導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

智囊 / 經務・虞詡

〔馮述評〕虞詡涼州之議,成於李修之公訪德裕維州之議,格於僧孺之私憾。夫不為國家圖萬他,而自快其私,以貽後世噬臍之悔,斯不忠之大者矣。河套棄而陝右警,西河棄而甘州危,太寧棄而薊州逼,三坌河棄而遼東悚。國朝往事,可為寒心。昔單于冒頓不惜所愛名馬與女子,而必爭千里之棄地,遂因以滅東胡,並諸王。堂堂中國,而謀出丑虜下,恬不知恥,何哉?涼州之議,尤妙在辟其豪傑而用之,此玄德之所以安兩川也。嘉靖東南倭警,漕台鄭曉奏:「倭寇類多中國人,其間盡有勇智可用者,每苦資身無策,遂甘心從賊,為之嚮導。乞命各巡撫官於軍民白衣中,每歲查舉勇力智謀者數十人,與以『義勇』名色,月給米一石,令其無事則率人捕盜,有事則領兵殺賊,有功則官之。如此,不唯中國人不為賊用,且有將材出於其間。其從賊者諭令歸降,如才力可用,一體立功敘遷。不然,數年後或有如盧循、孫恩、黃巢、王仙芝者,益至滋蔓,難撥滅矣。」愚謂端簡公此策,今日正宜採用。

新字:〔馮述評〕虞詡涼州之議,成於李修之公訪徳裕維州之議,格於僧孺之私憾。夫不為国家図万他,而自快其私,以貽後世噬臍之悔,斯不忠之大者矣。河套棄而陝右警,西河棄而甘州危,太寧棄而薊州逼,三坌河棄而遼東悚。国朝往事,可為寒心。昔単于冒頓不惜所愛名馬与女子,而必争千里之棄地,遂因以滅東胡,並諸王。堂堂中国,而謀出丑虜下,恬不知恥,何哉?涼州之議,尤妙在辟其豪傑而用之,此玄徳之所以安両川也。嘉靖東南倭警,漕台鄭暁奏:「倭寇類多中国人,其間尽有勇智可用者,毎苦資身無策,遂甘心従賊,為之嚮導。乞命各巡撫官於軍民白衣中,毎歳查舉勇力智謀者数十人,与以『義勇』名色,月給米一石,令其無事則率人捕盗,有事則領兵殺賊,有功則官之。如此,不唯中国人不為賊用,且有将材出於其間。其従賊者諭令帰降,如才力可用,一体立功敘遷。不然,数年後或有如盧循、孫恩、黄巣、王仙芝者,益至滋蔓,難撥滅矣。」愚謂端簡公此策,今日正宜採用。

書き下し

〔馮述評〕虞詡の涼州の議は、李修の公に成り、徳裕の維州の議は、僧孺の私憾に格がる。夫れ国家の為に万全を図らず、而して自ら其の私を快くし、以て後世に噬臍の悔を貽すは、斯れ不忠の大なるものなり。河套棄てられて陝右警しみ、西河棄てられて甘州危うく、太寧棄てられて薊州逼り、三岔河棄てられて遼東悚す。国朝の往事は、寒心す可し。昔、単于冒頓は愛する所の名馬と女子を惜しまずして、必ず千里の棄地を争い、遂に因りて以て東胡を滅ぼし、諸王を並せたり。堂堂たる中国にして、謀は醜虜の下に出で、恬として恥を知らざるは、何ぞや。涼州の議は、尤も妙は其の豪傑を辟きて之を用うるに在り、此れ玄徳の両川を安んぜし所以なり。嘉靖の東南の倭警に、漕台の鄭暁は奏す、「倭寇は類ね多く中国の人にして、其の間に尽く勇智の用う可き者有り、每に身を資するに策無きに苦しみ、遂に心に賊に従うに甘んじ、為に嚮導と為る。乞う、各おの巡撫官に命じ、軍民の白衣の中に於いて、毎歳、勇力智謀の者数十人を査挙し、与うるに『義勇』の名色を以てし、月ごとに米一石を給し、其れをして無事なれば則ち人を率いて盗を捕らえ、有事なれば則ち兵を領して賊を殺し、功有れば則ち之に官せしめん。此の如くせば、唯だ中国の人は賊の用と為らざるのみならず、且つ将材の其の間より出づる有らん。其の賊に従う者は諭して帰降せしめ、如し才力の用う可きものあらば、一体に功を立てて敘遷せしめん。然らずんば、数年の後に或いは盧循、孫恩、黄巣、王仙芝の如き者有りて、益ます滋蔓に至り、撥滅し難からん」と。愚は謂う、端簡公の此の策は、今日正に宜しく採用すべし。

現代語訳

〔馮夢龍の評〕虞詡の涼州に関する議論は、李修が公正であったために成功し、李徳裕の維州に関する議論は、牛僧孺の私的な恨みに阻まれた。そもそも国家のために万全を図らず、自分の私情を満たし、後世に取り返しのつかない悔いを残すのは、不忠のなかでも大きなものである。河套が捨てられて陝西の右が警戒を要し、西河が捨てられて甘州が危うくなり、太寧が捨てられて薊州に迫られ、三岔河が捨てられて遼東が震え上がった。わが明朝の過去の出来事は、ぞっとするほどだ。昔、匈奴の単于の冒頓は、愛する名馬と女性を惜しまなかったのに、千里の捨て地を必ず争い、それによって東胡を滅ぼし、諸王を併合した。堂々たる中国でありながら、策略が卑しい敵にも及ばず、平然と恥を知らないのはなぜか。涼州の議論は、とくに優れたところが豪傑を召して用いたことにあり、これは劉備が両川を安んじたゆえんでもある。嘉靖年間、東南に倭寇の警報が出たとき、漕運を司る鄭暁は上奏した。「倭寇はたいてい中国の人で、その中には勇気と知恵が使える者が大勢いますが、生活の手立てがなくて苦しみ、そのまま心から賊に従って、道案内になっています。願わくは、各巡撫に命じて、軍民の無位の者のなかから、毎年、勇力と知謀のある者を数十人調べて推挙し、『義勇』という名目を与え、月に米一石を支給し、平時には人を率いて盗賊を捕らえ、有事には兵を率いて賊を討たせ、功があれば官に取り立ててください。こうすれば、中国の人が賊に利用されなくなるだけでなく、将の器もその中から出るでしょう。賊に従っている者は諭して降伏させ、才力が用いられる者は、同じく功を立てて昇進させます。そうしなければ、数年後には盧循、孫恩、黄巣、王仙芝のような者が現れ、ますます蔓延して根絶しにくくなるでしょう。」私が思うに、端簡公のこの策は、今日まさに採用すべきである。

解説

馮夢龍は、虞詡の案が通ったのは決める側が公正だったからで、李徳裕の維州の策が潰れたのは牛僧孺の私怨のためだったと対比します。そして、土地を捨てるたびに近隣が危うくなった明の失策を挙げ、不忠の大きなものだと断じます。後半の鄭暁の提案は、倭寇に加わった中国人に生活の道を与え、義勇として組織すれば、敵を味方にし人材も生まれるという構想です。組織でも、反発する人や離れていく人の多くには、居場所がないという理由があります。力ある人に役割と待遇を与えれば敵は減り、味方が増えます。私情で判断を曲げない公正さの大切さも、この評は教えています。

この章句が説くこと

噬臍の悔豪傑を辟く義勇倭寇私憾人材登用

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る