文明一統記 / 正直・正直は鏡のように映す政のもと
佛の敎には、正直捨方便と說給へり、八幡大菩薩の御詫宣にも、神は正直のかうべに宿り給ふとのたまへり、正直といふは、たゞ直なる心なり、心ゆがみぬれば、身に行ふと一としてゆがまずと云ことなし、他人に對しても、よき人をば能と思ひ給ひて、勸賞を行給べし、あしき者をばあしきと思ひ給ひて、征罰を加へらるべし、是則正直の心に行はるゝ、正直の政也、正直の心のたとへを申には、鏡に過たることはなし、みめよき人が鏡にむかへば、みめよき影を移し、見にくき人が鏡に向へば、見にくき影をうつすがどし、是によりて佛の智慧をば大圓鏡智と號て、鏡に是をたとへ、神の御正躰といふも、鏡にかたどる成べし、
新字:仏の教には、正直捨方便と説給へり、八幡大菩薩の御詫宣にも、神は正直のかうべに宿り給ふとのたまへり、正直といふは、たゞ直なる心なり、心ゆがみぬれば、身に行ふと一としてゆがまずと云ことなし、他人に対しても、よき人をば能と思ひ給ひて、勧賞を行給べし、あしき者をばあしきと思ひ給ひて、征罰を加へらるべし、是則正直の心に行はるゝ、正直の政也、正直の心のたとへを申には、鏡に過たることはなし、みめよき人が鏡にむかへば、みめよき影を移し、見にくき人が鏡に向へば、見にくき影をうつすがどし、是によりて仏の智慧をば大円鏡智と号て、鏡に是をたとへ、神の御正体といふも、鏡にかたどる成べし、
書き下し
佛の敎には、正直捨方便と說給へり、八幡大菩薩の御詫宣にも、神は正直のかうべに宿り給ふとのたまへり、正直といふは、たゞ直なる心なり、心ゆがみぬれば、身に行ふと一としてゆがまずと云ことなし、他人に對しても、よき人をば能と思ひ給ひて、勸賞を行給べし、あしき者をばあしきと思ひ給ひて、征罰を加へらるべし、是則正直の心に行はるゝ、正直の政也、正直の心のたとへを申には、鏡に過たることはなし、みめよき人が鏡にむかへば、みめよき影を移し、見にくき人が鏡に向へば、見にくき影をうつすがどし、是によりて佛の智慧をば大圓鏡智と號て、鏡に是をたとへ、神の御正躰といふも、鏡にかたどる成べし、
現代語訳
仏の教えには「正直にして方便を捨てよ」と説かれています。八幡大菩薩のご託宣にも、神は正直な者の頭に宿られるとあります。正直というのは、ただまっすぐな心のことです。心がゆがめば、身で行うことも一つとしてゆがまないものはありません。他人に対しても、よい人をよいと思って褒賞を行い、悪い者を悪いと思って征伐を加えなさい。これがすなわち正直の心で行う、正直の政治です。正直の心のたとえを言うなら、鏡に勝るものはありません。顔立ちのよい人が鏡に向かえばよい姿を映し、見苦しい人が鏡に向かえば見苦しい姿を映すようなものです。このために、仏の智慧を大円鏡智と呼んで鏡にたとえ、神の御正体というのも鏡をかたどったものなのでしょう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・治道・餘懼と餘望人を罰するに盡くは其の罪を數へずんば、則ち餘懼有り。人を賞するに盡くは其の功を數へずんば、則ち餘望有り。
-
『韓非子』用人第二十七罪は甲に生じて、禍は乙に帰すれば、伏怨乃ち結ぶ。故に至治の国は、賞罰有りて喜怒無し、故に聖人極まる。
-
『武治提要』賞罰・第4段賞罰を嚴重にするは、たとへば活潑のけやけき藥を飮がごとし、的中するときは大利あり、的中せざるときは大害あり。故に吾に得る處あらずして、人の糟粕を咬て、以て嚴重をなすべからず。然れども嚴重を以てせざるときは、戰國にあつて國を廣し、兵を强して、社稷を全することを得べからず。武將の勤力此間にあり。賞物亦三等あり。言を以て賞し、物を以て賞し、地を以て賞すこれ也。一等各上中下を具す。故に賞物亦九等たり。地を以てするは功の上なり、物を以てするはこれに次、言を以てするは又これに次り。凡武將剛臆褒貶の言辭は、平日の政令にして、武俗を化するの本なり。其かゝる處甚重し。夫人々の好惡、其趣意同しからざるを以て、毀譽の批判必ず同じからず。これを一決すること、武將の批判にあり。
-
司馬法・嚴位若し将に復た戦わんとすれば、則ち賞罰を重くす。
-
『潜夫論』正列旧時、京師は動功を防がず、禁を造りて以来、吉祥応瑞、子孫昌熾なること、前に過ぐる能わず。且つ夫れ君を以て臣を畏れ、上を以て下を需むれば、則ち必ず弱きを示して陵がれを取らん、殆ど福を致すの招きに非ざるなり。嘗て上記を観るに、人君の身修まり正しく賞罰明らかなる者は、国治まりて民安し。民安楽なれば、天悦喜して曆数を増す。故に『書』に曰く、「王は小民を以て、天の永命を受く」と。孔子曰く、「天の助くる所の者は、順なり。人の助くる所の者は、信なり」と。信を履みて順を思い、又以て賢を尚ぶ、是を以て天より之を祐け、吉にして利しからざる無し、此れ最も凶災を却けて福善を致すの本なり。
-
『重職心得箇条』第九条刑賞与奪の権は、人主のものにして、大臣是れ預かるべきなり。倒(さかし)まに有司に授くべからず。斯くの如き大事に至っては、厳敷(きびし)く透間あるべからず。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る