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智囊 / 詰奸・張敞・虞詡

長安市多偷盜,百賈苦之。張敞既視事,求問長安父老。偷盜酋長數人,居皆溫厚,出從重騎,閭里以為長者。敞皆召見責問,因貰其罪,把其宿負,令致諸偷以自贖。偷長曰:「今一旦召詣府,恐諸偷驚駭,願一切受署。」敞皆以為吏,遣歸休。置酒,小偷悉來賀,且飲醉,偷長以赭污其衣裾。吏坐里閭閱出者,見污赭,輒收縛,一日捕得數百人。窮治所犯,市盜遂絕。朝歌賊寧季等數千人攻殺長吏,屯聚連年,州郡不能禁,乃以詡為朝歌長。始到,謁河內太守馬稜,願假轡策,勿令有所拘閡。及到官,設三科以募壯士,自掾史而下,各舉所知:其攻劫者為上,傷人偷盜者次之,不事家業者為下。收得百餘人,詡為饗會,悉貰其罪,使入賊中,誘令劫掠,乃伏兵以待之,遂殺賊數百人。又潛遣貧人能縫者傭作賊衣,以彩線縫其裾為識,有出市里者,吏輒擒之,賊由是駭散。

新字:長安市多偸盗,百賈苦之。張敞既視事,求問長安父老。偸盗酋長数人,居皆温厚,出従重騎,閭里以為長者。敞皆召見責問,因貰其罪,把其宿負,令致諸偸以自贖。偸長曰:「今一旦召詣府,恐諸偸驚駭,願一切受署。」敞皆以為吏,遣帰休。置酒,小偸悉来賀,且飲酔,偸長以赭汚其衣裾。吏坐里閭閲出者,見汚赭,輒収縛,一日捕得数百人。窮治所犯,市盗遂絶。朝歌賊寧季等数千人攻殺長吏,屯聚連年,州郡不能禁,乃以詡為朝歌長。始到,謁河内太守馬稜,願仮轡策,勿令有所拘閡。及到官,設三科以募壮士,自掾史而下,各舉所知:其攻劫者為上,傷人偸盗者次之,不事家業者為下。収得百余人,詡為饗会,悉貰其罪,使入賊中,誘令劫掠,乃伏兵以待之,遂殺賊数百人。又潜遣貧人能縫者傭作賊衣,以彩線縫其裾為識,有出市里者,吏輒擒之,賊由是駭散。

書き下し

長安の市に偸盗多く、百賈之に苦しむ。張敞、既に事を視るや、長安の父老に求め問う。偸盗の酋長数人、居は皆温厚にして、出づれば重騎に従い、閭里以て長者と為す。敞、皆召し見えて責め問い、因りて其の罪を貰し、其の宿負を把りて、諸偸を致して以て自ら贖わしむ。偸長曰く、「今、一旦府に召詣せば、諸偸の驚駭せんことを恐る。願わくは一切署を受けしめよ」と。敞、皆以て吏と為し、遣わして帰休せしむ。酒を置くに、小偸悉く来たりて賀し、且つ飲みて酔う。偸長、赭を以て其の衣裾を汚す。吏、里閭に坐して出づる者を閲し、赭の汚すを見れば、輒ち収縛す。一日に数百人を捕らう。窮め治めて犯す所あり、市盗遂に絶ゆ。朝歌の賊寧季等数千人、長吏を攻め殺し、屯聚すること連年、州郡禁ずる能わず。乃ち詡を以て朝歌の長と為す。始めて到るや、河内太守馬稜に謁し、轡策を仮して、拘閡する所有らしむる勿かれと願う。官に及びて、三科を設けて以て壮士を募る。掾史より下、各おの知る所を挙げよ。其の攻劫する者を上と為し、人を傷つけ偸盗する者を次とし、家業を事とせざる者を下と為す。収め得ること百余人、詡、饗会を為し、悉く其の罪を貰し、賊中に入らしめ、誘いて劫掠せしむ。乃ち兵を伏せて以て待ち、遂に賊数百人を殺す。又潜かに貧人の能く縫う者を遣わして賊衣に傭作せしめ、彩線を以て其の裾に縫いて識と為す。市里に出づる者有らば、吏輒ち之を擒う。賊是に由りて駭き散ず。

現代語訳

長安の市場には盗みが多く、商人たちは苦しんでいた。張敞は着任すると、長安の長老たちに事情をたずねた。盗賊の親玉が数人いて、住まいはどれも穏やかで、外出すれば多くの騎馬に従われ、村里では徳のある長者と思われていた。張敞はその全員を呼び出して問いただし、その罪を許して、過去の悪行を握ったうえで、盗賊たちを連れて来させて自ら罪を償わせることにした。親玉は言った。「今、突然役所に呼び出せば、盗賊たちは驚き恐れましょう。どうか全員に役職を与えてください」。張敞は皆を役人に取り立て、帰って休ませた。酒宴を開くと、小物の盗賊たちが皆集まって祝い、飲んで酔った。親玉は赤土で彼らの衣の裾を汚した。役人が里の門に座って出てくる者を調べ、赤土の汚れを見つけるとすぐ捕縛した。一日で数百人を捕らえた。取り調べて罪を究め、市場の盗みはついに絶えた。朝歌では賊の寧季ら数千人が長官を攻め殺し、集結して何年も続き、州郡も止められなかった。そこで虞詡を朝歌の長に任じた。着任すると、河内太守の馬稜に会い、「手綱と鞭を貸して、拘束を受けないようにしていただきたい」と願った。着任後、三つの区分を設けて勇士を募った。属官以下、それぞれ知っている者を推挙させた。略奪する者を上とし、人を傷つけたり盗みを働く者を次とし、家業に就かない者を下とした。百人あまりを集め、虞詡は宴会を開き、すべての罪を許し、賊の中に入らせて、略奪するよう誘わせた。そこで兵を伏せて待ち、賊数百人を殺した。また密かに、貧しい裁縫のできる人を遣わして賊の衣服の仕立てに雇わせ、色糸でその裾に縫い取りをして目印にした。市や里に出てくる者があれば、役人はすぐに捕らえた。賊はこれで驚き散り散りになった。

解説

二つの話に共通するのは、悪を外から力で押さえ込むのではなく、その内部事情に通じた者を使って内側から崩す方法です。張敞は盗賊の親玉自身に仲間を集めさせ、虞詡は賊の内情を知る者を募って誘い込みました。現場の事情は内部の者が一番よく知っています。ただし罪を許しつつ使う手法は、危うさも伴います。組織の問題に対処するとき、現場に通じた者の知恵を借りつつ、最終判断と統制は手放さない点が肝心だと読み取れるでしょう。

この章句が説くこと

偸長赭三科貰其罪内部の知恵人材登用

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