智囊 / 通簡・程卓
休寧程從元卓守嘉興時,或偽為倅廳印紙,與奸民為市,以充契券之用。流布既廣,吏因事覺,視為奇貨,謂無真偽,當歷加追驗,則所得可裨郡計不少,公曰:「此不過偽造者罪耳,若一一驗之,編民並擾;吾以安民為先,利非所急也。」乃喻民有誤買者許自陳,立與換印。陳者畢至,一郡晏然。
新字:休寧程従元卓守嘉興時,或偽為倅庁印紙,与奸民為市,以充契券之用。流布既広,吏因事覚,視為奇貨,謂無真偽,当歴加追験,則所得可裨郡計不少,公曰:「此不過偽造者罪耳,若一一験之,編民並擾;吾以安民為先,利非所急也。」乃喩民有誤買者許自陳,立与換印。陳者畢至,一郡晏然。
書き下し
休寧の程従元卓、嘉興を守りし時、或いは倅庁の印紙を偽り為り、奸民と市を為し、以て契券の用に充つ。流布既に広く、吏は事に因りて覚り、奇貨と視、真偽無く当に歴く加えて追験すべし、則ち得る所は郡計を裨くること少なからずと謂う。公曰く、「此れ偽造者の罪なるに過ぎざるのみ。若し一一之を験せば、編民並びに擾る。吾は民を安んずるを以て先と為す。利は急ぐ所に非ず」と。乃ち民に誤って買う者有れば自ら陳ずるを許すと喩し、立ちどころに印を換えしむ。陳ずる者畢く至り、一郡晏然たり。
現代語訳
休寧の人、程卓(字は従元)が嘉興の長官であったとき、ある者が副官庁の印紙を偽造し、悪質な民と取引して、契約書類に使わせていた。偽物はすでに広く出回っており、役人はこれを嗅ぎつけて好機と見なし、真偽を問わず片端から調べ直せば、官庁の収入に少なからず足しになると言った。程公は言った。「これは偽造した者の罪にすぎない。もし一件一件調べれば、民がみな騒ぎ立つ。私は民を安んずることを先とする。利益は急ぐところではない」。そこで、誤って偽物を買った者は自分から申し出てよいと布告し、その場で本物の印に換えさせた。申し出る者がみな集まり、郡全体が静かに収まった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『宋名臣言行録』前集巻五・蔡齊濰州に通判たり。民に某氏の税印を刻して姦利を為す者を告ぐる有り。已に十年を逾ゆ。蹤跡連蔓して數百人に至る。公歎じて曰く、利を民に盡くさば、民逃るる所無し。是れ政を為す者の過ちなりと。為に其の獄を緩くす。死を減ずるを得る者十餘人。餘は皆な釋して問わず。濰人皆な曰く、公、我に徳あり、我をして自ら新たにして善人と為らしむと。是に由りて風化大いに行わる。
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『智囊』通簡・林興祖林興祖は初め黄岩州事に同知たり、三遷して鉛山州に知たり。鉛山は素より偽鈔を造る者多く、豪民呉友文其の魁たり。遠く江、淮、燕、薊に至るまで、行使せざる莫し。友文は奸黠悍鷙にして、偽造に因りて富を致し、乃ち悪少四五十人を分遣して有司に吏と為し、告げんと欲する者有るを伺い、輒ち事に先んじて之を戕す。前後して人を殺すこと甚だ衆く、人の妻女十一人を奪いて妾と為す。民は害に罹り、冤を銜みて敢えて訴えざること十余年なり。興祖は官に至りて曰く、「此の害を除かずんば、何を以て民を救わん」と。即ち榜を張りて偽造する者を禁じ、且つ賞を立てて民の首告を募る。俄かに告ぐる者の到る有り、佯りて不実を以て斥け去る。又た告げ、偽造二人と贓を並びに獲、乃ち之を鞫す。款成りて、友文は自ら官に至りて之が為に営救す。興祖は並びに命じて之を執らう。須臾にして友文を訴うる者百余人来り、其の重罪の一二事を択びて之を鞫するに、獄は立ちどころに具わる。其の党を逮捕し、悉く之を法に置く。民は賴りて以て安んず。〔馮述評〕始め緩を以て之を致し、終に速を以て之を斃す。凶悪を除くは須らく此の深心辣手を得べし。
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『智囊』經務・趙開趙開、既に銭引を疏通し、民は以て便なりとす。一日、有司、偽引三十万を獲、盗五十人あり。議するに法は当に死すべしとし、張濬、之に従わんと欲す。開曰く、「相君は誤てり。使し引を偽らば、宣撫使の印を其の上に加うれば、即ち真と為らん。其の徒を黥して、幣を治めしめば、是れ相君は一日にして三十万の銭を獲、而して五十人の死を起こすなり」と。濬、善しと称す。〔馮評〕但だ五十人の死を起こすのみならず、又た五十人の用を獲たり。真に大経済の手段なり。三十万の銭は、又た其の小なる者なり。
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『智囊』通簡・褚國祥武進の進士褚国祥、湖州の添設弐守と為り、寛平簡易にして、清守淄まず。北柵の姚姓なる者、妻は久病を以て亡くなり、其の父は婿が殴り死なせたりと告ぐ。公は其の詞を准し、発行せず。下午、駕を命じて北柵に至り、衆役は之く所を知らず。突として姚姓の家に入れば、妻は尚お未だ殮められず、験るに殴り死なせし状無し。告げし者を呼びて薄く責めて之を釈し、一銭も費やさずして訟已に了わる。〔馮述評〕趙豫は緩を以てし、褚国祥は捷を以てす。其の民を安んずるを心と為すこと一なり。
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『智囊』通簡・程顥広済の蔡河は県境を出で、河に瀕する不逞の民は、復た生業を治めず、専ら舟人の銭物を脅取するを以て事と為し、歳ごとに必ず舟十数を焚きて以て威を立つ。明道は始めて至り、一人を捕らえ得て、其の類を引かしめ、数十人を得たり。復た旧悪を根治せず、地を分けて之を処らしめ、挽舟を以て業と為し、且つ悪を為す者を察せしむ。是れより境に舟を焚くの患無し。〔馮述評〕脅舟する者に挽舟を業とせしめ、之をして絜矩の道を悟らしむ。此れ大程先生の真の道学たる所以なり。
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