智囊 / 得情・鄭洛書・許進・姚公・張昺
張御史昺,字仲明,慈溪人,成化中,以進士知鉛山縣。有賣薪者,性嗜鱔。一日自市歸,飢甚,妻烹鱔以進,恣啖之,腹痛而死。鄰保謂妻毒夫,執送官,拷訊無他據,獄不能具。械係逾年,公始至,閱其牘,疑中鱔毒。召漁者捕鱔得數百斤,悉置水甕中,有昂頭出水二三寸者,數之得七。公異之,召此婦面烹焉,而出死囚與食,才下嚥,便稱腹痛,俄仆地死。婦冤遂白。〔馮評〕陸子遠《神政記》載此事,謂公受神教而然,說頗誕。要之凡物之異常者,皆有毒,察獄者自宜留心,何待取決於冥冥哉!
新字:張御史昺,字仲明,慈渓人,成化中,以進士知鉛山県。有売薪者,性嗜鱔。一日自市帰,飢甚,妻烹鱔以進,恣啖之,腹痛而死。鄰保謂妻毒夫,執送官,拷訊無他拠,獄不能具。械係逾年,公始至,閲其牘,疑中鱔毒。召漁者捕鱔得数百斤,悉置水甕中,有昂頭出水二三寸者,数之得七。公異之,召此婦面烹焉,而出死囚与食,才下嚥,便称腹痛,俄仆地死。婦冤遂白。〔馮評〕陸子遠《神政記》載此事,謂公受神教而然,説頗誕。要之凡物之異常者,皆有毒,察獄者自宜留心,何待取決於冥冥哉!
書き下し
張御史昺、字は仲明、慈溪の人なり。成化中、進士を以て鉛山県に知たり。薪を売る者有り、性は鱔を嗜む。一日、市より帰り、飢え甚だし。妻、鱔を烹て以て進む。恣に之を啖らい、腹痛みて死す。鄰保は、妻が夫に毒せりと謂い、執えて官に送る。拷訊するも他の据無く、獄具う能わず。械繋されて年を逾ゆ。公、始めて至り、其の牘を閲し、鱔の毒に中れるかと疑う。漁者を召して鱔を捕えしめ、数百斤を得て、悉く水甕中に置く。昂頭して水を出づること二三寸なる者有り。之を数うれば七なり。公異として、此の婦を召して面に烹しめ、而して死囚を出して与に食わしむるに、才かに下嚥して便ち腹痛を称し、俄にして地に仆れて死す。婦の冤乃ち白し。〔馮評〕陸子遠の『神政記』は此の事を載せ、公は神の教えを受けて然りと謂う。説は頗る誕なり。要するに凡そ物の異常なる者は、皆な毒有り。獄を察する者は自ら宜しく心を留むべし。何ぞ冥冥に決を取るを待たんや。
現代語訳
張御史は、名を昺、字を仲明といい、慈溪の人である。成化年間に、進士として鉛山県の知県になった。薪を売る男がいて、うなぎが好物だった。ある日、市から帰ると、ひどく空腹だった。妻がうなぎを煮て出した。思うさま食べて、腹が痛んで死んだ。近所の者たちは、妻が夫に毒を盛ったのだと言い、捕らえて役所に送った。拷問して取り調べたが他の証拠はなく、判決を下せなかった。妻は足かせをはめられたまま一年以上が過ぎた。張昺が着任して、調書を読み、うなぎの毒に当たったのではないかと疑った。漁師を呼んでうなぎを捕らせ、数百斤を得て、すべて水甕に入れた。その中に、頭を水面から二、三寸出しているものがあった。数えると七匹であった。公は不思議に思い、この妻を呼んでその面前で煮させ、死刑囚を出して食べさせると、飲み込むなり腹痛を訴え、まもなく地に倒れて死んだ。妻の冤罪は晴れた。〔馮夢龍の評〕陸子遠の『神政記』はこの事件を載せ、公は神の教えを受けてそうしたと言うが、その説はかなり荒唐無稽である。要するに、およそ物の異常なものには毒がある。獄を調べる者は、自ら心して注意するべきである。どうして見えない力に決断を頼む必要があろうか。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』得情・鄭洛書・許進・姚公・張昺鄭洛書、上海県に知たり。嘗て履端に郡に謁し、帰りて海口に泊す。沈屍有り、圧すに石磨を以てするを、忽ち之を見て、歎じて曰く、「此れ必ず客死ならん。故に余の告ぐる莫きなり」と。人を遣わして之を偵わしむるに、近村の民家に石磨有り、其の牡を失えり。執え来たりて相吻合す。一訊して即ち伏す。果たして江西の売卜人にして、歳晏れて将に帰らんとするに、房主、其の財を利して殺せるなり。単県に田作する者有り、其の婦、之に餉す。食い畢わりて死す。翁、故に曰く、「婦の意なり」と。官に陳ぶ。箠楚に勝えず、遂に誣服す。是れより天久しく雨ふらず。許襄毅公、時に山東に官たり。曰く、「獄に其れ冤有らんか」と。乃ち親ら其の地を歴め、獄囚を出して遍く審す。餉婦に至り、乃ち曰く、「夫婦の相守るは、人の至願。鴆毒もて人を殺すは、計の至密なる者なり。焉んぞ自ら田に餉して之を鴆する者有らんや」と。遂に其の餽する所の飲食、経る所の道路を詢う。婦曰く、「魚湯と米飯にして、荊林より度り、他の異なる無きなり」と。公乃ち魚を買い飯を作り、荊花を其の中に投じて、之を狗彘に試むるに、死せざる無し。婦の冤乃ち白し、即日大雨注ぐが如し。蘇人、商に外に出づ。其の妻は雞数隻を蓄えて以て其の帰りを待つ。数年にして方に返り、雞を殺して之を食らえば、夫即ち死す。隣人は外奸有るかと疑い、之を太守姚公に首す。鞫するも他の故無し。意うに其の雞に毒有りと。人をして老雞を覓め、当に死すべき囚と遍く之を食わしむるに、果たして二人を殺す。獄遂に白し。蓋し雞は蜈蚣百虫を食えば、久しくして毒を蓄う。故に養生家は雞の老いたるを食わず、又た夏は雞を食わず。
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