導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

智囊 / 剖疑・魏元忠

唐魏元忠未達時,一婢出汲方還,見老猿於廚下看火。婢驚白之,元忠徐曰:「猿愍我無人,為我執爨,甚善。」又嘗呼蒼頭,未應,狗代呼之。又曰:「孝順狗也,乃能代我勞!」嘗獨坐,有群鼠拱手立其前。又曰:「鼠飢就我求食。」乃令食之。夜中鵂鶹鳴其屋端,家人將彈之。又止曰:「鵂鶹晝不見物,故夜飛,此天地所育,不可使南走越,北走胡,將何所之?」其後遂絕無怪。

新字:唐魏元忠未達時,一婢出汲方還,見老猿於廚下看火。婢驚白之,元忠徐曰:「猿愍我無人,為我執爨,甚善。」又嘗呼蒼頭,未応,狗代呼之。又曰:「孝順狗也,乃能代我労!」嘗独坐,有群鼠拱手立其前。又曰:「鼠飢就我求食。」乃令食之。夜中鵂鶹鳴其屋端,家人将弾之。又止曰:「鵂鶹昼不見物,故夜飛,此天地所育,不可使南走越,北走胡,将何所之?」其後遂絶無怪。

書き下し

唐の魏元忠、未だ達せざる時、一婢汲みに出でて方に還り、老猿の廚下に在りて火を看るを見る。婢驚きて之を白す。元忠徐ろに曰く、「猿は我に人無きを愍れみ、我が為に爨を執る。甚だ善し」と。又嘗て蒼頭を呼びて、未だ応えざるに、狗の代わりて之を呼ぶ。又曰く、「孝順の狗なり、乃ち能く我に代わりて労す」と。嘗て独り坐するに、群鼠の拱手して其の前に立つ有り。又曰く、「鼠は飢えて我に就きて食を求む」と。乃ち令して之に食わしむ。夜中、鵂鶹其の屋端に鳴く。家人将に之を弾かんとす。又止めて曰く、「鵂鶹は昼は物を見ず、故に夜飛ぶ。此れ天地の育する所、南のかた越に走り、北のかた胡に走らしむべからず、将に何くに之く所あらんや」と。其の後遂に絶えて怪無し。

現代語訳

唐の魏元忠がまだ世に出ていなかった頃、下女が水汲みから帰ると、年取った猿が台所で火の番をしているのを見た。下女は驚いて元忠に告げた。元忠はゆっくりと言った。「猿は私に人手がないのを気の毒に思って、私のために炊事をしてくれているのだ。ありがたいことだ」。またある時、召使を呼んだが返事がないうちに、犬が代わりに呼んだ。元忠はまた言った。「親孝行な犬だ。よくも私に代わって働いてくれる」。ある時一人で座っていると、ネズミの群れが手を組んで目の前に立った。元忠はまた言った。「ネズミは腹を空かせて、私に食べ物を求めに来たのだ」。そこで食べさせた。夜中に、ミミズクが屋根の端で鳴いた。家の者が弓で撃とうとしたが、これも止めて言った。「ミミズクは昼間は物が見えないので夜に飛ぶのだ。これは天地が育んだもの。南の越へも北の胡へも逃げさせるわけにはいかない。どこへ行けというのか」。その後、怪しいことは一切起こらなくなった。

解説

猿が炊事をし、犬が人を呼び、ネズミが目の前に並ぶという、怪異そのものの現象を、魏元忠は全部好意的な解釈で受け流しました。怯えて騒ぐほど怪異は居座りますが、相手にしなければ勢いを失い、やがて消えたという話です。上に立つ人が動じない姿勢は、周囲の混乱を静める力になります。現代の管理職も、想定外の事態に最初に見せる反応が、チームの空気を決めます。動揺せず落ち着いて事実を引き受ける姿勢が、事態の悪化を食い止める第一歩になります。

この章句が説くこと

猿為我執爨孝順狗也天地所育動じない危機管理胆力

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る