文子 / 精誠
老子曰:冬日之陽,夏日之陰,萬物歸之而莫之使,極自然至精之感,弗召自來,不去而往,窈窈冥冥,不知所為者而功自成,待目而照見,待言而使命,其於治難矣。皋陶喑而為大理,天下無虐刑,有貴乎言者也,師曠瞽而為太宰,晉國無亂政,有貴乎見者也。不言之令,不視之見,聖人所以為師也,民之化上,不從其言,從其所行,故人君好勇,弗使鬥爭而國家多難,其漸必有劫殺之亂矣。人君好色,弗使風議而國家昏亂,其積至於淫佚之難,故聖人精誠別於內,好憎明於外,出言以副情,發號以明指。是故刑罰不足以移風,殺戮不足以禁姦,唯神化為貴,精至為神,精之所動,若春氣之生,秋氣之殺。故君子者,其猶射者也,於此毫末,於彼尋丈矣!故理人者,慎所以感之。
新字:老子曰:冬日之陽,夏日之陰,万物帰之而莫之使,極自然至精之感,弗召自来,不去而往,窈窈冥冥,不知所為者而功自成,待目而照見,待言而使命,其於治難矣。皋陶喑而為大理,天下無虐刑,有貴乎言者也,師曠瞽而為太宰,晋国無乱政,有貴乎見者也。不言之令,不視之見,聖人所以為師也,民之化上,不従其言,従其所行,故人君好勇,弗使鬥争而国家多難,其漸必有劫殺之乱矣。人君好色,弗使風議而国家昏乱,其積至於淫佚之難,故聖人精誠別於内,好憎明於外,出言以副情,発号以明指。是故刑罰不足以移風,殺戮不足以禁姦,唯神化為貴,精至為神,精之所動,若春気之生,秋気之殺。故君子者,其猶射者也,於此毫末,於彼尋丈矣!故理人者,慎所以感之。
書き下し
老子曰く、冬日の陽、夏日の陰、万物之に帰して之を使う莫し。自然至精の感を極むれば、召さずして自ずから来たり、去らずして往く。窈窈冥冥として、為す所を知らざる者にして功自ずから成る。目を待ちて照見し、言を待ちて命を使わしむるは、其の治に於いて難し。皋陶は喑にして大理と為り、天下に虐刑無し。言を貴ぶ者有り。師曠は瞽にして太宰と為り、晋国に乱政無し。見を貴ぶ者有り。不言の令、不視の見は、聖人の師と為す所以なり。民の上に化するは、其の言に従わず、其の行う所に従う。故に人君勇を好めば、闘争せしめずして国家難多し。其の漸必ず劫殺の乱有らん。人君色を好めば、風議せしめずして国家昏乱す。其の積むこと淫佚の難に至る。故に聖人は精誠内に別れ、好憎外に明らかに、言を出だすに情に副い、号を発するに指を明らかにす。是の故に刑罰は以て風を移すに足らず、殺戮は以て姦を禁ずるに足らず。唯だ神化を貴しと為す。精至れば神と為る。精の動く所、春気の生じ、秋気の殺するが若し。故に君子は其れ射者の猶し。此に毫末にして、彼に尋丈なり。故に人を理むる者は、其の感ずる所以を慎む。
現代語訳
老子は言った。冬の日の陽、夏の日の陰のように、万物はこれに帰して、誰も使わない。自然の至精の感応を極めれば、招かなくてもおのずと来て、去らなくてもおのずと往く。奥深く暗く、何をしているのか知られないうちに功がおのずと成る。目で見て照らし、言葉で命じて動かそうとするのは、その治め方として難しい。皋陶は口がきけなかったが大理(司法の長)となり、天下に虐刑がなかった。これは言葉を貴ぶ場合がある。師曠は盲であったが太宰となり、晋国に乱政がなかった。これは見ることを貴ぶ場合がある。言わない令、見ない視察こそ、聖人が師とするところである。民が上に感化されるのは、その言葉に従うのではなく、その行いに従うのである。だから君主が勇を好めば、闘争させなくても国家は災難が多くなる。その漸進は必ず殺し合いの乱に至る。君主が色を好めば、風議させなくても国家は乱れる。それが積もると放縦の災いに至る。だから聖人は精誠が内で区別され、好き嫌いが外に明らかで、言葉を出すときは情に副い、号令を発するときは指す意図を明らかにする。このため刑罰は風俗を移すに足りず、殺戮は悪事を禁じるに足りない。ただ神のような感化だけが貴い。精が至れば神となる。精の動くところは、春の気が生じさせ、秋の気が殺すようである。だから君子は射手のようなものである。ここで毛先ほどの違いが、あちらでは大きな隔たりとなる。だから人を治める者は、人を感じさせるもとを慎むのである。
解説
この章句が説くこと
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文子・精誠老子曰く、人主の思いは、神胸中に馳せず、智四域を出でず、其の仁誠の心を懐き、甘雨時を以てし、五穀蕃殖し、春生じ夏長じ秋収め冬蔵む。月に省み時に考し、終歳貢を献じ、民を養うに公を以てし、威厲に誠を以てし、法省いて煩わしからず、教化神の如し。法寛く刑緩く、囹圄空虚にして、天下一俗、姦心を懐く莫し。此れ聖人の恩なり。夫れ上取るを好みて量り無ければ、即ち下功を貪りて譲る無し。民貧苦して分争生じ、事力労して功無く、智詐萌生し、盗賊滋ます彰らかに、上下相い怨み、号令行われず。夫れ水濁れば魚噞し、政苛なれば民乱る。上欲多ければ即ち下詐多く、上煩擾なれば即ち下定まらず、上求め多ければ即ち下交々争う。其の本を治めずして之を末に救うは、渠を鑿ちて水を止め、薪を抱きて火を救うに異ならず。聖人は事省いて治まり、求め寡くして贍り、施さずして仁、言わずして信、求めずして得、為さずして成る。自然を懐き、至真を保ち、道を抱き誠を推せば、天下之に従うこと響の声に応じ、影の形に像るが如し。修むる所のものは本なり。
