文子 / 道德
老子曰:法煩刑峻即民生詐,上多事下多態,求多即得寡,禁多即勝少,以事生事,又以事止事,譬猶揚火而使無焚也,以智生患,以智備之,譬猶撓水而欲求清也。
書き下し
老子曰く、法煩わしく刑峻しければ即ち民詐を生じ、上事多ければ下態多し。求むること多ければ即ち得ること寡く、禁ずること多ければ即ち勝つこと少し。事を以て事を生じ、又た事を以て事を止むるは、譬えば猶お火を揚げて焚くこと無からしめんとするがごとし。智を以て患いを生じ、智を以て之に備うるは、譬えば猶お水を撓して清きを求めんと欲するがごとし。
現代語訳
老子は言った。法が煩雑で刑が厳しければ、民は偽りを生み、上に事が多ければ下は様々に取り繕う。求めることが多ければ得るものは少なく、禁じることが多ければ勝つことは少ない。事によって事を生み、さらに事によって事を止めようとするのは、火を揚げておいて燃えないようにしようとするようなものである。智によって患いを生み、智によってそれに備えるのは、水をかき混ぜておいて澄んでほしいと願うようなものである。
解説
規則を増やすほど、かえって不正が増えるという短い段です。「法煩わしく刑峻しければ即ち民詐を生じ」。禁止が多いと、人は抜け道を探す方向に知恵を使うようになります。そのうえで二つの例えを挙げます。火を煽りながら燃えるなと言う、水をかき混ぜながら澄めと言う。問題への対策がさらに問題を生む構造を、一行で言い当てています。再発防止策として確認項目を増やし続け、現場が疲弊するという場面は、今の職場にもよくあります。対策を足す前に、原因となった余計な手間を引けないか、と問い直したくなります。
この章句が説くこと
法煩わしく刑峻しければ即ち民詐を生じ事を以て事を生じ水を撓して清きを求めん禁ずること多ければ即ち勝つこと少し簡素規則
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