文子 / 上德
循繩而斷即不過,懸衡而量即不差,懸古法以類,有時而遂,杖格之漌,有時而施,是而行之,謂之亂。農夫勞而君子養,愚者言而智者擇,見之明白,處之如玉石,見之黯黣,必留其謀。百星之明,不如一月之光,十牖畢開,不如一戶之明。蝮蛇不可為足,虎不可為翼,今有六尺之席,臥而越之,下才不難,立而踰之,上才不易,勢施異也。助祭者得嘗,救鬥者得傷,蔽於不祥之木,為雷霆所撲。日月欲明,濁雲蓋之,河水欲清,沙土穢之,叢蘭欲脩,秋風敗之,人性欲平,嗜欲害之,蒙塵而欲無眯,不可得絜。黃金龜紐,賢者以為佩,土壤布地,能者以為富,故與弱者金玉,不如與之尺素。轂虛而中立三十輻,各盡其力,使一輻獨入,眾輻皆棄,何近遠之能至。橘柚有鄉,萑葦有叢,獸同足者相從游,鳥同翼者相從翔。欲觀九州之地,足無千里之行,無政教之原,而欲為萬民上者,難矣!兇兇者獲,提提者射,故大白若辱,廣德若不足。
新字:循縄而断即不過,懸衡而量即不差,懸古法以類,有時而遂,杖格之漌,有時而施,是而行之,謂之乱。農夫労而君子養,愚者言而智者択,見之明白,処之如玉石,見之黯黣,必留其謀。百星之明,不如一月之光,十牖畢開,不如一戸之明。蝮蛇不可為足,虎不可為翼,今有六尺之席,臥而越之,下才不難,立而踰之,上才不易,勢施異也。助祭者得嘗,救鬥者得傷,蔽於不祥之木,為雷霆所撲。日月欲明,濁雲蓋之,河水欲清,沙土穢之,叢蘭欲脩,秋風敗之,人性欲平,嗜欲害之,蒙塵而欲無眯,不可得絜。黄金亀紐,賢者以為佩,土壤布地,能者以為富,故与弱者金玉,不如与之尺素。轂虚而中立三十輻,各尽其力,使一輻独入,衆輻皆棄,何近遠之能至。橘柚有郷,萑葦有叢,獣同足者相従游,鳥同翼者相従翔。欲観九州之地,足無千里之行,無政教之原,而欲為万民上者,難矣!兇兇者獲,提提者射,故大白若辱,広徳若不足。
書き下し
縄に循いて断てば即ち過たず、衡を懸けて量れば即ち差わず。古法を懸けて以て類すれば、時有りて遂げ、杖格の漌も、時有りて施す。是として之を行う、之を乱と謂う。農夫は労して君子は養われ、愚者は言いて智者は択ぶ。之を見ること明白なれば、之に処ること玉石の如く、之を見ること黯黣なれば、必ず其の謀を留む。百星の明は、一月の光に如かず。十牖畢く開くも、一戸の明に如かず。蝮蛇は足を為す可からず、虎は翼を為す可からず。今六尺の席有り、臥して之を越ゆるは、下才も難からず、立ちて之を踰ゆるは、上才も易からず。勢い施すこと異なればなり。祭を助くる者は嘗むるを得、闘を救う者は傷つくを得、不祥の木に蔽るれば、雷霆の撲つ所と為る。日月明らかならんと欲すれども、濁雲之を蓋い、河水清からんと欲すれども、沙土之を穢し、叢蘭修まらんと欲すれども、秋風之を敗り、人性平らかならんと欲すれども、嗜欲之を害す。塵を蒙りて眯むこと無からんと欲するも、絜きを得可からず。黄金の亀紐は、賢者以て佩と為し、土壌の地に布くは、能者以て富と為す。故に弱者に金玉を与うるは、之に尺素を与うるに如かず。轂虚にして中に三十輻立つは、各々其の力を尽くせばなり。一輻をして独り入らしめ、衆輻皆な棄てば、何ぞ近遠の能く至るあらん。橘柚に郷有り、萑葦に叢有り、獣の足を同じくする者は相従いて游び、鳥の翼を同じくする者は相従いて翔ぶ。九州の地を観んと欲して、足に千里の行無く、政教の原無くして、万民の上たらんと欲するは、難し。兇兇なる者は獲られ、提提なる者は射らる。故に大白は辱の若く、広徳は足らざるが若し。
現代語訳
墨縄に沿って切れば誤らず、秤を掛けて量れば差が出ない。古い法を掲げて今に類推すれば、うまくいくときもあるが、杖で突き当たるようなことも、あるときには行われる。それを正しいと思って行うことを、乱という。農夫は働いて君子は養われ、愚者は言い、智者が選ぶ。見ることが明白であれば、玉と石を並べるようにはっきりと処し、見ることが暗くぼんやりしていれば、必ずその計画を保留する。百の星の明るさも、一つの月の光にはかなわない。十の窓を全部開けても、一つの戸口の明るさにはかなわない。まむしに足を付けることはできず、虎に翼を付けることはできない。いま六尺の筵があって、寝そべって越えるのは、下の才の人でも難しくないが、立って跳び越えるのは、上の才の人でも易しくない。勢いのかけ方が違うからである。祭りを手伝う者は供え物にあずかり、喧嘩を止める者は傷を負い、不吉な木の下に隠れれば、雷に打たれる。日月は明るくあろうとするが濁った雲がこれを覆い、河の水は清くあろうとするが砂や土がこれを汚し、群れ咲く蘭は伸びようとするが秋風がこれを枯らし、人の本性は平らかであろうとするが嗜欲がこれを害する。塵をかぶって目がかすまないようにしようとしても、清らかではいられない。黄金の亀のつまみ印は、賢者は佩びる物とするが、土壌が地に広がっているのを、能のある者は富とする。だから弱い者に金や玉を与えるのは、一尺の白絹を与えるのにも及ばない。車輪のこしきが空で、真ん中に三十本の輻が立つのは、それぞれが力を尽くすからである。もし一本の輻だけを入れてほかをすべて捨てたら、どうして遠くにも近くにも至れよう。橘や柚には産地があり、葦には群生地があり、獣は足の同じものが従い合って遊び、鳥は翼の同じものが従い合って飛ぶ。九州の地を見ようとして、足に千里の歩みがなく、政教の根源を持たずに、万民の上に立とうとするのは難しい。勇み立つ者は捕らえられ、のろのろ歩む者は射られる。だから大いに白いものは辱めを受けているようで、広い徳は足りないようである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』法儀然らば則ち奚を以て治法を為して可ならんか。故に曰く、天に法るに若くは莫し、と。天の行いは廣くして私無く、其の施しは厚くして徳とせず、其の明るきは久しくして衰えず。故に聖王は之に法る。既に天を以て法と為さば、動作有為には、必ず天に度り、天の欲する所は則ち之を為し、天の欲せざる所は則ち止む。
