「君使者に詔して曰わしめよ、『寡君に不令の臣君の國に在り、願わくは之を請いて以て羣臣を戮せん』と。魯君必ず諾せん。且つ施伯の夷吾の才を知るや、必ず將に魯の政を致さんとす。夷吾之を受くれば、則ち魯能く齊を弱くせん。夷吾受けざれば、彼其の將に齊に反らんとするを知り、必ず之を殺さん」と。公曰く、「然らば則ち夷吾受くるか」と。鮑叔曰く、「受けざるなり。夷吾君に事うるに二心無し」と。公曰く、「其の寡人に於けるも猶お是くの如きか」と。對えて曰く、「君の為に非ざるなり、先君と社稷との故の為なり。君若し宗廟を定めんと欲せば、則ち亟やかに之を請え。然らずんば、及ぶ無きなり」と。
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『管子』大匡召忽曰く、「不可なり。吾三人の者の齊國に於けるや、之を譬うるに猶お鼎の足有るがごときなり、一を去らば則ち必ず立たざらん。吾小白を觀るに必ず後と為らざらん」と。管仲曰く、「然らざるなり。夫れ國人は糺の母を憎惡し、以て糺の身に及ぶ、而して小白の母無きを憐れむなり。諸兒は長ずれども賤し、事未だ知る可からざるなり。夫れ齊國を定むる所以の者は、此の二公子に非ざれば、將に己む無からんとす。小白の人と為り、小智無く、惕にして大慮有り。夷吾に非ざれば小白を容るる莫し、天不幸にして禍を降し殃を齊に加えば、糺立つを得と雖も、事將に濟らざらんとす。子社稷を定むるに非ずんば、其れ將た誰ぞや」と。召忽曰く、「百歳の後、吾が君世を卜し、吾が君の命を犯して吾が立つる所を廢し、吾が糺を奪わば、天下を得と雖も、吾生きざるなり、兄と我と齊國の政なり。君の令を受けて改めず、立つる所を奉じて濟らざるは、是れ吾が義なり」と。管仲曰く、「夷吾の君臣為るや、將に君命を承け、社稷を奉じて以て宗廟を持たんとす、豈に一糺に死せんや。夷吾の死する所の者は、社稷破れ、宗廟滅び、祭祀絕ゆれば、則ち夷吾之に死す。此の三つの者に非ざれば、則ち夷吾生く。夷吾生くれば則ち齊國利あり、夷吾死すれば則ち齊國利あらず」と。鮑叔曰く、「然らば則ち奈何」と。管子曰く、「子出でて令を奉ぜば則ち可なり」と。鮑叔許諾し、乃ち出でて令を奉じ、遂に小白に傅たり。
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史記 管晏列伝管仲夷吾は、潁上の人なり。少き時常に鮑叔牙と游び、鮑叔、其の賢なるを知れり。管仲貧困にして、常に鮑叔を欺くも、鮑叔、終に善く之を遇し、以て言を為さず。已にして鮑叔、斉の公子小白に事へ、管仲は公子糾に事ふ。小白立ちて桓公と為り、公子糾死するに及び、管仲囚はる。鮑叔遂に管仲を進む。管仲既に用ひられ、政に斉に任ず。斉の桓公以て覇たり、諸侯を九合し、天下を一匡したるは、管仲の謀なり。
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『管子』大匡乃ち車駕を命ず、鮑叔御し、小白乘りて莒を出づ。小白曰く、「夫れ二人の者は君令を奉ず、吾以て試む可からず」と。乃ち將に下らんとす。鮑叔其の足を履みて曰く、「事の濟るは此の時に在り、事若し濟らずんば、老臣之に死せん、公子は猶お之れ免れん」と。乃ち行き、邑郊に至る、鮑叔車二十乘を先にし、十乘を後にせしむ。鮑叔乃ち小白に告げて曰く、「夫れ國の二三子を疑うは、老臣に忍ぶ莫し、事の未だ濟らざるや、老臣是を以て道を塞ぐ」と。鮑叔乃ち誓いて曰く、「事の濟るや、我が令を聽け。事の濟らざるや、公子を免るる者を上と為し、死する者を下と為す。吾五乘の實を以て路に距らん」と。鮑叔乃ち前驅と為り、遂に國に入り、公子糺を逐う。管仲小白を射て鈎に中つ。管仲と公子糺・召忽と遂に魯に走る。桓公位に踐み、魯齊を伐ち、公子糺を納れんとして能わず。