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智囊 / 委蛇・王戎・阮籍

戎族弟敦,有高名,戎惡之。每候戎,輒托疾不見。孫秀為瑯琊郡吏,求品於戎從弟衍,衍將不許,戎勸品之,及秀得志,有夙怨者皆被誅,而戎、衍並獲濟焉。〔評〕借人虛名,輸我實禍,此便知衍不及戎處。魏、晉之際,天下多故,名士鮮有全者。阮籍托志酣飲,絕不與世事。司馬昭初欲為子炎求昏於籍,籍一醉六十日,昭不得言而止。鍾會數訪以時事,欲因其可否致之罪,竟以酣醉不答獲免。

新字:戎族弟敦,有高名,戎悪之。毎候戎,輒托疾不見。孫秀為瑯琊郡吏,求品於戎従弟衍,衍将不許,戎勧品之,及秀得志,有夙怨者皆被誅,而戎、衍並獲済焉。〔評〕借人虚名,輸我実禍,此便知衍不及戎処。魏、晋之際,天下多故,名士鮮有全者。阮籍托志酣飲,絶不与世事。司馬昭初欲為子炎求昏於籍,籍一酔六十日,昭不得言而止。鍾会数訪以時事,欲因其可否致之罪,竟以酣酔不答獲免。

書き下し

戎の族弟敦、高名有り、戎これを悪む。戎を候うごとに、輒ち疾に托して見えず。孫秀、瑯琊郡の吏たりし時、品を戎の従弟衍に求む。衍将に許さざらんとす。戎これを品せしむるを勧む。秀の志を得るに及び、夙怨有る者は皆誅せらるるも、戎・衍は並びに済るるを獲たり。〔評〕人に虚名を借して、我に実禍を輸す。此に便ち衍の戎に及ばざる処を知る。魏・晋の際、天下に故多く、名士の全きを得る者は鮮し。阮籍は志を酣飲に托し、絶えて世事に与らず。司馬昭、初め子の炎の為に昏を籍に求めんと欲するに、籍は一たび酔うこと六十日、昭言うを得ずして止む。鍾会、数訪うに時事を以てし、其の可否に因りて之を罪に致さんと欲するも、竟に酣酔して答えざるを以て免るるを獲たり。

現代語訳

王戎の一族の弟の王敦は高い名声があったが、王戎はこれを嫌った。王敦が訪ねてくるたびに、病気を口実にして会わなかった。孫秀が瑯琊郡の下役人だったとき、品評(人物の格付け)を王戎の従弟の王衍に求めた。王衍は断ろうとしたが、王戎は品評してやるよう勧めた。後に孫秀が権力を握ると、昔の恨みを持たれた者はみな誅殺されたが、王戎と王衍は共に助かった。〔評〕人に虚名を貸して、自分には実際の禍を招いたことになる。ここで王衍が王戎に及ばない点がわかる。魏から晋にかけての時代は天下に変事が多く、名士で身を全うできた者は少なかった。阮籍は志を深酒に託して世事に一切関わらなかった。司馬昭が初め、子の司馬炎のために阮籍の娘との縁談を求めようとしたが、阮籍は一度酔うと六十日も続き、司馬昭は切り出せないまま終わった。鍾会が何度も時事を尋ね、その返事の可否で罪に陥れようとしたが、阮籍は泥酔して答えなかったので免れた。

解説

乱世では、名声そのものが危険になるうえ、誰に好意を示すかが後の運命を分けます。王戎は評判の高い親族を避け、恨みを買いそうな相手にも品評を与える度量を示して生き延びました。馮夢龍は、虚名を貸して実害を招いた王衍と対比し、王戎の方が上だと評します。阮籍は泥酔を盾に、縁談も詰問も受け流しました。現代の職場でも、評判のよい人物や権力者との距離の取り方一つで、数年後の立場が変わることがあります。目先の好意や体面より、後に残る恨みと実害を見積もる視点を持ちたいところです。

この章句が説くこと

托疾不見酣飲虚名実禍保身距離感

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