文子 / 上德
河水深,壤在山,丘陵高,下入淵,陽氣盛,變為陰,陰氣盛,變為陽,故欲不可盈,樂不可極。忿無惡言,怒無作色,是謂計得。火上炎,水下流,聖人之道,以類相求。聖人偯陽,天下和同,偯陰,天下溺沉。
新字:河水深,壤在山,丘陵高,下入淵,陽気盛,変為陰,陰気盛,変為陽,故欲不可盈,楽不可極。忿無悪言,怒無作色,是謂計得。火上炎,水下流,聖人之道,以類相求。聖人偯陽,天下和同,偯陰,天下溺沈。
書き下し
河水深くして壌は山に在り、丘陵高くして下は淵に入る。陽気盛んなれば陰と変じ、陰気盛んなれば陽と変ず。故に欲は盈たす可からず、楽しみは極む可からず。忿りて悪言無く、怒りて作色無きは、是を計得と謂う。火は上り炎え、水は下り流る。聖人の道は、類を以て相求む。聖人、陽に偯れば、天下和同し、陰に偯れば、天下溺沈す。
現代語訳
河の水が深くなれば土は山に残り、丘陵が高ければその下は淵に入る。陽の気が盛んになれば陰に変じ、陰の気が盛んになれば陽に変ずる。だから欲は満たし切ってはならず、楽しみは極め切ってはならない。怒っても悪い言葉を吐かず、怒っても顔色に出さないのは、うまく勘定が合った状態という。火は上へ燃え、水は下へ流れる。聖人の道は、同類で互いに求め合うことである。聖人が陽に寄れば、天下は和らぎ同じ心になり、陰に寄れば、天下は溺れ沈む。
解説
極まれば反対に転じるという理を、欲と楽しみに当てはめた短い段です。「陽気盛んなれば陰と変じ、陰気盛んなれば陽と変ず。故に欲は盈たす可からず、楽しみは極む可からず」。好調が続くときほど満ち切らせない、楽しみを極めない。そして怒りについて、「忿りて悪言無く、怒りて作色無き」を「計得」、つまり損得の勘定が合った状態と呼びます。感情を持ちながらも、言葉と顔には出さない。職場で上に立つ人が叱るとき、怒りの熱を言葉に載せないだけで、関係の損失が大きく減ります。怒りの扱い方を、実利の面から勧めた珍しい一節です。
この章句が説くこと
欲は盈たす可からず楽しみは極む可からず怒りて作色無き聖人の道は類を以て相求む節度怒り
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