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智囊 / 通簡・薛奎

〔馮述評〕梅少司馬國楨制閫三鎮。虜酋或言於沙中得傳國璽,以黃絹印其文,頂之於首,詣轅門獻之,乞公題請。公曰:「璽未知真假,俟取來,吾閱之,當犒汝。」酋謂:「累世受命之符,今為聖朝而出,此非常之瑞,若奏聞上獻,宜有封賞,所望非犒也。」公笑曰:「寶源局自有國寶,此璽即真,無所用之,吾亦不敢輕瀆上聽。念汝美意,命以一金為犒,並黃絹還之。」酋大失望,號哭而去。或問公:「何以不為奏請?」公曰:「王孫滿有言:『在德不在鼎。』況虜酋視為奇貨,若輕於上聞,酋益挾以為重。萬一聖旨徵璽,而璽不時至,將真以封賞購之乎?」人服其卓識。此薛簡肅藏印之意。天順初,虜酋孛來近邊求食,傳聞寶璽在其處。石亨欲領兵巡邊,乘機取之。上以問李賢,賢曰:「虜雖近邊,不曾侵犯,今無故加兵,必不可。且寶璽秦皇所造,李斯所篆,亡國之物,不足為貴。」上是之。梅公之見,與此正合。

新字:〔馮述評〕梅少司馬国楨制閫三鎮。虜酋或言於沙中得伝国璽,以黄絹印其文,頂之於首,詣轅門献之,乞公題請。公曰:「璽未知真仮,俟取来,吾閲之,当犒汝。」酋謂:「累世受命之符,今為聖朝而出,此非常之瑞,若奏聞上献,宜有封賞,所望非犒也。」公笑曰:「宝源局自有国宝,此璽即真,無所用之,吾亦不敢軽瀆上聴。念汝美意,命以一金為犒,並黄絹還之。」酋大失望,号哭而去。或問公:「何以不為奏請?」公曰:「王孫満有言:『在徳不在鼎。』況虜酋視為奇貨,若軽於上聞,酋益挟以為重。万一聖旨徴璽,而璽不時至,将真以封賞購之乎?」人服其卓識。此薛簡粛蔵印之意。天順初,虜酋孛来近辺求食,伝聞宝璽在其処。石亨欲領兵巡辺,乗機取之。上以問李賢,賢曰:「虜雖近辺,不曽侵犯,今無故加兵,必不可。且宝璽秦皇所造,李斯所篆,亡国之物,不足為貴。」上是之。梅公之見,与此正合。

書き下し

〔馮述評〕梅少司馬国楨、三鎮を制閫す。虜酋に言う者有り、沙中に伝国璽を得たりと。黄絹を以て其の文に印し、之を首に頂きて轅門に詣りて献じ、公に題請を乞う。公曰く、「璽は未だ真偽を知らず、取り来るを俟ちて、吾閲して、当に汝を犒うべし」と。酋は謂う、「累世受命の符、今聖朝の為に出づ、此れ非常の瑞なり。若し奏聞して上献せば、宜しく封賞有るべし。望む所は犒に非ず」と。公は笑いて曰く、「宝源局には自ら国宝有り、此の璽は即ち真なるも、用うる所無し。吾も亦た敢えて軽々しく上聴を瀆さず。汝の美意を念い、命じて一金を以て犒となし、黄絹を並せて之を還す」と。酋は大いに失望し、号哭して去る。或るひと公に問う、「何を以て為に奏請せざるか」と。公曰く、「王孫満に言有り、『徳に在り鼎に在らず』と。況んや虜酋は視て奇貨と為す、若し軽々しく上聞せば、酋は益ます挟みて以て重しと為さん。万一聖旨が璽を徴せんとして、璽が時に至らざれば、将に真に封賞を以て之を購わんとするか」と。人は其の卓識に服す。此れ薛簡粛の印を蔵する意なり。天順の初め、虜酋の孛来が辺に近づき食を求む。伝聞に宝璽は其の処に在りと。石亨は兵を領して辺を巡り、機に乗じて之を取らんと欲す。上は以て李賢に問う。賢曰く、「虜は辺に近づくと雖も、曽て侵犯せず。今、故無くして兵を加えるは必ず不可なり。且つ宝璽は秦皇の造る所、李斯の篆する所、亡国の物にして、貴しと為すに足らず」と。上は之を是とす。梅公の見は、此と正に合う。

現代語訳

〔馮夢龍の評〕梅少司馬(梅国楨)は三つの鎮の軍事を統括していた。異民族の首長の中に、砂漠の中で伝国璽を手に入れたと言う者がいた。黄色い絹にその文字を写し、頭に載せて轅門に献上に来て、公に上奏してほしいと求めた。公は言った。「璽の真偽はまだ分からない。持って来るのを待って、私が調べ、そのうえで汝に褒美を与えよう」。首長は言った。「代々天命を受けた証が、今、聖朝のために出現しました。これは非常な瑞祥です。上奏して献上すれば、封賞があるはずです。望むのは単なる褒美ではありません」。公は笑って言った。「宝源局にはすでに国宝がある。この璽がたとえ本物でも、用いるところはない。私も軽々しく天子のお耳を汚すことはしない。汝の厚意を思い、金一枚を褒美とし、黄絹も返そう」。首長は大いに失望し、泣き叫んで去った。ある人が公に尋ねた。「なぜ上奏してやらなかったのですか」。公は言った。「王孫満は『徳にあって、鼎にあるのではない』と言った。まして異民族の首長は璽を値打ちのある品と見ている。軽々しく上聞すれば、首長はますますこれを盾に重んじさせようとするだろう。万一、聖旨が璽を徴発して、璽が間に合わなければ、本当に封賞で買い取るつもりか」。人々はその卓識に感服した。これは薛簡粛が印を収めさせた意と同じである。天順の初め、異民族の首長の孛来が辺境に近づき食糧を求めた。宝璽がそこにあると伝わった。石亨は兵を率いて辺境を巡り、機に乗じてこれを取ろうとした。皇帝は李賢に尋ねた。賢は言った。「異民族は辺境に近づいても、これまで侵犯していません。いま理由もなく兵を加えるのは絶対にいけません。しかも宝璽は秦の始皇帝が造り、李斯が篆書で刻んだもので、亡国の品で、貴ぶに足りません」。皇帝はこれを是とした。梅公の見解は、これとまさに合う。

解説

梅国楨は、伝国璽という強い象徴を持ち込まれても、真偽の不確かさや相手の思惑を見抜き、慎重に対処しました。軽々しく上奏すれば、相手に期待を持たせ、後で応えられない責任を負うからです。象徴的な品は、価値を煽る人の手に渡ると交渉材料にされます。現代の仕事でも、希少な話や特別な案件を持ち込まれたとき、すぐに乗らず、真偽と相手の目的を検証することが重要です。派手な話ほど、確かな裏付けと自分の責任範囲を確認してから動くことで、後の損害を防げます。

この章句が説くこと

伝国璽在徳不在鼎奇貨軽々しく上聞せず真偽の検証期待の管理

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