導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

智囊 / 億中・范雎

王稽辭魏去,私載范雎,至湖關,望見車騎西來,曰:「秦相穰侯東行縣邑。」雎曰:「吾聞穰侯專秦權,惡納諸侯客,恐辱我。我且匿車中。」有頃,穰侯至,勞王稽,因立車語曰:「關東有何變?」曰:「無有。」又曰:「謁君得無與諸侯客子俱來乎?無益,徒亂人國耳!」王稽曰:「不敢。」即別去。范雎出曰:「穰侯,智士也,其見事遲。向者疑車中有人,忘索,必悔之。」於是雎下車走。行數里,果使騎還索,無客乃已。雎遂與稽入咸陽。〔馮述評〕穰侯舉動不出雎意中,所以操縱不出雎掌中。

新字:王稽辞魏去,私載范雎,至湖関,望見車騎西来,曰:「秦相穰侯東行県邑。」雎曰:「吾聞穰侯専秦権,悪納諸侯客,恐辱我。我且匿車中。」有頃,穰侯至,労王稽,因立車語曰:「関東有何変?」曰:「無有。」又曰:「謁君得無与諸侯客子倶来乎?無益,徒乱人国耳!」王稽曰:「不敢。」即別去。范雎出曰:「穰侯,智士也,其見事遅。向者疑車中有人,忘索,必悔之。」於是雎下車走。行数里,果使騎還索,無客乃已。雎遂与稽入咸陽。〔馮述評〕穰侯舉動不出雎意中,所以操縦不出雎掌中。

書き下し

王稽、魏を辞して去り、私かに范雎を載せ、湖関に至り、車騎の西より来たるを望み見て、曰く、「秦相穣侯、東して県邑を行るなり。」雎曰く、「吾聞く、穣侯は秦の権を専らにし、諸侯の客を納るるを悪む。恐らくは我を辱めん。我且に車中に匿れん。」有頃して穣侯至り、王稽を労い、因りて車を立てて語りて曰く、「関東に何の変有るか。」曰く、「無し。」又た曰く、「謁君は諸侯の客子と俱に来たること無きを得んや。益無し。徒らに人の国を乱すのみ。」王稽曰く、「敢えてせず。」即ち別れ去る。范雎出でて曰く、「穣侯は智士なれども、其の事を見ること遅し。向者に車中に人有るを疑い、索むるを忘る。必ず之を悔いん。」是に於いて雎は車を下りて走る。行くこと数里、果たして騎をして還り索めしむ。客無くして乃ち已む。雎遂に稽と咸陽に入る。〔馮述評〕穣侯の挙動は雎の意中を出でず。操縦の雎の掌中を出でざる所以なり。

現代語訳

王稽は魏の使節の任を終えて去るとき、ひそかに范雎を車に乗せ、湖関に着いた。西から車騎が来るのを遠くに見て、言った。「秦の宰相の穣侯が、東の県邑を巡察されているのです。」范雎は言った。「聞くところでは、穣侯は秦の権力を一手に握り、諸侯の客を受け入れることを嫌うそうです。私は恥をかかされるかもしれません。私はしばらく車の中に隠れます。」しばらくして穣侯が着き、王稽をねぎらい、車を止めて話した。「関東では何か変わったことがあったか。」「ありません。」穣侯はまた言った。「あなたは、諸侯の客を連れて来たりはしていないでしょうね。役に立たない。ただ人の国を乱すだけだ。」王稽は「とんでもありません」と言った。穣侯はすぐに別れて去った。范雎は出てきて言った。「穣侯は智者ですが、物事に気づくのが遅い。さきほど車中に人がいるのではと疑ったのに、調べるのを忘れた。必ず後悔するでしょう。」そこで范雎は車から降りて走った。数里行ったところで、果たして騎兵を戻らせて捜索させた。客がいなかったので、捜索はやんだ。范雎はついに王稽とともに咸陽に入った。〔馮夢龍の評〕穣侯の行動は、范雎の予想の外に出なかった。この見通しが、のちに范雎が穣侯を意のままに操った理由である。

解説

追っ手の動きを事前に読み、車から降りて逃れた范雎の話です。穣侯の性格を、疑い深いが詰めが甘いと分析していたため、後悔して捜索に戻ると予測できました。相手の癖や判断の速度を観察し、その行動を先読みして動けば、危険を回避するだけでなく主導権も握れます。馮夢龍も、この読みが後の穣侯攻略につながったと評します。管理職も、競合や取引先の意思決定の特徴を日頃から把握し、相手が次にどう動くかを想定して準備しておくと、交渉や対立の場面で有利に立てます。

この章句が説くこと

其見事遅疑車中有人必悔之先読み相手の分析行動予測

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る