孟子 / 告子章句上
孟子曰、有天爵者、有人爵者。仁義忠信、樂善不倦、此天爵也。公卿大夫、此人爵也。古之人修其天爵、而人爵從之。今之人修其天爵、以要人爵。既得人爵、而棄其天爵、則惑之甚者也。終亦必亡而已矣。
新字:孟子曰、有天爵者、有人爵者。仁義忠信、楽善不倦、此天爵也。公卿大夫、此人爵也。古之人修其天爵、而人爵従之。今之人修其天爵、以要人爵。既得人爵、而棄其天爵、則惑之甚者也。終亦必亡而已矣。
書き下し
孟子曰く、「天爵なる者有り、人爵なる者有り。仁義忠信、善を樂しみて倦まざるは、此れ天爵なり。公卿大夫、此れ人爵なり。古の人は其の天爵を修めて、人爵之に從う。今の人は其の天爵を修めて、以て人爵を要む。既に人爵を得て、其の天爵を棄つるは、則ち惑の甚しき者なり。終に亦た必ず亡せんのみ。」
現代語訳
孟子は言う。 「天爵というものがあり、人爵というものがある。仁・義・忠・信の四徳を具え、善を楽しんで倦むことを知らない。これが天から与えられた天爵である。公・卿・大夫という世俗の身分。これが人から与えられた人爵である。古の人はその天爵を修めることに務め、その結果人爵が勝手についてきた。今の人はその天爵を修めることに務めるのは、それにより人爵を手に入れようとするためで、その人爵を手に入れてしまえば、その天爵を棄ててしまう。これは心の惑いの甚だしいものである。そんなことではせっかく手に入れた人爵もやがて失ってしまうに違いない。」
解説
現代のビジネスにおいても、誠実な仕事ぶりや顧客への思いやりといった「人としての立派なあり方」を磨くことが、結果として昇進や収入アップといった「社会的な成功」につながります。しかし、最初から出世や利益だけを目的として表面的な善行を装い、地位を手に入れた途端に努力をやめてしまえば、周囲の信頼は失われ、結局は社会的地位も手放すことになります。目先の利益や肩書きにとらわれず、人としての本質的な価値を高める努力を一生の仕事として継続していくことが大切です。
この章句が説くこと
誠実さ社会的成功本質的価値継続
関連する章句
-
論語・衛霊公篇子曰わく、巧言は徳を乱し、小を忍ばざれば則ち大謀を乱す。
-
論語・里仁篇子曰わく、参よ、わが道は一以てこれを貫く。曾子曰く、唯。子出づ。門人問いて曰く、何の謂いぞや。曾子曰く、夫子の道は忠恕のみ。
-
論語・雍也篇子曰わく、人の生まるるや直なり。これを罔(あざむ)ちて生くるは幸いにして免るるのみ。
-
論語・公冶長篇子、漆彫開をして仕えしむ。対えて曰く、『吾、斯れを未だ能く信ぜず。』子、説(よろこ)ぶ。
-
論語・公冶長篇或るひと曰く、『雍は仁にして佞(べん)ならず。』子曰く、『佞を何に用いん。人に禦(ふせ)ぐに口給を以てすれば、屢々人に憎まる。不仁を知らずして、焉んぞ佞を用いん。』
-
論語・顔淵篇子張、政を問う。子曰く、「之に居りて倦むこと無く、之を行うに忠を以てす。」