武訓 / 上・第15段
甲冑の着やう、旗指物の制法、馬上にて、刀をぬき、鎗をつかひ、敵とくみ合の法、或は、不意に敵に出合ひたる時、敵にきられず、敵にかつの法、凡、匹夫の勇のはたらき、刀劍、及、馬藝につきてのわざ、又は、戰塲にあらずして、時の變に應ずる術も、士たる人、習ひしるべし。かやうの術を敎ふる師あり。書あり。ならふべし。
新字:甲冑の着やう、旗指物の制法、馬上にて、刀をぬき、鎗をつかひ、敵とくみ合の法、或は、不意に敵に出合ひたる時、敵にきられず、敵にかつの法、凡、匹夫の勇のはたらき、刀剣、及、馬芸につきてのわざ、又は、戦塲にあらずして、時の変に応ずる術も、士たる人、習ひしるべし。かやうの術を教ふる師あり。書あり。ならふべし。
書き下し
甲冑の着やう、旗指物の制法、馬上にて、刀をぬき、鎗をつかひ、敵とくみ合の法、或は、不意に敵に出合ひたる時、敵にきられず、敵にかつの法、凡、匹夫の勇のはたらき、刀劍、及、馬藝につきてのわざ、又は、戰塲にあらずして、時の變に應ずる術も、士たる人、習ひしるべし。かやうの術を敎ふる師あり。書あり。ならふべし。
現代語訳
甲冑の着方、旗指物の作り方、馬上で刀を抜き、鎗を使い、敵と組み合う法、あるいは、不意に敵に出会った時に、敵に斬られず、敵に勝つ法、およそ匹夫の勇のはたらき、刀剣と馬芸に関する技、または、戦場ではなく時の変事に応じる術も、士たる人は習い知るべきです。このような術を教える師がおり、書もあります。習うべきです。
解説
実技の例を列挙して、これらも士たる者は習い知るべきだと述べる段です。甲冑の着方から、不意の遭遇への対処まで、細かな実技が並びます。戦場でなく時の変事に応じる術まで含めている点が目を引きます。つまり、備えるべきは戦だけでなく、不意の出来事への対応も含むということです。さらに、教える師も書もあるのだから習えと結んでいます。学べる環境があるのに習わないのは怠りだ、という含意です。現代の仕事でも、緊急時の対応や基本動作の訓練は、手引きも研修もあることが多いものです。机上の理解にとどめず、実際に身体で覚えておく意義を考えさせられます。
この章句が説くこと
実技不意への備え師と書基本動作変事武訓
関連する章句
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『文武訓』武訓上一甲冑の著やう、旗指物の制法、馬上にて刀を抜き鎗をつかひ、敵と組み合の法、或は不意に敵に出合ひたる時、敵に斬られず敵に勝つの法、凡匹夫の勇のはたらき、刀剣、及び馬芸につきてのわざ、又は戦場にあらずして、時の変に応ずる術も、士たる人習ひ知るべし。かやうの術を教ふる師あり、書あり、ならふべし。
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『文武訓』武訓上一武士たる人は、武芸を知らずんばあるべからず。弓馬、刀剣、鎗長刀、鳥銃、拳法なども、其法をならはずしては、戦にのぞみて功をなしがたし。中について、弓馬を尤まなぶべし。弓馬の二は、ことさら学ばずしては、ちからつよしとても、妄に其術行はれず。他の武芸はよく習ひても、治世に生れては、一生の間一度も其わざ用に立たざることあり。弓馬は、治世にても日用のことなり。殊に馬は日々乗る物なれば、よく学ぶべし。
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『文武訓』武訓上一士たる人は、高きいやしき、弓馬剣戟の法をまなぶべし。武芸を知らざれば、戦にのぞみ敵に対しがたし。されど、大将たる人は、まづ兵法をならひて、次に武芸をならふべし。武芸に専なるべからず。武芸はただ其大略をならふべし。武芸は末なり、兵法は本なり。有司も兵法をならふべし。将たる人、武芸のみ知りて兵法を知らざるは、本をすてて末をとるなり。小身の士は、武芸を大やうはあまねくまなぶべし。弓馬、剣術鎗長刀、抜刀、撃剣、拳法、棒、水練など皆ならひ知るべし。一事も知らざれば変に応じがたきことあり。小身の士も、一芸をすぐれて精しくまなぶは、一事になづみて他芸に通じがたし。故に一芸に専一なるべからず。然れども、もし士の子弟など、一芸を以て、身を立てんと思ふものは、芸を専にしてくはしくまなぶべし。これ人の師となるに足れり。かやうの人、もしあまねく多芸にしては、一芸にくはしからず、くはしからざれば人の師となりがたし。
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『文武訓』武訓上一凡武士となる者は、忠孝義理の志なくしては、武勇おろそかに節義闕けて、奉公の道たたず。又武士の家に生れ、兵術武芸を知らず、武具をそなへず、軍用乏しくては、たとひ心たけくとも、武勇のつとめおろそかなるべし。故に武士の道、内には忠孝義理を以て本として兵法を知り、外には武芸をならひ、武備ともしからざるを以て助とす。武士として忠孝義理の道をしらず、兵法武芸にうとく、武備なくんば、武士の業を失へりといふべし。武芸は匹夫の勇のはたらきなり。其位に応じて学ぶべし。大人は、武芸に専一に心を用ふべからず。芸になづめば道行はれず。武備はかねて定め置くべし。平生無事の時心を用ひ、其分限に応じて、人馬、武具、家人の兵器、馬具、金銀、米銭等まで、かねてそなへ置き、籍にしるし、不足なく用意すべし。出陣の時にのぞみては、兼て定めし制法にしたがひ、何の用意もなく、何時も即時に打立つやうにすべし。凡事予則立とは是なり。何事もかねて用意なくしては、俄の時につまづくものなり。
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