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武士訓 / 卷五・第7段

勝負一にありて二にあらず。古語にも一毫差則天壤易所といへり。一たびあやまりあれば。ふたゝびあらたむることあたはず。勝負は瞬目の間にあり。手を拍て音生ずるにたり。若夫武具をあはせてのち千變萬化のはたらきありといはゞ。世にいふ人形兵法にて用にたらざるなり。千變萬化は發せざる前のこゝろをさしていふ。

新字:勝負一にありて二にあらず。古語にも一毫差則天壤易所といへり。一たびあやまりあれば。ふたゝびあらたむることあたはず。勝負は瞬目の間にあり。手を拍て音生ずるにたり。若夫武具をあはせてのち千変万化のはたらきありといはゞ。世にいふ人形兵法にて用にたらざるなり。千変万化は発せざる前のこゝろをさしていふ。

書き下し

勝負一にありて二にあらず。古語にも一毫差則天壤易所といへり。一たびあやまりあれば。ふたゝびあらたむることあたはず。勝負は瞬目の間にあり。手を拍て音生ずるにたり。若夫武具をあはせてのち千變萬化のはたらきありといはゞ。世にいふ人形兵法にて用にたらざるなり。千變萬化は發せざる前のこゝろをさしていふ。

現代語訳

勝負は一つにあって二つにない。古語にも「わずかな差で天と地が入れ替わる」という。一たび誤りがあれば、再び改めることはできない。勝負は瞬きの間にある。手を打って音が生じるほどのものである。もし武具を合わせたのちに千変万化の働きがあるというなら、世にいう人形兵法で、役に立たない。千変万化は、発しない前の心を指して言うのである。

解説

勝負は一度きりで、やり直しがきかないと説く段です。わずかな差で天地が入れ替わるという古語を引き、勝負は瞬きの間にあると言います。もし武具を合わせてから千変万化の働きがあるというなら人形兵法で役に立たないとし、千変万化は、発する前の心にあると示します。つまり、結果を分けるのは動き出してからの対応より、動く前の心の備えだということです。重要な商談や意思決定の場でも、その場の機転だけに頼ると失敗しやすく、準備段階の心構えと想定が結果を決めます。やり直しのきかない場面では、事前にどこまで考え抜いたかが問われます。

この章句が説くこと

一回性千変万化未発準備瞬間武士訓

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