導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

智囊 / 見大・楚莊王・袁盎

胡酋蘇慕恩部落最強,種世衡嘗夜與飲,出侍姬佐酒。既而世衡起入內,慕恩竊與姬戲。世衡遽出掩之,慕恩慚愧請罪。世衡笑曰:「君欲之耶?」即以遺之。由是諸部有貳者,使慕恩討之,無不克。張說有門下生盜其寵婢,欲置之法。此生呼曰:「相公豈無緩急用人時耶?何惜一婢!」說奇其言,遂以賜而遣之。後杳不聞。及遭姚崇之構,禍且不測。此生夜至,請以夜明簾獻九公主,為言於玄宗,得解。金兀術愛一小卒之妻,殺卒而奪之,寵以專房。一日晝寢,覺,忽見此婦持利刃欲向。驚起問之,曰:「欲為夫報仇耳。」術默然,麾使去。即日大享將士,召此婦出,謂曰:「殺汝則無罪,留汝則不可。任汝於諸將中自擇所從。」婦指一人,術即賜之。

新字:胡酋蘇慕恩部落最強,種世衡嘗夜与飲,出侍姫佐酒。既而世衡起入内,慕恩窃与姫戯。世衡遽出掩之,慕恩慚愧請罪。世衡笑曰:「君欲之耶?」即以遺之。由是諸部有貳者,使慕恩討之,無不克。張説有門下生盗其寵婢,欲置之法。此生呼曰:「相公豈無緩急用人時耶?何惜一婢!」説奇其言,遂以賜而遣之。後杳不聞。及遭姚崇之構,禍且不測。此生夜至,請以夜明簾献九公主,為言於玄宗,得解。金兀術愛一小卒之妻,殺卒而奪之,寵以専房。一日昼寝,覚,忽見此婦持利刃欲向。驚起問之,曰:「欲為夫報仇耳。」術黙然,麾使去。即日大享将士,召此婦出,謂曰:「殺汝則無罪,留汝則不可。任汝於諸将中自択所従。」婦指一人,術即賜之。

書き下し

胡酋の蘇慕恩は部落最も強し。種世衡は嘗て夜に与に飲み、侍姫を出して酒を佐けしむ。既にして世衡は起ちて内に入り、慕恩は竊かに姫と戯る。世衡は遽に出でて之を掩い、慕恩は慚愧して罪を請う。世衡は笑いて曰く、君は之を欲するか、と。即ち以て之に遺る。是に由りて諸部に二心有る者あれば、慕恩をして之を討たしむるに、克たざる無し。張説に門下生の其の寵婢を盗む者有り、之を法に置かんと欲す。此の生は呼びて曰く、相公は豈に緩急に人を用うる時無からんや。何ぞ一婢を惜しまん、と。説は其の言を奇とし、遂に以て賜いて遣る。後、杳として聞こえず。姚崇の構うるに遭い、禍は且に測られざらんとするに及び、此の生は夜に至り、夜明簾を以て九公主に献ぜんことを請い、為に玄宗に言いて、解くを得たり。金兀術は一小卒の妻を愛し、卒を殺して之を奪い、寵して専房せしむ。一日、昼寝より覚め、忽ち此の婦の利刃を持ちて向かわんとするを見る。驚き起ちて之を問う。曰く、夫の為に仇を報いんと欲するのみ、と。術は黙然として、麾きて去らしむ。即日、大いに将士に享し、此の婦を召し出して謂いて曰く、汝を殺さば則ち罪無し。汝を留めば則ち不可なり。汝に諸将の中より自ら従う所を択ぶに任ず、と。婦は一人を指し、術は即ち之を賜う。

現代語訳

異民族の酋長の蘇慕恩は、部族の中で最も強かった。種世衡はある夜、彼と酒を飲み、侍女を出して酒の相手をさせた。やがて世衡が席を立って奥に入ると、慕恩はこっそり侍女と戯れた。世衡は急いで出てその現場を押さえ、慕恩は恥じ入って罪を詫びた。世衡は笑って言った。君はこの女が欲しいのか、と。そしてそのまま贈った。これによって、諸部族に二心を持つ者がいれば、慕恩に討たせると必ず勝った。張説に、寵愛する婢を盗んだ門下生がいて、法で裁こうとした。この門下生は叫んだ。相公には急場に人を使うときがないとお思いですか。どうして一人の婢を惜しまれるのですか、と。張説はその言葉に感じ入り、そのまま婢を与えて去らせた。その後、まったく消息がなかった。姚崇の謀略に遭い、禍が測れなくなったとき、この門下生が夜に現れ、夜明簾を九公主に献上することを願い、張説のために玄宗に取りなして、難を解くことができた。金の兀術は一人の小卒の妻を愛し、その卒を殺して彼女を奪い、寵愛して独占した。ある日、昼寝から覚めると、突然この婦が鋭い刃を持って向かってこようとしていた。驚き起きて問うと、夫の仇を討ちたいだけです、と言った。兀術は黙り込み、手を振って去らせた。その日のうちに将兵に大宴会を開き、この婦を呼び出して言った。お前を殺せば罪はない。お前を留めておくのはよくない。諸将の中からお前が従う者を自分で選ぶがよい、と。婦は一人を指し、兀術はすぐにその者に与えた。

解説

前話の続きで、同じ型の寛容の事例を重ねています。蘇慕恩は女性をめぐる不始末を許されたことで、以後は種世衡の手足となって働きました。張説の門下生は、咎められるところを機転の言葉で救われ、後に張説の窮地を救います。最後の兀術の話は、仇討ちを試みた婦人を殺さず、本人に行き先を選ばせたという例で、感情を抑えた決断が評価されています。三例を通じて、立場が上の者が個人的な感情を抑えて寛容を示すと、相手の忠誠や協力を引き出せることが分かります。ただし、女性を物のように与える描写は今の価値観に合わず、教訓は寛容と判断力の部分だけを読み取るべきです。

この章句が説くこと

相公豈無緩急用人時慕恩慚愧請罪麾使去寛容危機管理信頼獲得

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る