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智囊 / 億中・劉惔

漢主李勢驕淫,不恤國事。桓溫帥師伐之,拜表即行。朝廷以蜀道險遠,溫眾少而深入,皆以為憂,唯劉惔以為必克。或問其故,惔曰:「以博知之:溫,善博者也,不必得,則不為。但恐克蜀之後,專制朝廷耳。」〔按〕惔每奇溫才,而知其有不臣之志,謂會稽王昱曰:「溫不可使居形勢之地。」昱不從。及溫既克蜀,昱憚其威名,乃引殷浩以抗之,由是浸成疑貳。至浩北伐無功,而溫遂不可制矣。

新字:漢主李勢驕淫,不恤国事。桓温帥師伐之,拝表即行。朝廷以蜀道険遠,温衆少而深入,皆以為憂,唯劉惔以為必克。或問其故,惔曰:「以博知之:温,善博者也,不必得,則不為。但恐克蜀之後,専制朝廷耳。」〔按〕惔毎奇温才,而知其有不臣之志,謂会稽王昱曰:「温不可使居形勢之地。」昱不従。及温既克蜀,昱憚其威名,乃引殷浩以抗之,由是浸成疑貳。至浩北伐無功,而温遂不可制矣。

書き下し

漢主の李勢は驕淫にして、国事を恤えず。桓温、師を帥いて之を伐ち、表を拝して即ち行く。朝廷は蜀道の険遠にして、温の衆は少なくして深く入るを以て、皆憂えと為す。唯だ劉惔のみ必ず克つと以為う。或ひと其の故を問う。惔曰く、「博を以て之を知る。温は善く博する者なり。必ず得ざれば、則ち為さず。但だ恐らくは蜀に克ちし後、朝廷を専制せんことを」と。〔按〕惔は毎に温の才を奇とし、而して其の不臣の志有るを知り、会稽王昱に謂いて曰く、「温は形勢の地に居らしむべからず」と。昱は従わず。温の既に蜀に克つに及び、昱は其の威名を憚り、乃ち殷浩を引きて以て之に抗せしめ、是れより浸く疑貳を成す。浩の北伐の功無きに至り、而して温は遂に制すべからず。

現代語訳

成漢(漢)の主、李勢は驕り高ぶって淫らで、国政を顧みなかった。桓温は軍を率いて討ち、上表して直ちに出発した。朝廷は蜀への道が険しく遠いこと、温の兵が少ないのに深く入ることを、みな心配した。ただ劉惔だけが必ず勝つと考えた。ある人がその理由を尋ねた。惔は言った。「博打によって分かる。温は博打が上手い者だ。必ず勝てるとは限らなければ、やらない。ただ心配なのは、蜀に勝ったあと、朝廷を専横することだ」。〔按語〕惔はつねに温の才を優れたものとし、その臣下としての分をわきまえない志があることを知り、会稽王昱に言った。「温を勢力の要となる地に置いてはいけません」。昱は従わなかった。温が蜀に勝つと、昱は温の威名を恐れ、殷浩を引き立てて対抗させ、これより次第に疑いと不和が生まれた。浩の北伐が功なく終わると、温はもう制御できなくなった。

解説

劉惔は、桓温の人物を博打の癖にたとえ、勝算がないことはしない人だから成功するだろうと見ました。そして成功した後が問題で、大きな功績で権力を握りかねないと警告しています。部下が成果を出すことと、組織の秩序を脅かすことは別の問題です。管理職は、有能な人材に大きな権限を与える時、成功後の立場まで見通して手を打つ必要があります。朝廷は警告を聞き入れず、後で対抗者を立てて不和を生み、手遅れになりました。有能さと忠誠は別の軸で見るべきだという話です。

この章句が説くこと

以て博を知る必ず克つ形勢の地不臣の志人材登用権限管理

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