智囊 / 詰奸・高漝・楊津
北齊任城高漝領并州刺史。有婦人臨汾水浣衣,有乘馬行人換其新靴,馳而去。婦人持故靴詣州言之,漝乃召居城諸嫗,以靴示之,紿云:「有乘馬人於路被賊劫害,遺此靴焉,得無親族乎?」嫗撫膺哭曰:「兒昨著此靴向妻家也。」捕而獲之,時稱明察。楊津為岐州刺史,有武功人齎絹三匹,去城十里為賊所劫。時有使者馳驛而至,被劫人因以告之。使者到州以狀白津,津乃下教云:「有人著某色衣,乘某色馬,在城東十里被殺,不知姓名,若有家人,可速收視。」有一老母行哭而出,云是己子。於是遣騎追收,並絹俱獲,自是合境畏服。
新字:北斉任城高漝領并州刺史。有婦人臨汾水浣衣,有乗馬行人換其新靴,馳而去。婦人持故靴詣州言之,漝乃召居城諸嫗,以靴示之,紿云:「有乗馬人於路被賊劫害,遺此靴焉,得無親族乎?」嫗撫膺哭曰:「児昨著此靴向妻家也。」捕而獲之,時称明察。楊津為岐州刺史,有武功人齎絹三匹,去城十里為賊所劫。時有使者馳駅而至,被劫人因以告之。使者到州以状白津,津乃下教云:「有人著某色衣,乗某色馬,在城東十里被殺,不知姓名,若有家人,可速収視。」有一老母行哭而出,云是己子。於是遣騎追収,並絹倶獲,自是合境畏服。
書き下し
北斉の任城の高漝、并州刺史を領す。婦人の汾水に臨みて衣を浣う有り、馬に乗りて行く人の其の新しき靴を換え、馳せて去る有り。婦人故き靴を持ちて州に詣りて之を言う。漝乃ち城に居る諸嫗を召し、靴を以て之に示し、紿きて云う、「馬に乗る人の路に於て賊に劫害せらるる有り、此の靴を遺せり。親族に非ざる無きか」と。嫗膺を撫で哭して曰く、「兒昨この靴を著けて妻の家に向かえり」と。捕らえて之を獲、時に明察と称す。楊津、岐州刺史と為る。武功の人、絹三匹を齎し、城を去ること十里にして賊に劫わるる有り。時に使者の駅を馳せて至る有り、劫わるる人因りて以て之に告ぐ。使者州に到り状を以て津に白す。津乃ち教を下して云う、「人の某色の衣を著け、某色の馬に乗り、城の東十里に在りて殺さるる有り。姓名を知らず。若し家人有らば、速やかに収視すべし」と。一老母の行きて哭して出づる有り、云う、是れ己が子なりと。是に於て騎を遣わして追収し、絹と並びに俱に獲たり。是より境を合わせて畏服す。
現代語訳
北斉の任城の人、高漝が并州刺史を兼ねていたときのことです。ある女が汾水のほとりで洗濯をしていると、馬に乗った旅人が女の新しい靴を自分の古い靴と取り替え、そのまま馬を走らせて去っていきました。女は残された古い靴を持って州の役所に訴え出ました。高漝は城内に住む老女たちを呼び集め、靴を見せて偽りを言いました。「馬に乗った男が路上で賊に襲われて殺され、この靴を落としていった。お前たちの親族ではないか」。すると一人の老女が胸をたたいて泣き、「息子が昨日この靴をはいて妻の実家へ出かけました」と言いました。そこで捕らえてみると、靴泥棒はその息子でした。人々は高漝を明察の人と称えました。また楊津が岐州刺史だったとき、武功の人が絹三匹を持って城から十里のところで賊に奪われました。ちょうど駅馬で来た使者に被害者が事情を話し、使者が州に着いて楊津に報告しました。楊津は布告を出しました。「某色の衣を着て某色の馬に乗った人が、城の東十里で殺された。姓名は分からない。家族がいるならすぐ遺体を引き取りに来よ」。すると一人の老母が泣きながら出てきて、自分の子だと言いました。そこで騎馬の者を遣わして追わせ、賊と絹をともに捕らえました。これ以来、州内の人々はみな楊津を畏れ服しました。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』詰奸・楊武僉都御史楊北山公、名は武、関中の康徳涵の姉丈なり。淄川の令と為り、善く奇を用う。邑に市人の稷米を盗む者有るも、之を求むれども得ず。公は其の隣居する者数十人を摂え、之を庭に跪かしめ、漫に他事を理めて問わず。已にして忽ち厲声して曰く、「吾れ米を盗みし者を得たり」と。其の一人の色動くこと良や久し。復た厲声して之を言えば、其の人愈いよ益ます色動く。公之を指して曰く、「第幾行第幾人、是れ米を盗みし者なり」と。其の人遂に服す。又田園の瓜瓠を盗む者有り、是の夜大風雨にして、根蔓俱に尽く。公は其の仇家かと疑い、乃ち夜盗む者の足跡を印取せしめ、灰を庭に布き、村中の丁壮の者を摂えて、其の上を履ましめて曰く、「其の跡に合う者は即ち盗なり」と。其の最後の一人、輾転として難色有り、且つ気促ること甚し。公は執えて之を訊すに、果たして仇家にして盗みし者なり、瓜瓠宛然として在り。又一行路の者、路傍に於て石を枕にして睡熟し、嚢中の千銭を人に盗み去らる。公は其の石を庭に舁がしめ、之を鞭うつこと数十、而して人の縦観するを許して禁ぜず。乃ち潜かに人をして門外に候せしめ、窺覘して入らざる者有らば即ち之を擒えしむ。果たして一人を得たり、銭を盗みし者なり。石を鞭うつ事の甚だ奇なるを聞き、来たらざること能わず、入れば則ち又敢えてせず。其の銭を求むれば、費やすこと十文のみ、余は以て石を枕にせし者に還す。
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