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智囊 / 通簡・薛長孺・王鬷

薛長孺為漢州通判。戍卒閉營門,放火殺人,謀殺知州、兵馬監押。有來告者,知州、監押皆不敢出。長孺挺身出營,諭之曰:「汝輩皆有父母妻子,何故作此事?然不與謀者,各在一邊。」於是不敢動,唯本謀者八人突門而出,散於諸縣,村野捕獲。時謂非長孺則一城之人塗炭矣。鈐轄司不敢以聞,遂不及賞。長孺,簡肅公之姪也。王忠穆公鬷知益州,會戍卒有夜焚營、督軍校為亂者。鬷潛遣兵環其營,下令曰:「不亂者僉欠手出門,無所問。」於是眾皆出,令軍校指亂卒,得十餘人,戮之。及旦,人皆不知也。其為政大體,不為苛察,蜀人愛之。

新字:薛長孺為漢州通判。戍卒閉営門,放火殺人,謀殺知州、兵馬監押。有来告者,知州、監押皆不敢出。長孺挺身出営,諭之曰:「汝輩皆有父母妻子,何故作此事?然不与謀者,各在一辺。」於是不敢動,唯本謀者八人突門而出,散於諸県,村野捕獲。時謂非長孺則一城之人塗炭矣。鈐轄司不敢以聞,遂不及賞。長孺,簡粛公之姪也。王忠穆公鬷知益州,会戍卒有夜焚営、督軍校為乱者。鬷潜遣兵環其営,下令曰:「不乱者僉欠手出門,無所問。」於是衆皆出,令軍校指乱卒,得十余人,戮之。及旦,人皆不知也。其為政大体,不為苛察,蜀人愛之。

書き下し

薛長孺は漢州の通判たり。戍卒、営門を閉ざし、火を放ち人を殺し、知州、兵馬監押を謀殺せんとす。来りて告ぐる者有るも、知州、監押は皆な敢えて出でず。長孺は身を挺して営を出で、之に諭して曰く、「汝輩は皆な父母妻子有り。何の故に此の事を為す。然れども与り謀らざる者は、各々一辺に在れ」と。是に於いて敢えて動かず、唯だ本謀の者八人のみ門を突きて出で、諸県に散ず。村野に捕獲す。時に謂う、長孺に非ざれば則ち一城の人は塗炭せんと。鈐轄司は敢えて以て聞せず、遂に賞に及ばず。長孺は簡粛公の姪なり。王忠穆公鬷は益州に知たり。会々戍卒に夜に営を焚きて督軍校を為して乱を為す者有り。鬷は潜かに兵を遣わして其の営を環らし、令を下して曰く、「乱せざる者は皆な欠手して門を出でよ。問う所無し」と。是に於いて衆は皆な出づ。軍校をして乱卒を指さしめ、十余人を得て之を戮す。旦に及びて人皆な知らず。其の政を為すや大体にして、苛察を為さず。蜀人は之を愛す。

現代語訳

薛長孺は漢州の通判であった。守備兵が営門を閉ざして火を放ち人を殺し、知州と兵馬監押を謀殺しようとした。知らせに来る者がいたが、知州も監押も出ていこうとしなかった。長孺は身を挺して営に出向き、諭して言った。「お前たちにはみな父母や妻子がいる。どうしてこのようなことをするのか。ただし、謀議に加わっていない者は、それぞれ一方に寄れ」。こうして兵たちは動こうとせず、首謀者の八人だけが門を突き破って出て、あちこちの県に散った。村や野で捕えられた。当時の人々は、長孺でなければ一城の人は苦しみのどん底に落ちていただろうと言った。鈐轄司はあえて朝廷に報告せず、結局恩賞は与えられなかった。長孺は簡粛公の甥である。王忠穆公(王鬷)は益州の知事であった。たまたま守備兵が夜に営を焼き、軍校を人質に取って反乱を起こそうとした。鬷はひそかに兵を遣わしてその営を囲み、命令を出した。「反乱に加わっていない者はみな手を空けて門を出よ。咎めはしない」。すると大勢が出てきた。軍校に反乱兵を指さしさせて、十数人を得てこれを殺した。夜明けには、人々はみな何も知らなかった。その政治は大局を見て、細かな詮索をしなかった。蜀の人は彼を慕った。

解説

兵が営を閉ざして放火する中、上司が誰も出られないなかで薛長孺だけが身を挺して営に出向き、関与していない者は別に立つよう呼びかけました。これにより多数が反乱から離れ、首謀者の八人だけが孤立しています。王鬷も、手ぶらで出てくれば問わないと約束して、巻き込まれた者を安全に切り離し、夜のうちに収めました。ここでも、集団を敵として扱わず、関与の濃淡で分けることが成功の秘訣です。現代でも、不祥事の処理では全員を疑うより、関与者と非関与者を分ける手順が組織を守ります。

この章句が説くこと

与り謀らざる者は各々一辺に在れ欠手して門を出でよ苛察を為さず危機対応切り分け勇気

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