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文武訓 / 武訓下

一大將の旗を立つるに、春夏は將の左に立て、秋冬は將の右に立つ。是陰陽にしたがへるなり。一使番は敵陣をうかゞひ、大將の心を身方の士卒に云渡す役なり。軍の道を知れる、少しなりとも智仁勇ある功者を用ふべし。士卒をはげまし、士卒をよわめ、士卒をころし、士卒の心大將に和し大將にそむくも、使番のしわざ多し。必ず其人をえらぶべし。自餘の有司より其職おもし。

新字:一大将の旗を立つるに、春夏は将の左に立て、秋冬は将の右に立つ。是陰陽にしたがへるなり。一使番は敵陣をうかゞひ、大将の心を身方の士卒に云渡す役なり。軍の道を知れる、少しなりとも智仁勇ある功者を用ふべし。士卒をはげまし、士卒をよわめ、士卒をころし、士卒の心大将に和し大将にそむくも、使番のしわざ多し。必ず其人をえらぶべし。自余の有司より其職おもし。

書き下し

一大将の旗を立つるに、春夏は将の左に立て、秋冬は将の右に立つ。是陰陽にしたがへるなり。一使番は敵陣をうかがひ、大将の心を身方の士卒に云渡す役なり。軍の道を知れる、少しなりとも智仁勇ある功者を用ふべし。士卒をはげまし、士卒をよわめ、士卒をころし、士卒の心大将に和し大将にそむくも、使番のしわざ多し。必ず其人をえらぶべし。自余の有司より其職おもし。

現代語訳

大将の旗を立てるには、春夏は将の左に立て、秋冬は将の右に立てます。これは陰陽に従うのです。使番は敵陣の様子をうかがい、大将の心を味方の兵士に言い渡す役です。戦の道を知り、少しでも智・仁・勇のある経験者を用いるべきです。兵士を励ますのも、兵士の力を弱めるのも、兵士を死なせるのも、兵士の心が大将に和するのも大将に背くのも、使番のしわざによることが多い。必ずその人を選ぶべきです。ほかの役人よりもその職は重いのです。

解説

前半は旗の立て方を陰陽で定めるという故実、後半は伝令役である使番の重要性を説きます。大将の意図を兵に伝える役の出来しだいで、士気も和も左右されるというのです。益軒は、ほかの役よりも重いとまで言います。現代の組織でいえば、経営の方針を現場に伝える中間管理職や広報の役割にあたります。伝え方ひとつで、同じ指示が人を奮い立たせもし、反発を招きもします。橋渡し役にこそ人物を選ぶべきだという指摘は、今もそのまま通用します。

この章句が説くこと

使番智仁勇伝達中間管理人選

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