智囊 / 序・智囊自敘
或又曰:僕聞「取法乎上,僅得乎中。」子之品智,神奸巨猾,或登上乘,雞鳴狗盜,亦備奇聞,囊且穢矣,何以訓世?馮子曰:吾品智非品人也。不唯其人唯其事,不唯其事唯其智,雖奸猾盜賊,誰非吾藥籠中硝、戟?吾一以為蛛網而推之可漁,一以為蠶繭而推之可室。譬之谷王,眾水同歸,豈其擇流而受!或無以難,遂書其語於篇首。馮子名夢龍,字猶龍,東吳之畸人也。
新字:或又曰:僕聞「取法乎上,僅得乎中。」子之品智,神奸巨猾,或登上乗,鶏鳴狗盗,亦備奇聞,嚢且穢矣,何以訓世?馮子曰:吾品智非品人也。不唯其人唯其事,不唯其事唯其智,雖奸猾盗賊,誰非吾薬籠中硝、戟?吾一以為蛛網而推之可漁,一以為蠶繭而推之可室。譬之谷王,衆水同帰,豈其択流而受!或無以難,遂書其語於篇首。馮子名夢竜,字猶竜,東呉之畸人也。
書き下し
或ひと又た曰く、僕聞く、法を上に取れば、僅かに中を得る、と。子の智を品するや、神奸巨猾も或いは上乗に登り、雞鳴狗盗も亦た奇聞に備う。囊は且に穢れたり。何を以て世に訓えんや。馮子曰く、吾れは智を品するにして人を品するに非ざるなり。唯だに其の人のみならず、唯だ其の事のみ。唯だに其の事のみならず、唯だ其の智のみ。奸猾盗賊と雖も、誰か吾が薬籠中の硝・戟に非ざらん。吾れは一に以て蛛網と為し、推して之を漁すべし。一に以て蚕繭と為し、推して之を室とすべし。譬えば谷王のごとし。衆水同じく帰す。豈に其の流を択びて受けんや。或ひと以て難ずる無く、遂に其の語を篇首に書す。馮子は名は夢龍、字は猶龍、東呉の畸人なり。
現代語訳
またある人が言う。私は聞いたことがある。手本を最上のものに取ってもせいぜい中ほどしか得られない、と。あなたの智の品定めでは、悪賢い大悪人が最上の位に上ることもあり、鶏の鳴きまねや犬の盗みのような話まで珍しい話として収めている。囊は汚れてしまった。これでどうして世を教えられようか。馮子は言った。私は智を品定めしているのであって、人を品定めしているのではない。その人柄ではなく、その事柄を見る。その事柄でもなく、そこに働いた智を見る。悪賢い者や盗賊であっても、どれも私の薬箱の中の薬石や武器にならないものはない。私はある場合には蜘蛛の巣として、それを広げれば魚が捕れるとし、ある場合には蚕の繭として、それを推し広げれば住まいにもなると考える。たとえるなら谷の王のようなもので、あらゆる水が一つに集まる。どうして流れを選んで受け入れたりしようか。その人は返す言葉がなく、そこでこの言葉を篇の冒頭に書き記した。馮子は名を夢龍、字を猶龍といい、東呉の変わり者である。
解説
この章句が説くこと
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