智囊 / 詰奸・王安禮
王安禮知開封府。邏者連得匿名書告人不軌,所涉百餘人,帝付安禮令亟治之。安禮驗所指略同,最後一書加三人,有姓薛者,安禮喜曰:「吾得之矣。」呼問薛曰:「若豈有素不快者耶?」曰:「有持筆求售者,拒之。鞅鞅去,其意似相銜。」即命捕訊,果其所為。梟其首於市,不逮一人,京師謂之神明。
新字:王安礼知開封府。邏者連得匿名書告人不軌,所渉百余人,帝付安礼令亟治之。安礼験所指略同,最後一書加三人,有姓薛者,安礼喜曰:「吾得之矣。」呼問薛曰:「若豈有素不快者耶?」曰:「有持筆求售者,拒之。鞅鞅去,其意似相銜。」即命捕訊,果其所為。梟其首於市,不逮一人,京師謂之神明。
書き下し
王安礼、開封府に知たり。邏者は連りに匿名の書の人の不軌を告ぐるを得たり。涉る所は百余人、帝は安礼に付して亟やかに之を治めしむ。安礼は指す所を験するに略ぼ同じ。最後の一書に三人を加え、薛を姓とする者有り。安礼喜びて曰く、「吾れ之を得たり」と。薛を呼びて問う、「若に豈に素より快からざる者有るか」と。曰く、「筆を持して售らんことを求むる者有り、之を拒む。鞅鞅として去り、其の意は相い銜むに似たり」と。即ち命じて捕訊すれば、果たして其の為す所なり。其の首を市に梟し、一人をも逮わず。京師は之を神明と謂う。
現代語訳
王安礼が開封府の長官だったとき、巡邏の者が相次いで、人が謀反を企てていると告発する匿名の文書を手に入れました。名指しされた者は百人あまりに上りました。皇帝は王安礼に命じて、これを急いで処理させました。王安礼が指摘された内容を調べてみると、おおよそ同じ筆跡のようでした。最後の一通には三人が加えられ、その中に薛という姓の者がいました。王安礼は喜んで言いました。「分かったぞ」。そして薛を呼んで尋ねました。「お前には、日ごろから不快に思っている人間がいるのではないか」。薛は答えました。「筆を売り込みに来た者がおり、断りました。不満そうな様子で去り、わたしを恨んでいるように見えました」。すぐに命じて捕らえて取り調べると、はたしてその者の仕業でした。その首を市でさらし、ほかの人は一人も連座させませんでした。都の人々は、王安礼を神のように明察な人だと評しました。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』詰奸・王世貞王世貞、兵を青州に備う。部民の雷齢、盗を捕うるを以て莱・濰の間に横す。海道の宋、之を購めること急にして遁れ、以て世貞に属す。世貞、其の処を得、方に掩取せんと欲して、微しく其の語を王捕尉に露わす。還り報ずれば又遁れたり。世貞陽りて曰く、「之を置け」と。又旬月にして、王尉、他盗を擒え得たり。世貞、其の齢の力と為るを知り、忽ち左右を屏けて王尉を召して之を詰す。「若、奈何ぞ雷齢を匿す。往に階下に立ちて捕齢を聞く者、汝に非ずや」と。王驚き謝し、飛騎を以て齢を取りて自ら贖わんことを願う。俄かにして齢至る。世貞曰く、「汝、当に死すべし。然れども汝能く善む所の某某の盗を執え来たらば、汝は生きん」と。而して王尉をして与に倶にせしむれば、果たして盗を得たり。世貞、遂に宋に言いて之を寛くす。官校、七盗を捕らうるに、其の一を逸す。盗首、妄りに逸せし者の姓名を言う。俄かにして一人を縛りて至り、冤を称す。乃ち盗首を庭下に置くこと差や遠からしめ、而して縛られし者を呼びて階上に跪かしむ。其の足に絲履を躡き、盗は数ば後ろより窺う。世貞、密かに一隸を呼び、縛られし者の首を蒙わしめ、隸をして之に肖しめ、而して其の履を易えて入らしむ。盗は其の易うるを知らず、即ち絲履の者を指す。世貞大いに笑いて曰く、「爾、乃ち吾が隸を以て盗と為すか」と。即ち縛られし者を釈く。