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文子・精誠老子曰く、天は其の高きを致し、地は其の厚きを致し、日月照らし、列星朗らかに、陰陽和し、為す有るに非ずして、其の道を正して物自ずから然り。陰陽四時は万物を生ずるに非ず、雨露の時に降るは草木を養うに非ず、神明接し、陰陽和して、万物生ず。夫れ道は、精を内に蔵し、神を心に棲まわせ、静漠恬惔、悦穆胸中に、廓然として形無く、寂然として声無し。官府は事無きが若く、朝廷は人無きが若く、隠士無く、逸民無く、労役無く、怨刑無し。天下上の象、主の旨を仰がざる莫く、絶国殊俗も重訳して至らざる莫きは、家ごとに至り人ごとに之に見ゆるに非ず、其の誠心を推して、之を天下に施すのみ。故に善を賞し暴を罰するは、正令なり。其の能く行わるる所以は、精誠なり。令明らかなりと雖も独り行わるる能わず、必ず精誠を待つ。故に道を摠べて以て民に被らせて従わざる者は、精誠の包まざればなり。
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文子・精誠老子曰く、天は日月を設け、星辰を列ね、四時を張り、陰陽を調う。日以て之を暴し、夜以て之を息わせ、風以て之を乾かし、雨露以て之を濡す。其の物を生ずるや、其の養う所を見ずして万物長じ、其の物を殺すや、其の喪う所を見ずして万物亡ぶ。此を神明と謂う。是の故に聖人は之に象る。其の福を起こすや、其の所以を見ずして福起こり、其の禍を除くや、其の由る所を見ずして禍除かる。之を稽うれども得ず、之を察すれども虚しからず、日に計れば足らず、歳に計れば余り有り、寂然として声無く、一言にして大いに天下を動かす。是れ天心の動化する者なり。故に精誠内に形われ、気天に動く。景星見われ、黄龍下り、鳳皇至り、醴泉出で、嘉穀生じ、河は満溢せず、海は波涌せず。天に逆い物を暴すれば、即ち日月薄蝕し、五星行を失い、四時相い乗り、昼冥く宵光り、山崩れ川涸れ、冬に雷し夏に霜ふる。天の人に与するや、以て相い通ずる有り。故に国の沮亡するや、天文変じ、世俗乱れ、虹蜺見われ、万物以て相い連なる有り、精気以て相い薄る有り。故に神明の事は、智巧を以て為す可からず、強力を以て致す可からず。故に大人は天地と徳を合わせ、日月と明を合わせ、鬼神と霊を合わせ、四時と信を合わせ、天心を懐き、地気を抱き、沖を執り和を含み、堂を下りずして四海を行き、習俗を変易し、民化して善に遷ること、諸れを己に生ずるが若し。能く神化を以てする者なり。
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文子・精誠老子曰く、法を懸け賞を設けて風を移し俗を易うる能わざるは、誠心抱かざればなり。故に其の音を聴けば則ち其の風を知り、其の楽を観れば即ち其の俗を知り、其の俗を見れば即ち其の化を知る。夫れ真を抱き誠を効す者は、天地を感動せしめ、神は方外を踰え、令行われ禁止まる。誠其の道に通じて其の意に達すれば、一言無しと雖も、天下の万民、禽獣、鬼神之と与に変化す。故に太上は神化し、其の次は非を為すを得ざらしめ、其の下は賢を賞して暴を罰す。
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文子・精誠老子曰く、夫れ人道は、性を全くし真を保ち、其の身を虧かず、急迫難に遭えども、精天に通ず。若し乃ち未だ始めより其の宗を出でざる者は、何を為して成らざらん。死生域を同じくして、脅凌す可からず。又況んや天地に官たり、万物を懐き、造化に返り、至和を含みて、己未だ嘗て死せざる者をや。精誠内に形われて、外人心に喩す、此れ不伝の道なり。聖人上に在りて、道を懐き言わず、沢万民に及ぶ。故に不言の教は、芒として大なるかな。君臣心を乖けば、倍譎天に見われ、神気相い応じて徴あり。此を不言の弁、不道の道と謂う。夫れ遠きを召す者には無為ならしめ、近きを親しむ者には無事を言う。唯だ夜行く者のみ能く之を有つ。走馬を卻けて以て糞し、車軌遠方の外に接せず、是を坐馳陸沈と謂う。天道は私に就くこと無く、私に去ること無し。能者は余り有り、拙者は足らず。之に順う者は利あり、之に逆う者は凶なり。是の故に智を以て治を為す者は国を持し難く、唯だ大和に同じくして自然を持して応ずる者のみ、能く之を有つと為す。
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文子・精誠老子曰く、心の精なるものは、以て神化す可くして、道を説く可からず。聖人席を降らずして天下を匡すは、情□呼より甚だしければなり。故に言を同じくして信あるは、信は言の前に在り。令を同じくして行わるるは、誠は令の外に在り。聖人上に在りて、民化すること神の如きは、情以て之に先んずればなり。上に動きて下に応ぜざるは、情と令と殊なればなり。三月の嬰児は未だ利害を知らざれども、慈母の愛愈いよ篤きは、情なり。故に言の用は、変変乎として小なるかな。不言の用は、変変乎として大なるかな。君子の言を信じ、君子の意に忠なるは、忠信内に形われ、感動外に応ずる、賢聖の化なり。
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