武士訓 / 卷五・第13段
世に劔術をおしゆるもの。少きしなびをこしらえ。敵とあいだをへだてゝ。間合をうつといひ。せゝりをなすといふことあり。眞劔にてさやうにこまかなることとなるものにあらず。たとひ仕合よくて一二寸きりたればとて。ものゝかずとせんや。いはんや甲冑を着。着込をかさねたるものは。すこしもきずつくべからず。こゝろあらん人は。かゝるつたなき術をならふべからず。
新字:世に剣術をおしゆるもの。少きしなびをこしらえ。敵とあいだをへだてゝ。間合をうつといひ。せゝりをなすといふことあり。真剣にてさやうにこまかなることとなるものにあらず。たとひ仕合よくて一二寸きりたればとて。ものゝかずとせんや。いはんや甲冑を着。着込をかさねたるものは。すこしもきずつくべからず。こゝろあらん人は。かゝるつたなき術をならふべからず。
書き下し
世に劔術をおしゆるもの。少きしなびをこしらえ。敵とあいだをへだてゝ。間合をうつといひ。せゝりをなすといふことあり。眞劔にてさやうにこまかなることとなるものにあらず。たとひ仕合よくて一二寸きりたればとて。ものゝかずとせんや。いはんや甲冑を着。着込をかさねたるものは。すこしもきずつくべからず。こゝろあらん人は。かゝるつたなき術をならふべからず。
現代語訳
世に剣術を教える者が、小さな竹刀(底本は「しなび」)をこしらえ、敵と間を隔てて、間合いを打つとか、せせりをするとかいうことがある。真剣でそのような細かなことはなるものではない。たとえ試合でうまく一、二寸斬ったからといって、数のうちに入れようか。まして甲冑を着、着込みを重ねた者は、少しも傷つくはずがない。心ある人は、こうした拙い術を習ってはならない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『武士訓』卷三・第13段鎧は札よきを用ひて。威毛をゑらぶべからず。劍はきれを專として。作こしらへを好むべからず。(刀はかされ厚きを用べし。かされ薄きは。うちあはせたるとき。折ることまゝあり。そりたるを用べし。すぐなるはよろしからず。鋒かろくつりあひよきやうにすべし。鋒おもきはよろしからず。皮づかを用べからず。皮柄は血かゝればすべりてにぎりがたきものなり。柄に打鮫をもちゆべからず。打鮫は切あふとき。柄くだくるものなり。鍔はすかしなきを用べし。すかしあるは切わることまゝあり。無地のあつきをよしとす。さめざやをさすべからず。さめざやは雨中にはゑめりてぬけかぬるものなり。ましてや水かゝりぬれば猶さらなり。わきざしにはかへり角をもちゆるども。刀にはもちゆることなかれ。刀にかへり角を用るは劍法をゑらざる人なり。)
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『武訓』上・第15段甲冑の着やう、旗指物の制法、馬上にて、刀をぬき、鎗をつかひ、敵とくみ合の法、或は、不意に敵に出合ひたる時、敵にきられず、敵にかつの法、凡、匹夫の勇のはたらき、刀劍、及、馬藝につきてのわざ、又は、戰塲にあらずして、時の變に應ずる術も、士たる人、習ひしるべし。かやうの術を敎ふる師あり。書あり。ならふべし。
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『武士訓』卷五・第1段武術おの〱異なれども。勝負の理はいづれもひとし。しばらく管見をしるして。後人にしめすのみ。文學をなすには無我なれ。無我ならずしては。道を得ることなし。武術をまなぶには。有我なるがごとくすべし。初學より無我にしては。勇をやしなふことあたはざるなり。勇氣を人にゆづらざれ。姑息の愛をおもふことなかれ。
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『武士訓』卷二・第5段士たらんものは。節義をもつぱらたしなみ。一言一行も。武士の道にをいて。不吟味なることなきやうにと心がくべし。口にいつはりをいはず。身にわたくしをかまへず。內すなほに。外かざりなく。禮義たゞしく。作法見だれず。たつときにへつらはず。いやしきをあなどらず。富るにほこらず。まづしきを見すてず。人をそしらず。我をたてず。かげ言中謀いふべからず。
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『文武訓』武訓上一甲冑の著やう、旗指物の制法、馬上にて刀を抜き鎗をつかひ、敵と組み合の法、或は不意に敵に出合ひたる時、敵に斬られず敵に勝つの法、凡匹夫の勇のはたらき、刀剣、及び馬芸につきてのわざ、又は戦場にあらずして、時の変に応ずる術も、士たる人習ひ知るべし。かやうの術を教ふる師あり、書あり、ならふべし。
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『武訓』上・第14段兵術は、將と士と、貴賤の位によりて、大小の用ことなり。其の位に切なることを、先、まなぶべし。主將たる人はいふに及はず、士卒の長となる者も、兵術をしらざれば、節制に應じがたし。大夫以上の人は、兵術をしるべし。兵術は、武藝の本なり。兵術をしらずして、弓馬劍戟の藝をのみ學ぶを、武學と心得るは、本をすてゝ、末をとるなり。主將たる人、兵術をしらずして、只、武藝のみを學ぶは、武學にはあらず。藝術のみを好みて、本をしらざるは、物をもてあそべば、志を喪ふの類なり。武藝は、一人に敵する術なり。兵法は、萬人に敵する術なり。
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