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『墨子』尚賢下子墨子言いて曰く、「天下の王公大人は皆な其の國家の富み、人民の衆く、刑法の治まるを欲す。然れども尚賢を以て政を為して其の國家百姓を治むるを識らず。王公大人、本より尚賢の政を為すの本を失えるなり。若し茍くも王公大人、本より尚賢の政を為すの本を失わば、則ち物を舉げて之に示す毋くんばある能わざらんや。今、若し一諸侯、此に有りて、國家に政を為すや、曰く、『凡そ我が國の能く射御する士は、我れ將に之を賞し貴くせんとす。射御する能わざる士は、我れ將に之を罪し賤しくせんとす』と。若の國の士に問う、孰か喜び孰か懼れんと。我れ以て必ず能く射御する士は喜び、射御する能わざる士は懼れんと為す。我れ賞して因りて之を誘わん、曰く、『凡そ我が國の忠信の士は、我れ將に之を賞し貴くせんとす。忠信ならざる士は、我れ將に之を罪し賤しくせんとす』と。」
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『墨子』法儀子墨子曰く、天下の事を從むる者は、以て法儀無かる可からず。法儀無くして其の事能く成る者は、有ること無し。士の將相為る者に至ると雖も皆な法有り、百工の事を從むる者に至ると雖も亦た皆な法有り。百工は方を為すに矩を以てし、圜を為すに規を以てし、直きは繩を以てし、正しきは懸を以てす。巧工も不巧工も無く、皆な此の四者を以て法と為す。巧なる者は能く之に中り、不巧なる者は中つる能わずと雖も、放依して以て事を從めば、猶お已に逾えたり。故に百工の事を從むるや、皆な法度有り。今、大なる者は天下を治め、其の次は大國を治むるに、而も法度無し。此れ百工の辯なるに若かざるなり。
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『墨子』法儀然らば則ち奚を以て治法を為して可ならんか。當に皆な其の父母に法らば奚若ん。天下の父母為る者は衆けれども、仁なる者は寡し。若し皆な其の父母に法らば、此の法は不仁なり。法、不仁なれば、以て法と為す可からず。當に皆な其の學に法らば奚若ん。天下の學を為す者は衆けれども、仁なる者は寡し。若し皆な其の學に法らば、此の法は不仁なり。法、不仁なれば、以て法と為す可からず。當に皆な其の君に法らば奚若ん。天下の君為る者は衆けれども、仁なる者は寡し。若し皆な其の君に法らば、此の法は不仁なり。法、不仁なれば、以て法と為す可からず。故に父母・學・君の三者は、以て治法と為す可き莫し。
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『墨子』尚賢上是の故に古者、聖王の政を為すや言いて曰く、「義ならざれば富まさず、義ならざれば貴くせず、義ならざれば親しまず、義ならざれば近づけず」と。是を以て國の富貴の人、之を聞きて、皆な退きて謀りて曰く、「始め我が恃む所の者は富貴なり。今、上、義を舉ぐるに貧賤を辟けず。然らば則ち我れ義を為さざる可からず」と。親しき者、之を聞き、亦た退きて謀りて曰く、「始め我が恃む所の者は親なり。今、上、義を舉ぐるに親疎を辟けず。然らば則ち我れ義を為さざる可からず」と。近き者、之を聞き、亦た退きて謀りて曰く、「始め我が恃む所の者は近なり。今、上、義を舉ぐるに近を辟けず。然らば則ち我れ義を為さざる可からず」と。逺き者、之を聞き、亦た退きて謀りて曰く、「始め我れ逺きを以て恃む無しと為す。今、上、義を舉ぐるに逺きを辟けず。然らば則ち我れ義を為さざる可からず」と。逺鄙郊外の臣、門庭の庶子、國中の衆、四鄙の氓人に逮び至るまで、之を聞きて皆な競いて義を為す。
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『墨子』尚同上子墨子言いて曰く、古者、民、始めて生じて未だ刑政有らざる時、盖し其の語、人ごとに義を異にす。是を以て一人なれば則ち一義、二人なれば則ち二義、十人なれば則ち十義。其の人、滋いよ衆ければ、其の義と謂う所の者も亦た滋いよ衆し。是を以て人は其の義を是として、以て人の義を非とす。故に交ごも相い非とし是とするなり。内なる者は父子兄弟、怨惡を作し、離散して相い和合する能わず。天下の百姓、皆な水火毒藥を以て相い虧害し、餘力有るに至るも以て相い勞う能わず。餘財を府列するも以て相い分かたず、良道を隠匿するも以て相い教えず。天下の亂るること、禽獸の若く然り。
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