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智囊 / 知微・唐寅

宸濠甚愛唐六如,嘗遣人持百金,至蘇聘之。既至,處以別館,待之甚厚。六如住半年,見其所為不法,知其後必反,遂佯狂以處。宸濠遣人餽物,則倮形箕踞,以手弄其人道,譏呵使者;使者反命,宸濠曰:「孰謂唐生賢,一狂士耳。」遂放歸。不久而告變矣。

新字:宸濠甚愛唐六如,嘗遣人持百金,至蘇聘之。既至,処以別館,待之甚厚。六如住半年,見其所為不法,知其後必反,遂佯狂以処。宸濠遣人餽物,則倮形箕踞,以手弄其人道,譏呵使者;使者反命,宸濠曰:「孰謂唐生賢,一狂士耳。」遂放帰。不久而告変矣。

書き下し

宸濠は唐六如を甚だ愛し、嘗て人を遣わし百金を持して、蘇に至りて之を聘せしむ。既に至れば、別館に処らしめ、之を待すること甚だ厚し。六如住まること半年、其の為す所の不法なるを見、其の後必ず反するを知り、遂に佯狂して以て処る。宸濠、人を遣わして物を餽らしむれば、則ち形を倮にして箕踞し、手を以て其の人道を弄び、使者を譏呵す。使者反命するに、宸濠曰く、「孰か唐生を賢なりと謂う。一狂士のみ。」遂に放ち帰す。久しからずして変を告ぐ。

現代語訳

寧王の朱宸濠は唐寅(六如)を深く愛し、かつて人を遣わして百金を持たせ、蘇州に迎えに行かせた。唐寅が来ると、別館に住まわせ、手厚くもてなした。唐寅は半年住んだが、寧王のやることが不法であるのを見て、きっと後に反乱を起こすと知り、そこで狂人のふりをして過ごした。寧王が人を遣わして贈り物を届けさせると、唐寅は裸になって足を投げ出して座り、手で陰部をもてあそびながら、使者を罵った。使者が戻って報告すると、寧王は言った。「誰が唐生を賢者だと言ったのか。ただの狂人ではないか。」そして放免して帰した。まもなく寧王の反乱が告げられた。

解説

才能を買われて招かれた唐寅が、主人の不法を見て、狂人を装って脱出した話です。直接批判すれば命が危うく、黙って留まれば反乱に巻き込まれる、その板挟みを、奇行によって切り抜けました。肝心なのは、相手の面子を傷つけずに離れる方法を選んだ点です。管理職として、倫理に反する組織や上司の下にいるとき、真正面から対立する以外に、合理的な形で距離を置く選択肢があることが示されています。自分の名誉や評判を一時的に損なっても、命や尊厳を守る価値があるという割り切りも学べます。

この章句が説くこと

佯狂箕踞知其後必反身の処し方不正への距離危機回避

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