智囊 / 得情・張舉・陳騏
陳騏為江西僉憲。初至,夢一虎帶三矢,登其舟。覺而異之。會按問吉安女子謀殺親夫事,有疑。初,女子許嫁庠生,女富而夫貧,女家恒周給之。其夫感激,每告其友周彪,彪家亦富,聞其女美,欲求婚而無策,後貧士親迎時,彪與偕行,諺謂之「伴郎」。途中貧士遇盜殺死,貧士父疑女家嫌其貧,使人故要於路,謀殺其子,意欲他適,不知乃彪所謀,欲得其女也。訟於官。問者按女有奸謀殺夫,騏呼其父問之,但云:「女與人有奸。」而不得其主名。使穩婆驗其女,又處子,乃謂其父曰:「汝子交與誰最密?」曰:「周彪。」騏因思曰:「虎帶三矢而登舟,非周彪乎。況彪又伴其親迎,夢為是矣。」越數日,偽移檄吉安,取有學之士修郡志,而彪名在焉,既至,騏設饌以飲之,酒半,獨召彪於後堂,屏左右,引手歎息,陽謂之曰:「人言汝殺貧士而取其妻,吾憐汝有學,且此獄一成,不可復反。汝當吐實。吾救汝。」彪錯愕戰慄。跪而悉陳,騏錄其詞。潛令人捕同謀者。一訊而獄成,一郡驚以為神。
新字:陳騏為江西僉憲。初至,夢一虎帯三矢,登其舟。覚而異之。会按問吉安女子謀殺親夫事,有疑。初,女子許嫁庠生,女富而夫貧,女家恒周給之。其夫感激,毎告其友周彪,彪家亦富,聞其女美,欲求婚而無策,後貧士親迎時,彪与偕行,諺謂之「伴郎」。途中貧士遇盗殺死,貧士父疑女家嫌其貧,使人故要於路,謀殺其子,意欲他適,不知乃彪所謀,欲得其女也。訟於官。問者按女有奸謀殺夫,騏呼其父問之,但云:「女与人有奸。」而不得其主名。使穏婆験其女,又処子,乃謂其父曰:「汝子交与誰最密?」曰:「周彪。」騏因思曰:「虎帯三矢而登舟,非周彪乎。況彪又伴其親迎,夢為是矣。」越数日,偽移檄吉安,取有学之士修郡志,而彪名在焉,既至,騏設饌以飲之,酒半,独召彪於後堂,屏左右,引手嘆息,陽謂之曰:「人言汝殺貧士而取其妻,吾憐汝有学,且此獄一成,不可復反。汝当吐実。吾救汝。」彪錯愕戦慄。跪而悉陳,騏録其詞。潜令人捕同謀者。一訊而獄成,一郡驚以為神。
書き下し
陳騏、江西の僉憲と為る。初めて至るとき、夢に一虎の三矢を帯びて、其の舟に登る。覚めて之を異とす。会たま吉安の女子の親夫を謀殺せし事を按問するに、疑い有り。初め、女子は庠生に許嫁す。女は富みて夫は貧し、女の家は恒に之を周給す。其の夫、感激して、毎に其の友周彪に告ぐ。彪の家も亦た富み、其の女の美しきを聞き、婚を求めんと欲するも策無し。後に貧士の親迎する時、彪は偕に行く。諺に之を「伴郎」と謂う。途中、貧士は盗に遇いて殺死す。貧士の父は、女の家が其の貧を嫌い、人をして故と路に要せしめ、其の子を謀殺し、意は他に適かんと欲するならんと疑う。乃ち彪が謀りて其の女を得んと欲せるを知らず。官に訟う。問う者は、女に奸謀有りて夫を殺せりと按ず。騏、其の父を呼びて之を問うに、但だ云う、「女は人と奸有り」と。而も其の主名を得ず。穩婆をして其の女を験せしむるに、又た処子なり。乃ち其の父に謂いて曰く、「汝の子の交わり、誰と最も密なるか」と。曰く、「周彪なり」と。騏因りて思いて曰く、「虎の三矢を帯びて舟に登るは、周彪に非ずや。況んや彪は又た其の親迎に伴う。夢は是なり」と。数日を越えて、偽りて吉安に檄を移し、学有るの士を取りて郡志を修めしむ。而して彪の名は在り。既に至るや、騏は饌を設けて之を飲ましめ、酒半ばにして、独り彪を後堂に召し、左右を屏け、手を引きて歎息し、陽りて之に謂いて曰く、「人は汝が貧士を殺して其の妻を取れりと言う。吾は汝に学有るを憐れむ。且つ此の獄一たび成れば、復た反すべからず。汝は当に実を吐くべし。吾汝を救わん」と。彪は錯愕して戦慄す。跪きて悉く陳ぶ。騏、其の詞を録し、潜かに人をして同謀者を捕えしむ。一たび訊して獄成り、一郡驚きて以て神と為す。
現代語訳
陳騏が江西の按察使の次官になったとき、着任の直前、虎が三本の矢を帯びて自分の舟に乗り込む夢を見て、不思議に思った。やがて吉安の女性が夫を謀殺したという事件を調べることになり、疑問が出た。もともと女性は書生に嫁ぐ約束をしていた。女の家は豊かで夫は貧しく、女の家はいつも援助していた。夫は感謝して、よく友人の周彪に話していた。周彪の家も裕福で、その女性が美しいと聞いて縁談を望んだが手立てがなかった。その後、貧しい書生が迎えに行くとき、周彪は付き添って行った。俗に「伴郎」という。途中で、貧しい書生は盗賊に出会って殺された。書生の父は、女の家が息子の貧しさを嫌い、人を使ってわざと道で待ち伏せさせて殺し、他へ嫁ぐつもりだと疑った。しかし実は周彪がその女性を得ようとたくらんだとは知らなかった。そのまま役所に訴えた。取り調べる者は、女性に不貞の企みがあって夫を殺したと決めた。陳騏はその父を呼んで尋ねたが、ただ「娘は人と通じていた」と言うだけで、相手の名前は出なかった。産婆に娘を検査させたが、まだ処女であった。そこで父に言った。「あなたの息子は誰と一番親しくしていたか」と。父は「周彪です」と答えた。陳騏はそこで考えた。「虎が三本の矢を帯びて舟に乗るのは、周彪ではないか。しかも周彪は婚礼の迎えにも付き添った。夢は当たっている」と。数日たって、わざと吉安に文書を回し、学問のある士を集めて郡誌を編ませることにした。その名簿に周彪の名があった。来ると、陳騏は食事を用意して酒を勧め、酒がたけなわのころ、周彪だけを奥の間に呼び、側近を下がらせ、手を取って嘆いてみせ、偽って言った。「人はお前が貧しい書生を殺してその妻を取ったと言っている。私はお前に学があるのを惜しく思う。しかもこの裁きが一度確定すれば、二度とひっくり返せない。お前は真実を話しなさい。私が救おう」と。周彪はうろたえて震えた。ひざまずいてすべてを述べた。陳騏はその供述を記録し、ひそかに共犯者を捕らえさせた。一度の取り調べで事件は決着し、郡の人々は驚いて神のようだと称えた。
解説
この章句が説くこと
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