武士訓 / 卷一・第13段
士は幸あらずして。時に遇ざるをうれへることなかれ。生涯命にまかせて。心をなやますべからず。邵康節の詩にも。富貴如將智力求。仲尼年少合封侯。世人不解靑天意。空使身心半夜愁と賦せられたり。
新字:士は幸あらずして。時に遇ざるをうれへることなかれ。生涯命にまかせて。心をなやますべからず。邵康節の詩にも。富貴如将智力求。仲尼年少合封侯。世人不解青天意。空使身心半夜愁と賦せられたり。
書き下し
士は幸あらずして。時に遇ざるをうれへることなかれ。生涯命にまかせて。心をなやますべからず。邵康節の詩にも。富貴如將智力求。仲尼年少合封侯。世人不解靑天意。空使身心半夜愁と賦せられたり。
現代語訳
士は幸いに恵まれず、時に遇わないことを憂えてはなりません。生涯、命にまかせて、心を悩ませてはなりません。邵康節の詩にも「富貴がもし知力で求められるなら、仲尼は若いうちに封侯となるにふさわしかったはずだ。世の人は青天の意を解せず、むなしく身も心も半夜の愁いに悩ませる」と詠まれています。
解説
時に遇わないことを憂えず、命にまかせて心を悩ませるな、と短く述べる段です。邵康節の詩は、富貴が知力で得られるなら、若い仲尼が封侯になれたはずだが、世の人は天の意を解さず、夜半に愁えるだけだ、という意味です。ここでいう命とは、人の力の及ばない巡り合わせのことでしょう。努力を軽んじる言葉ではなく、努力と結果が必ずしも結ばれないことを受け入れる心構えとして読めます。昇進や評価が思うように進まない時期に、自分で動かせることと動かせないことを分けて考える助けになります。次の段の不遇論へつながります。
この章句が説くこと
不遇時に遇う命にまかせる邵康節心を悩ませない武士訓
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