智囊 / 迎刃・王旦
馬軍副都指揮使張旻被旨選兵,下令太峻,兵懼,謀為變。上召二府議之,王旦曰:「若罪旻,則自今帥臣何以御眾?急捕謀者,則震驚都邑。陛下數欲任旻以樞密,今若擢用,使解兵柄,反側者當自安矣。」上謂左右曰,「旦善處大事,真宰相也!」〔馮述評〕借一轉以存帥臣之體,而徐議其去留,原非私一旻也。契丹奏請歲給外別假錢幣。真宗以示王旦,公曰:「東封甚迫,車駕將出,以此探朝廷之意耳。可於歲給三十萬物內各借三萬,仍諭次年額內除之。」契丹得之大慚,次年復下有司:「契丹所借金帛六萬,事屬微末,仰依常數與之,今後永不為例。」〔馮述評〕不借則違其意;徒借又無其名;借而不除,則無以塞僥倖之望;借而必除,又無以明中國之大。如是處分方妥。西夏趙德明求糧萬斛,王旦請敕有司具粟百萬於京師,而詔德明來取,德明大慚,曰:「朝廷有人。」乃止。
新字:馬軍副都指揮使張旻被旨選兵,下令太峻,兵懼,謀為変。上召二府議之,王旦曰:「若罪旻,則自今帥臣何以御衆?急捕謀者,則震驚都邑。陛下数欲任旻以枢密,今若擢用,使解兵柄,反側者当自安矣。」上謂左右曰,「旦善処大事,真宰相也!」〔馮述評〕借一転以存帥臣之体,而徐議其去留,原非私一旻也。契丹奏請歳給外別仮銭幣。真宗以示王旦,公曰:「東封甚迫,車駕将出,以此探朝廷之意耳。可於歳給三十万物内各借三万,仍諭次年額内除之。」契丹得之大慚,次年復下有司:「契丹所借金帛六万,事属微末,仰依常数与之,今後永不為例。」〔馮述評〕不借則違其意;徒借又無其名;借而不除,則無以塞僥倖之望;借而必除,又無以明中国之大。如是処分方妥。西夏趙徳明求糧万斛,王旦請勅有司具粟百万於京師,而詔徳明来取,徳明大慚,曰:「朝廷有人。」乃止。
書き下し
馬軍副都指揮使張旻、旨を被りて兵を選ぶに、令を下すこと太だ峻しく、兵は懼れ、謀りて変を為さんとす。上は二府を召して之を議す。王旦曰く、「若し旻を罪せば、則ち今自り帥臣は何を以て衆を御せん。急ぎ謀る者を捕らえば、則ち都邑を震驚せしめん。陛下、数ば旻を任ずるに枢密を以てせんと欲す。今、若し擢用して、兵柄を解かしめば、反側する者は当に自ら安んずべし」と。上、左右に謂いて曰く、「旦は大事を処するに善し、真の宰相なり」と。〔馮述評〕一転を借りて以て帥臣の体を存し、而して徐に其の去留を議す。原より旻に私するに非ず。契丹、歳給の外に別に銭幣を仮さんことを奏請す。真宗以て王旦に示す。公曰く、「東封甚だ迫り、車駕将に出でんとす。此れを以て朝廷の意を探るのみ。歳給三十万物の内に於いて各おの三万を借し、仍お次年の額内より除くことを諭す可し」と。契丹は之を得て大いに慚じ、次年復た有司に下す、「契丹の借る所の金帛六万、事は微末に属す。仰せて常数に依りて之に与え、今後は永く例と為さず」と。〔馮述評〕借さざれば則ち其の意に違う。徒に借せば又た名無し。借して除かざれば、則ち僥倖の望みを塞ぐ無し。借して必ず除かば、又た中国の大なるを明らかにする無し。是くの如く処分して方めて妥なり。西夏の趙徳明、糧万斛を求む。王旦、有司に敕して粟百万を京師に具えしめ、而して徳明をして来たりて取らしめんことを請う。徳明は大いに慚じ、曰く、「朝廷に人有り」と。乃ち止む。
現代語訳
馬軍副都指揮使の張旻が、詔を受けて兵を選別したとき、命令があまりに厳しかったので、兵は恐れ、謀って反乱を起こそうとした。帝は二府の大臣を召して協議した。王旦は言った。「もし張旻を罰すれば、今後、将帥はどのように兵を統御できましょうか。急いで謀った者を捕らえれば、都全体が震え驚きます。陛下はたびたび張旻を枢密院に任じようとなさいました。いま抜擢して、兵権を解かせれば、不穏な者は自然に落ち着くでしょう」。帝は側近に言った。「旦は大事を処理するのに巧みだ。真の宰相である」。〔馮述評〕一度の転任を借りて将帥の体面を保ち、そのうえでゆっくりと去就を議した。もとより張旻一人を私情でかばったのではない。契丹が、毎年の贈与の他に別に金品を貸してほしいと上奏して求めた。真宗がそれを王旦に示した。公は言った。「泰山での封禅が迫り、天子が出かけようとしています。これは朝廷の意向を探っているだけです。毎年の三十万の物資の中から、それぞれ三万を貸し、さらに来年の定額から差し引くと諭しましょう」。契丹はそれを受け取って大いに恥じ、翌年また役所に言い送った。「契丹が借りた金帛六万は、些細な事である。どうか通常の額どおりに与え、今後は永く前例としない」。〔馮述評〕貸さなければ相手の意向に反する。ただ貸しても名目がない。貸して差し引かなければ、図々しい望みを断てない。貸して必ず差し引けば、中国の大きさを示せない。