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智囊 / 通簡・王守仁

寧藩既獲,聖駕忽復巡遊,群奸意叵測,陽明甚憂之。適二中貴到浙省,陽明張宴於鎮海樓。酒半,屏人去梯,出書簡二篋示之,皆此輩交通逆藩之跡也,盡數與之。二中貴感謝不已,陽明之終免於禍,多得二中貴從中維護之力。脫此時陽明挾以相制,則仇隙深而禍未已矣。

新字:寧藩既獲,聖駕忽復巡遊,群奸意叵測,陽明甚憂之。適二中貴到浙省,陽明張宴於鎮海楼。酒半,屏人去梯,出書簡二篋示之,皆此輩交通逆藩之跡也,尽数与之。二中貴感謝不已,陽明之終免於禍,多得二中貴従中維護之力。脱此時陽明挟以相制,則仇隙深而禍未已矣。

書き下し

寧藩既に獲らえられ、聖駕忽ち復た巡遊し、群奸の意は測り難し。陽明は甚だ之を憂う。適々二中貴浙省に到り、陽明は宴を鎮海楼に張る。酒半ばにして、人を屏け梯を去らしめ、書簡二篋を出だして之に示す。皆な此の輩が逆藩に交通せし跡なり。尽数、之に与う。二中貴は感謝已まず。陽明の終に禍を免れしは、多くは二中貴の中より維護するの力に得たり。脱し此の時、陽明が挾みて以て相い制せば、則ち仇隙は深くして禍は未だ已まざらん。

現代語訳

寧王の乱が平定されたのち、皇帝が突然また巡遊に出られ、取り巻きの悪者たちの意図は計りがたかった。王陽明はこれをたいへん憂えた。ちょうど二人の宦官が浙江省に来たので、陽明は鎮海楼で宴を開いた。酒が半ばになったところで、人払いをして梯子を外させ、書簡の入った二つの箱を取り出して彼らに見せた。いずれも、この連中が反逆した藩王と通じていた証拠であった。陽明はそのすべてを彼らに与えた。二人の宦官は感謝してやまなかった。陽明がついに災いを免れたのは、多くは二人の宦官が宮中から守ってくれた力によるものである。もしこのとき陽明が証拠をたてに彼らを抑えつけていたら、恨みと隙間は深まり、災いはやまなかったであろう。

解説

反乱の平定後、宮廷の取り巻きが功をねたんで陥れようとする情勢のなかで、王陽明は宦官たちに、彼ら自身の弱みを示す書簡を全部渡してしまいました。握っている材料を交渉の切り札にせず、無償で手放して恩を売る形にしたため、彼らは後ろ盾として守ってくれます。人払いをした場で渡す配慮も、相手の面目を守るうえで要点です。現代でも、相手の弱みを握ったとき、それで縛ろうとせず、返すことで信頼関係に変えるほうが、長期の安全につながります。

この章句が説くこと

人を屏け梯を去らしめ書簡二篋を出だして之に示す挟みて以て相い制せば保身信用駆け引き

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