智囊 / 遠猶・裴寬・李祐
裴寬嘗為潤州參軍。時刺史韋詵為女擇婿,未得。會休日登樓,見有所瘞於後圃者。訪其人,曰:「此裴參軍也。義不以苞苴污家。適有人餉鹿脯,致而去,不敢自欺,故瘞之耳。」詵嗟異,遂妻以女。婚日,詵幃其女,使觀之:寬瘠而長,時衣碧,族人皆笑呼為「碧鸛」。詵曰:「愛其女,必以為賢公侯妻。可貌求人乎?」寬後歷禮部尚書,有聲。李祐爵位既高,公卿多請婚其女。祐皆拒之,一日大會幕僚,言將納婿。眾謂必貴戚名族。及登宴,寂然。酒半,祐引末座一將,謂曰:「知君未婚,敢以小女為托。」即席成禮。他日或請其故,祐曰:「每見衣冠之家,締婚大族。其子弟習於淫奢,多不令終,我以韜鈐致位,自求其偶。何必仰高以博虛望?」聞者以為卓識。〔馮評譯文〕溫公云:「娶婦必不及吾家者,嫁女必勝吾家者。娶婦不及吾家,則知儉素;嫁女勝吾家,則知畏謹。」時謂名言。觀韋、李二公擇婿,溫公義猶未盡。
新字:裴寛嘗為潤州参軍。時刺史韋詵為女択婿,未得。会休日登楼,見有所瘞於後圃者。訪其人,曰:「此裴参軍也。義不以苞苴汚家。適有人餉鹿脯,致而去,不敢自欺,故瘞之耳。」詵嗟異,遂妻以女。婚日,詵幃其女,使観之:寛瘠而長,時衣碧,族人皆笑呼為「碧鸛」。詵曰:「愛其女,必以為賢公侯妻。可貌求人乎?」寛後歴礼部尚書,有声。李祐爵位既高,公卿多請婚其女。祐皆拒之,一日大会幕僚,言将納婿。衆謂必貴戚名族。及登宴,寂然。酒半,祐引末座一将,謂曰:「知君未婚,敢以小女為托。」即席成礼。他日或請其故,祐曰:「毎見衣冠之家,締婚大族。其子弟習於淫奢,多不令終,我以韜鈐致位,自求其偶。何必仰高以博虚望?」聞者以為卓識。〔馮評訳文〕温公云:「娶婦必不及吾家者,嫁女必勝吾家者。娶婦不及吾家,則知倹素;嫁女勝吾家,則知畏謹。」時謂名言。観韋、李二公択婿,温公義猶未尽。
書き下し
裴寛、嘗て潤州の参軍と為る。時に刺史韋詵、女の為に婿を択ぶも、未だ得ず。休日に会して楼に登り、後圃に瘞むる所の者有るを見る。其の人を訪うに、曰く、「此は裴参軍なり。義として苞苴を以て家を汚さず。適たま人の鹿脯を餉る有り、致して去る、敢えて自ら欺かず、故に之を瘞むるのみ」と。詵嗟異し、遂に妻するに女を以てす。婚日、詵、其の女を幃して之を観しむ。寛は瘠せて長く、時に碧を衣る、族人皆笑いて呼んで碧鸛と為す。詵曰く、「其の女を愛すれば、必ず賢き公侯の妻たるを以て為す。貌を以て人を求むべけんや」と。寛は後に礼部尚書を歴し、声有り。李祐は爵位既に高く、公卿多く其の女に婚を請う。祐は皆之を拒み、一日、大いに幕僚を会して、言う、将に婿を納れんと。衆は必ず貴戚名族ならんと謂う。宴に登るに及び、寂然たり。酒半ばにして、祐は末座の一将を引き、謂いて曰く、「君の未だ婚せざるを知る、敢えて小女を以て托せん」と。即席に礼を成す。他日、或るひと其の故を請う。祐曰く、「每に衣冠の家を見るに、婚を大族に締ぶ。其の子弟は淫奢に習い、多く終わりを令くせず。我は韜鈐を以て位に致る、自ら其の偶を求む。何ぞ必ずしも高きを仰ぎて以て虚望を博せんや」と。聞く者以て卓識と為す。〔馮評訳文〕温公云う、「婦を娶るには必ず吾が家に及ばざる者、女を嫁すには必ず吾が家に勝る者。婦を娶りて吾が家に及ばざれば、則ち倹素を知る。女を嫁して吾が家に勝れば、則ち畏謹を知る」と。時に名言と謂う。韋、李二公の婿を択ぶを観れば、温公の義は猶お尽くさず。
現代語訳
裴寛はかつて潤州の参軍(属官)であった。そのころ刺史の韋詵は娘の婿を選んでいたが、まだ見つからなかった。休みの日に楼に登ると、裏庭に何かを埋めている者がいた。誰かと尋ねると、「裴参軍です。賄賂で家を汚してはならないという信念の持ち主です。たまたま人が鹿の干し肉を贈って置いて行ったので、自分を欺けず、埋めているのです」と言う。詵は感嘆し、娘を嫁がせた。婚礼の日、詵は娘にとばりの陰から婿を見させた。寛は痩せて背が高く、その日は碧の衣を着ており、一族の者は皆笑って『碧鸛(あおさぎ)』と呼んだ。詵は言った。「娘を愛するなら、必ず賢い公侯の妻にしたいと思うもの。容貌で人を選んでよいものか」。寛はのちに礼部尚書を歴任し、名声を得た。李祐は爵位がすでに高く、公卿の多くが娘との縁組を願い出た。祐はすべて断り、ある日、幕僚を大勢集めて、婿を迎えると言った。人々は皆、貴戚や名門の人物だと思った。宴が始まっても静かなままだった。酒が半ばのころ、祐は末席の一人の将軍を呼び寄せ、「そなたがまだ独身と聞く。小娘を託したい」と言い、その場で婚礼の礼を済ませた。後日、ある人がそのわけを尋ねた。祐は言った。「いつも名家が大族と縁を結ぶのを見るが、その子弟は贅沢に慣れて、多くは良い終わりを迎えない。私は兵法によって地位に至った。自分で婿を探した。どうして高い家柄を仰いで虚名を得る必要があろう」。聞いた者は卓越した見識と評した。〔馮夢龍の評〕司馬光は言った。「妻を娶るなら自分の家より劣る家から、娘を嫁がせるなら自分の家より勝る家へ。妻を娶るのが劣る家なら倹約を知り、嫁ぎ先が勝る家なら慎み深さを知る」。当時は名言とされた。韋・李二公の婿選びを見ると、司馬光の言葉でもまだ尽くせていない。
解説
この章句が説くこと
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論語・子張篇子曰わく、小人の過もまた必ず文(かざ)る。
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論語・顔淵篇子張、政を問う。子曰く、「之に居りて倦むこと無く、之を行うに忠を以てす。」
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論語・子路篇子曰わく、剛毅木訥は仁に近し。
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