文子 / 上德
老子曰:山致其高而雲雨起焉,水致其深而蛟龍生焉,君子致其道而德澤流焉。夫有陰德者必有陽報,有隱行者必有昭名,樹黍者不穫稷,樹怨者無報德。
新字:老子曰:山致其高而雲雨起焉,水致其深而蛟竜生焉,君子致其道而徳沢流焉。夫有陰徳者必有陽報,有隠行者必有昭名,樹黍者不穫稷,樹怨者無報徳。
書き下し
老子曰く、山、其の高きを致して雲雨起こり、水、其の深きを致して蛟龍生ず。君子、其の道を致して徳沢流る。夫れ陰徳有る者は必ず陽報有り、隠行有る者は必ず昭名有り。黍を樹うる者は稷を穫ず、怨みを樹うる者は徳を報ゆる無し。
現代語訳
老子は言った。山はその高さを極めて雲や雨が起こり、水はその深さを極めて蛟や龍が生まれる。君子はその道を極めて徳の恵みが流れる。そもそも人知れず徳を積む者には必ず目に見える報いがあり、人知れず行いを積む者には必ず名が明らかになる。黍を植える者は稷を収穫せず、怨みを植える者は徳に報われることがない。
解説
巻の末尾にふさわしく、簡潔な処世訓でまとめられた段です。「山、其の高きを致して雲雨起こり、水、其の深きを致して蛟龍生ず」。高さや深さを突き詰めれば、結果として恵みや力が現れる。道を究めれば徳は自然と流れる、という順序です。続く「陰徳有る者は必ず陽報有り」は、人知れぬ善行が、いずれ名や報いとなって現れるという有名な句です。逆に、黍を植えて稷が取れないように、怨みを撒けば徳は返らない。評価されない地味な仕事を続ける人に、最後にものをいうのは積み重ねだ、という励ましにもなります。
この章句が説くこと
其の高きを致して雲雨起こり陰徳有る者は必ず陽報有り隠行有る者は必ず昭名有り怨みを樹うる者は徳を報ゆる無し陰徳報い
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