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智囊 / 謬數・顏真卿

真卿為平原太守,祿山逆節頗著,真卿托以霖雨,修城濬濠,陰料丁壯,實儲廩,佯命文士飲酒賦詩。祿山密偵之,以為書生不足虞,未幾祿山反,河朔盡陷,唯平原有備。〔評〕小寇以聲驅之,大寇以實備之。或無備而示之有備者,杜其謀也;或有備而示之無備者,消其忌也。必有深沉之思,然後有通變之略。微乎!微乎!豈易言哉?

新字:真卿為平原太守,禄山逆節頗著,真卿托以霖雨,修城濬濠,陰料丁壮,実儲廩,佯命文士飲酒賦詩。禄山密偵之,以為書生不足虞,未幾禄山反,河朔尽陥,唯平原有備。〔評〕小寇以声駆之,大寇以実備之。或無備而示之有備者,杜其謀也;或有備而示之無備者,消其忌也。必有深沈之思,然後有通変之略。微乎!微乎!豈易言哉?

書き下し

真卿、平原太守と為る。禄山の逆節頗る著れ、真卿は霖雨に托して城を修め濠を浚え、陰かに丁壮を料り、廩を実たし、佯りて文士に命じて酒を飲み詩を賦せしむ。禄山密かに之を偵い、書生は虞るるに足らずと以為う。未だ幾ばくならずして禄山反き、河朔は尽く陥つ。唯だ平原のみ備え有り。〔評〕小寇は声を以て之を駆り、大寇は実を以て之に備う。或いは備え無くして之に備え有るを示すは、其の謀を杜ぐなり。或いは備え有りて之に備え無きを示すは、其の忌を消すなり。必ず深沈の思い有りて、然る後に通変の略有り。微なるかな、微なるかな。豈に言い易からんや。

現代語訳

顔真卿は平原の太守であった。安禄山の謀反の気配がかなり明らかになってきたので、顔真卿は長雨を口実に城壁を修理し、堀を浚い、ひそかに壮丁を調べて兵を選び、食糧を蓄え、いっぽうで表向きは文人たちに酒を飲ませ詩を作らせていた。安禄山はひそかに偵察させ、書生なら恐れる必要はないと考えた。まもなく安禄山が反乱を起こし、河北一帯は次々に陥落したが、ただ平原だけが備えを持っていた。〔評〕小さな敵には声で追い払い、大きな敵には実際の備えで対抗する。備えがないのに備えがあると見せるのは、相手の企みを防ぐためである。備えがあるのに備えがないと見せるのは、相手の警戒を消すためである。深く沈着な思慮があって初めて、状況に応じた変通の策がある。微妙なことである、微妙なことである。口で言うのはたやすくない。

解説

顔真卿は、安禄山の警戒を避けるため、備えを進める裏で、表向きは詩酒に興じる書生の顔を見せていました。力のある相手に準備を悟られると先に潰されるので、見せたい姿と実際の姿を分ける発想です。馮夢龍は、備えがないのにあると見せる場合と、あるのにないと見せる場合を区別し、状況に合わせた使い分けが必要だと述べます。現代でも、競合や上位者に対して、実力や準備を全部見せることが得策とは限りません。ただ、見せない準備は、実際に備えているという裏づけがあってこそ意味があります。

この章句が説くこと

顔真卿佯りて酒を飲む備えを隠す安禄山危機管理通変

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