智囊 / 威克・班超
是時于闐王廣德新攻破莎車,遂雄張南道,而匈奴遣使監護其國。超既西,先至于闐,廣德禮意甚疏,且其俗信巫,巫言神怒:「何故欲向漢?漢使有騧馬,急求取以祠我。」廣德乃遣使就超請馬,超密知其狀,報許之。而令巫自來取馬,有頃,巫至,超即斬其首以送廣德,因辭讓之。廣德素聞超在鄯善誅滅虜使,大惶恐,即攻殺匈奴使而降超。超重賜其王以下,因鎮撫焉。〔馮述評〕必如班定遠,方是滿腹皆兵,渾身是膽。趙子龍、姜伯約不足道也。遼東管家莊,長男子不在舍,建州虜至,驅其妻子去。三數日,壯者歸,室皆空矣,無以為生。欲傭工於人,弗售。乃謀入虜地伺之,見其妻出汲,密約夜以薪積舍戶外焚之,並積薪以焚其屋角。火發,賊驚覺。裸體起出戶,壯者射之,賊皆死。挈其妻子,取賊所有歸。是後他賊憚之,不敢過其莊云。此壯者膽勇,一時何減班定遠,使室家無恙;或傭工而售,亦且安然不圖矣。人急計生,信夫!
新字:是時于闐王広徳新攻破莎車,遂雄張南道,而匈奴遣使監護其国。超既西,先至于闐,広徳礼意甚疏,且其俗信巫,巫言神怒:「何故欲向漢?漢使有騧馬,急求取以祠我。」広徳乃遣使就超請馬,超密知其状,報許之。而令巫自来取馬,有頃,巫至,超即斬其首以送広徳,因辞譲之。広徳素聞超在鄯善誅滅虜使,大惶恐,即攻殺匈奴使而降超。超重賜其王以下,因鎮撫焉。〔馮述評〕必如班定遠,方是満腹皆兵,渾身是胆。趙子竜、姜伯約不足道也。遼東管家荘,長男子不在舎,建州虜至,駆其妻子去。三数日,壮者帰,室皆空矣,無以為生。欲傭工於人,弗售。乃謀入虜地伺之,見其妻出汲,密約夜以薪積舎戸外焚之,並積薪以焚其屋角。火発,賊驚覚。裸体起出戸,壮者射之,賊皆死。挈其妻子,取賊所有帰。是後他賊憚之,不敢過其荘云。此壮者胆勇,一時何減班定遠,使室家無恙;或傭工而售,亦且安然不図矣。人急計生,信夫!
書き下し
是の時于闐王広徳は新たに莎車を攻め破り、遂に南道に雄張し、而して匈奴は使いを遣わして其の国を監護せしむ。超既に西し、先ず于闐に至る。広徳は礼意甚だ疏く、且つ其の俗は巫を信ず。巫言う、「神怒れり。何の故に漢に向かわんと欲す。漢使に騧馬有り、急ぎ求め取りて以て我を祠れ」と。広徳乃ち使いを遣わして超に就きて馬を請う。超密かに其の状を知り、之を報許す。而して巫をして自ら来たりて馬を取らしむ。有頃にして巫至る。超即ち其の首を斬りて以て広徳に送り、因りて之を辞譲す。広徳は素より超の鄯善に在りて虜使を誅滅せしを聞き、大いに惶恐し、即ち匈奴の使いを攻め殺して超に降る。超は重く其の王以下に賜い、因りて鎮撫す。〔馮述評〕必ず班定遠の如くにして、方に是れ満腹皆な兵、渾身是れ胆なり。趙子龍、姜伯約は道うに足らざるなり。遼東の管家荘に、長男子舎に在らざるとき、建州の虜至り、其の妻子を駆りて去る。三数日にして壮者帰れば、室は皆な空しく、以て生を為す無し。人に傭工せんと欲するも、售れず。乃ち虜地に入りて之を伺わんと謀り、其の妻の出でて汲むを見て、密かに夜に薪を以て舎の戸外に積みて焚かんと約し、並びに薪を積みて以て其の屋角を焚く。火発し、賊驚き覚む。裸体にして起ちて戸を出ずれば、壮者之を射、賊皆な死す。其の妻子を挈え、賊の有する所を取りて帰る。是の後、他の賊之を憚り、敢えて其の荘を過ぎずと云う。此の壮者の胆勇、一時何ぞ班定遠に減ぜん。室家をして恙無からしめば、或いは傭工して售れば、亦た且つ安然として図らざらん。人急にして計生ずとは、信なるかな。
現代語訳
このころ于闐王の広徳は莎車を攻め破ったばかりで、西域の南道で勢力を振るい、匈奴は使者を送ってこの国を監督させていた。班超は西へ向かい、まず于闐に着いた。広徳の応対はまことに冷淡で、しかもこの国は巫女の言葉を信じる風習があった。巫女は「神が怒っておられる。なぜ漢に近づこうとするのか。漢の使者には黒い口の黄馬がいる。急いでそれを取って私に供えよ」と言った。広徳は使者を送り、班超に馬を求めさせた。班超はひそかに事情を知り、承知すると返事をした。ただし巫女自身が馬を取りに来るようにと言った。しばらくして巫女がやって来ると、班超はすぐにその首を斬って広徳に送り、そのことを責めた。広徳は班超が鄯善で匈奴の使者を皆殺しにした話をかねて聞いていたので、大いに恐れ、すぐに匈奴の使者を攻め殺して班超に降伏した。班超は王以下に手厚く褒美を与え、国を落ち着かせた。〔馮夢龍の評〕班定遠のようであってこそ、腹の中が全て兵法で、全身が胆でできているというものだ。趙子龍や姜伯約は語るに足りない。遼東の管家荘で、成人の男たちが家を空けていたとき、建州の賊が来て妻子を連れ去った。三、四日して壮健な男が帰ると、家は空っぽで生計を立てる手段もない。人に雇われようとしても雇ってもらえない。そこで敵地に入って様子をうかがうことにし、連れ去られた妻が水汲みに出るところに出会って、夜に薪を家の戸外に積んで火をつけようとひそかに約束し、自分も薪を積んで屋根の隅を焼いた。火が上がり、賊は驚いて目を覚まし、裸のまま戸口から飛び出したところを、この男が射て、賊は皆死んだ。男は妻子を連れ、賊の持ち物を奪って帰った。その後、他の賊はこの男を恐れ、二度とこの村の前を通らなかったという。この男の胆力と勇気は、一時は班定遠に劣らない。もし家族が無事で、あるいは雇ってもらえていたなら、安穏に暮らして何も企てなかっただろう。人は追い詰められると知恵が出るというのは、本当だ。
解説
この章句が説くこと
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