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智囊 / 通簡・朱博

博為左馮翊。有長陵大姓尚方禁,少時嘗盜人妻,見斲,創著其頰。府功曹受賄,白除禁,調守尉。博聞知,以他事召見,視其面,果有瘢。博辟左右問禁:「是何等創也?」禁自知情得,叩頭伏狀。博笑曰:「大丈夫固時有是。馮翊欲灑卿恥,能自效不?」禁且喜且懼,對曰:「必死。」博因敕禁:「毋得泄語,有便宜,輒記言。」因親信之,以為耳目。禁晨夜發起部中盜賊及他伏奸,有功效。博擢禁連守縣令,久之,召見功曹,閉絜數責以禁等事,與筆札,使自記,「積受取一錢以上,無得隱匿,欺謾半言,斷頭矣!」功曹惶怖,且自疏奸贓,大小不敢隱。博知其實,乃令就席,受敕,自改而已。拔刀使削所記,遣出就職。功曹後常戰慄,不敢蹉跌。博遂成就之。

新字:博為左馮翊。有長陵大姓尚方禁,少時嘗盗人妻,見斲,創著其頬。府功曹受賄,白除禁,調守尉。博聞知,以他事召見,視其面,果有瘢。博辟左右問禁:「是何等創也?」禁自知情得,叩頭伏状。博笑曰:「大丈夫固時有是。馮翊欲灑卿恥,能自効不?」禁且喜且懼,対曰:「必死。」博因勅禁:「毋得泄語,有便宜,輒記言。」因親信之,以為耳目。禁晨夜発起部中盗賊及他伏奸,有功効。博擢禁連守県令,久之,召見功曹,閉絜数責以禁等事,与筆札,使自記,「積受取一銭以上,無得隠匿,欺謾半言,断頭矣!」功曹惶怖,且自疏奸贓,大小不敢隠。博知其実,乃令就席,受勅,自改而已。抜刀使削所記,遣出就職。功曹後常戦慄,不敢蹉跌。博遂成就之。

書き下し

博は左馮翊と為る。長陵の大姓、尚方禁なる者有り。少き時、嘗て人の妻を盗み、斲られ、創は其の頬に著く。府の功曹は賄を受け、禁を除くを白し、守尉に調す。博は聞き知りて、他事を以て召見し、其の面を視るに、果たして瘢有り。博は左右を辟けて禁に問う、「是れ何等の創か」と。禁は自ら情を得られたるを知り、叩頭して状に伏す。博は笑いて曰く、「大丈夫は固より時に是れ有り。馮翊は卿の恥を灑がんと欲す。能く自ら効さんか」と。禁は且つ喜び且つ懼れ、対えて曰く、「必ず死せん」と。博は因りて禁に敕す、「泄語する毋れ。便宜有らば、輒ち記して言え」と。因りて之を親信し、以て耳目と為す。禁は晨夜に部中の盗賊、及び他の伏奸を発起し、功効有り。博は禁を擢んでて守県令を連ね、久しくして、功曹を召見し、閉絜して数々禁らの事を責め、筆札を与え、自ら記さしめて、「積み受け取ること一銭以上、隠匿する無かれ、半言も欺謾せば、頭を断たん」と。功曹は惶怖し、且つ自ら奸贓を疏し、大小あえて隠さず。博は其の実を知り、乃ち席に就かしめ、敕を受け、自ら改めしむるのみ。刀を抜き、記す所を削らしめ、遣わして職に就かしむ。功曹は後常に戦慄し、敢えて蹉跌せず。博は遂に之を成就せり。

現代語訳

朱博は左馮翊であった。長陵の名家に尚方禁という者がいた。若い頃に人の妻を盗んで斬りつけられ、傷が頬に残っていた。府の功曹は賄賂を受けて、禁を採用するよう申し立て、守尉に任用させていた。博はこれを聞き知り、別の用事を口実に禁を呼び出し、その顔を見ると、やはり傷痕があった。博は左右を遠ざけて禁に尋ねた。「それはどんな傷か」。禁は事情を知られたと悟り、額を地につけて事実を認めた。博は笑って言った。「立派な男にはもとより時にはそういうこともある。私は、君の恥をそそいでやりたい。自分で手柄を立てられるか」。禁は喜び、また恐れて、「必ず命がけでやります」と答えた。博は禁に命じた。「口外してはならない。好機があれば、そのたびに記して私に伝えよ」。そこで禁を信任し、耳目として使った。禁は朝晩、管内の盗賊やその他の隠れた悪事を探り出し、功績を上げた。博は禁を抜擢して県令代行を続けて務めさせた。しばらくして、功曹を呼び出し、扉を閉ざして禁らの件を繰り返し責め、筆と木札を与えて、自分で書かせた。「受け取った賄賂は一銭以上でも隠すな。半言でも偽れば首を斬る」。功曹は恐れおののき、自分の不正と収賄を書き上げ、大小ともに隠さなかった。博はその実情を確かめると、席に着かせ、戒めを受けさせて、自ら改めさせただけだった。刀を抜いて、書いたものを削り取らせ、職に戻した。功曹はその後いつも身を震わせ、あえて過ちを犯さなかった。博はこうして彼を成就させたのである。

解説

朱博は、賄賂で採用された部下の過去の傷を見つけても、恥として暴かず、挽回の機会を与えて耳目として使いました。弱みを握ったうえで笑って受け止め、秘密を守る約束と引き換えに働かせることで、禁は命がけの働きをします。一方、賄賂を受けた功曹には、自分で罪を書かせ、削り取って許すという儀式を通じて、緊張感を持続させました。罰の与え方と許し方に緩急をつけて人を成長させる、部下掌握の見本です。現代の管理職も、ミスを隠さず報告させる代わりに過去を問わない場を作れるかが問われます。

この章句が説くこと

馮翊は卿の恥を灑がんと欲す自ら記さしめ刀を抜き記す所を削らしめ部下掌握信用人材登用

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