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『智囊』通簡・薛長孺・王鬷薛長孺は漢州の通判たり。戍卒、営門を閉ざし、火を放ち人を殺し、知州、兵馬監押を謀殺せんとす。来りて告ぐる者有るも、知州、監押は皆な敢えて出でず。長孺は身を挺して営を出で、之に諭して曰く、「汝輩は皆な父母妻子有り。何の故に此の事を為す。然れども与り謀らざる者は、各々一辺に在れ」と。是に於いて敢えて動かず、唯だ本謀の者八人のみ門を突きて出で、諸県に散ず。村野に捕獲す。時に謂う、長孺に非ざれば則ち一城の人は塗炭せんと。鈐轄司は敢えて以て聞せず、遂に賞に及ばず。長孺は簡粛公の姪なり。王忠穆公鬷は益州に知たり。会々戍卒に夜に営を焚きて督軍校を為して乱を為す者有り。鬷は潜かに兵を遣わして其の営を環らし、令を下して曰く、「乱せざる者は皆な欠手して門を出でよ。問う所無し」と。是に於いて衆は皆な出づ。軍校をして乱卒を指さしめ、十余人を得て之を戮す。旦に及びて人皆な知らず。其の政を為すや大体にして、苛察を為さず。蜀人は之を愛す。
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『智囊』詰奸・王璥・王守仁貞観中、左丞李行徳の弟行詮、前妻の子忠、其の後母を烝し、遂に私に之を匿し、詭りて敕もて追いて内に入らしむ。行廉知らず、乃ち状を進めて問う。敕を奉じて推詰すること至って急なり。其の後母は詐りて領巾を以て項を勒し、街中に臥す。長安県之を詰するに云う、「人有り、詐りて敕を宣べて喚び去る。一紫袍の人、見留めて宿し、姓名を知らず、項を勒して街中に送る」と。忠は惶恐し、私かに卜に就きて問う。不良人に疑われ、執えて県に送る。尉の王璥、引きて房内に就きて推問するも、允さず。璥、先ず一人をして褥下に伏して聴かしめ、一人をして走りて報ぜしめ、長使、璥を喚ぶ。房門を鎖して去る。子母相謂いて曰く、「必ず承けざれ」と。並びに私密の語あり。璥至りて門を開くに、案下の人も亦た起つ。母子大いに驚き、並びに具に承伏して法に伏す。賊首の王和尚、同伙を攀き出すに、多応亨、多邦宰なる者有り。驍悍なること他盗に倍す。招服すること已に久し。忽ち一日、応亨の母、兵道より一紙を告辦し、批を准け州に下す。中に王和尚を引きて証と為す。公之を思うに、此れ必ず王和尚、財を受け、辨脱せんことを許すのみ。乃ち後堂に案桌を設け、桌の囲いの内に一門子を蔵し、三盗を喚びて倶に案前に至らしめて覆審す。預め皂隷に戒めて、寅賓館に客有りと報ぜしめ、公は即ち之を舎きて出ず。少頃にして還り入るに、則ち門子、桌下より出でて云う、「王和尚の二賊に対して云うを聴き得たり。『且く両夾棍を忍べ、汝が為に脱するを俟て』と」と。三盗惶遽し、叩頭して死を請う。
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『智囊』得情・殷雲霽正徳中、殷雲霽、清江に知たり。県民朱鎧、文廟の西廡の中に死し、之を殺せる者を知る莫し。忽ち匿名の書を得たり。曰く、「鎧を殺せる者は某なり」と。某は素より仇に係り、衆は誣いずと謂う。雲霽曰く、「此れ賊に嫁して以て治を緩くするなり」と。左右に問う、「鎧と狎るる者は誰ぞ」と。対えて曰く、「胥の姚なり」と。雲霽乃ち群胥を堂に集めて曰く、「吾書を寫さんと欲す。各々若が字を呈せよ」と。姚明なる者有り、字は匿名の書に類す。之を詰して曰く、「爾、何ぞ鎧を殺せしか」と。明は大いに驚きて曰く、「鎧は将に蘇に販せんとす。独り吾のみ侯ちて之を、其の貲を利して、故に之を殺せるのみ」と。
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『智囊』詰奸・王愷・李亨王愷、平原の令と為る。麦商の夜に村寺を経て劫わるる有り、牒を県に陳ぶ。愷は故らに其の事を匿し、陰かに豆を販ぐ者をして、少しく熟豆を其の中に和え、夜に寺門を過ぎしむ。復た劫い去られ、捕兵をして服を易えしめ、寺僧に就きて豆を貨らしむるに、中に熟したる者有り。遂に収捕すれば、訊を待たずして服す。是より群盗は跡を屏む。李亨、鄞の令と為る。民に圃を業とする者有り、茄初めて熟す。隣人窃みて市に鬻ぐ。民追いて之を奪い、両つながら県に訴う。亨は命じて其の茄を庭に傾けしめ、笑いて隣人に謂いて曰く、「汝は真に盗なり。果たして汝の茄ならば、肯て初めて熟する時に並びに其の小なる者をも摘まんや」と。遂に罪に伏す。
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