このように処置して初めて妥当である。西夏の趙徳明が食糧一万石を求めた。王旦は役所に命じて穀物百万を都に用意させ、徳明に取りに来させるよう願った。徳明は大いに恥じ入って言った。「朝廷には人材がいる」。そこで要求を止めた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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葉隠・聞書第十一白刄(しらは)持ちたる者に行逢(ゆきあ)い候(そうろう)時の事。向(むこう)より物を云わば、此方よりも物を云わず。向より詞(ことば)を出し候わば、此方何のかまいなしに、「通るべし。」と云いて、行逢いざまに、その儘(まま)詞を懸くべし。「行懸(ゆきかか)りたる事なれば、拔身(ぬきみ)を持ちて通り候わば、其の分にては置きがたし。」と云いて跡(あと)より追懸(おいか)くべし。德(とく)有り。口傳(くでん)。脇(わき)より見てよし。最前(さいぜん)も道の眞中(まんなか)を通るべし。又行向(ゆきむか)い、その儘さすべし。若(も)し手向(てむか)い候わば運次第なり。
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李衛公問対・卷中千章万句、『人を致して人に致されず』を出でざるのみ。
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尉繚子・戰權兵法に曰く、「千人にして権を成し、万人にして武を成す。権先づ人に加ふる者は、敵力交へず。武先づ人に加ふる者は、敵威接せず」と。故に兵は先を貴ぶ。此に勝てば、則ち彼に勝つ。此に勝たざれば、則ち彼に勝たず。凡そ我往けば則ち彼来たり、彼来たれば則ち我往き、相勝敗を為す、此れ戦の理の然るなり。夫れ精誠は神明に在り、戦権は道の極まる所に在り。有る者は之を無くし、無き者は之を有らしむ、安んぞ之を信ずる所あらん。先王の伝聞する所の者は、正に任じ詐を去り、其の慈順を存し、決して留刑無し。故に道を知る者は、必ず先づ止まるを知らざるの敗を図る、悪んぞ必ず往きて功有るに在らんや。軽く進みて戦を求むれば、敵復た止まるを図り、我往きて敵勝を制す。故に兵法に曰く、「求めて之に従ひ、見て之に加へ、主人敢へて当たらざるに之を陵げば、必ず其の権を喪ふ」と。凡そ奪はるる者は気無く、恐るる者は守るべからず、敗るる者は人無し、兵に道無ければなり。意往きて疑はざれば、則ち之に従ふ。敵を奪ひて前無ければ、則ち之に加ふ。明らかに視て高く居れば、則ち之を威す。兵の道極まれり。其の言謹み無ければ、偸みて失はしむ。其の陵犯節無ければ、破る。水のごとく潰し雷のごとく撃てば、三軍乱る。必ず其の危ふきを安んじ、其の患を去り、智を以て之を決す。之を高くするに廊廟の論を以てし、之を重くするに受命の論を以てし、之を鋭くするに踰垠の論を以てすれば、則ち敵国戦はずして服すべし。
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孫子・虚実篇孫子曰く、戦いを善くする者は、人を致して人に致されず。
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『新論』長計是れ所謂其の之く所を乖く者にして、実を変じて虚と為し、虚を転じて実と為す。此くの如くなれば、則ち神聖の夷狄を御する所以の略、彼倒用するを得ずして、彼の我を擾す所以の術、我将に之を倒用せんとす。然る後操縦の権、我より之を制す。廟謨既に定まり、上下心を同じくし、千塗万轍、必ず是の道に由りて変ぜず。是に於てか我の夷狄を御する所以の者は、即ち神聖の夷狄を御する所以にして、内に一定の略有りて、外に乗ずべきの虚無し。黠虜をして千群我を窺はしむと雖も、将た何を以て我が辺陲に陸梁するを得んや。(大猷公嘗て訳官島野兼了なる者を天竺に遣はす。兼了荷蘭の賈舶に乗り、諸国を周流し、遂に東海に往くこと三千里、一大国を得たり。以為へらく是の国宜しく神州に属すべしと。因りて碑を立てて題して日本国中と曰ふ。当時の規模の宏遠なること、亦見るべきなり。海東三千里なる者は、疑ふらくは即ち西夷の所謂亜墨利加洲なる者ならん。)
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李衛公問対・卷中兵は主為るを貴び、客為るを貴ばず。速やかなるを貴び、久しきを貴ばず。
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