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智囊 / 通簡・程顥

廣濟蔡河出縣境,瀕河不逞之民,不復治生業,專以脅取舟人錢物為事,歲必焚舟十數以立威。明道始至,捕得一人,使引其類,得數十人。不複根治舊惡,分地而處之,使以挽舟為業,且察為惡者。自是境無焚舟之患。〔馮述評〕脅舟者業挽舟,使之悟絜矩之道,此大程先生所以為真道學也。

新字:広済蔡河出県境,瀕河不逞之民,不復治生業,専以脅取舟人銭物為事,歳必焚舟十数以立威。明道始至,捕得一人,使引其類,得数十人。不複根治旧悪,分地而処之,使以挽舟為業,且察為悪者。自是境無焚舟之患。〔馮述評〕脅舟者業挽舟,使之悟絜矩之道,此大程先生所以為真道学也。

書き下し

広済の蔡河は県境を出で、河に瀕する不逞の民は、復た生業を治めず、専ら舟人の銭物を脅取するを以て事と為し、歳ごとに必ず舟十数を焚きて以て威を立つ。明道は始めて至り、一人を捕らえ得て、其の類を引かしめ、数十人を得たり。復た旧悪を根治せず、地を分けて之を処らしめ、挽舟を以て業と為し、且つ悪を為す者を察せしむ。是れより境に舟を焚くの患無し。〔馮述評〕脅舟する者に挽舟を業とせしめ、之をして絜矩の道を悟らしむ。此れ大程先生の真の道学たる所以なり。

現代語訳

広済の蔡河は県境を流れ、川沿いの無頼の民はもはや生業に就かず、もっぱら舟人から金品を脅し取ることを仕事とし、毎年必ず十数艘の舟を焼いて威を示していた。明道先生(程顥)が着任すると、まず一人を捕らえ、その仲間を引き出させ、数十人を得た。ところが過去の悪事を根こそぎ追及することはせず、土地を割り当てて住まわせ、舟を曳く仕事を生業とさせ、あわせて悪事を働く者を見張らせた。それ以来、境内で舟が焼かれる憂いはなくなった。〔馮夢龍の評〕舟を脅していた者に舟を曳く仕事をさせて、絜矩の道(他人の立場を思いやる道)を悟らせた。これが大程先生の真の道学たるゆえんである。

解説

程顥は川沿いの無頼の者を一網打尽にせず、一人から仲間を芋づる式に引き出し、旧悪を問わずに舟曳きという生業を与えました。脅す側にいた者を舟を守る側に回すことで、仕事の中身が逆転し、悪事を見張る役まで担わせています。罰ではなく役割替えで更生を促す発想は、現代のコンプライアンス違反者の処遇や、問題児の配置転換にも通じます。馮夢龍は、この処置が絜矩の道、つまり自分がされて嫌なことを人にしないという儒者の教えを実際に行わせたと評価しています。

この章句が説くこと

旧悪を根治せず挽舟を以て業と為し絜矩の道人材登用更生組織設計

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