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文武訓 / 武訓上

只うらむらくは、みづからおごりて士をあなどり給ひし故、明智がうらみおこる。自智ありとして、われひとりの智を用ひ、いさめをふせぎ給ひし故、平手中務いさめかねて自殺す。物をかろんじ給ひし故、敵をあなどりておそれず、用心なくして、京都本能寺の要害なき所に、小勢にて留まり給ひし故、明智其備なきをうかゞひ知りて、不意によせ來りしかば、ふせぎがたくて弑せられ給ふ。理にあたれる古人のことば、必ず違はず。

新字:只うらむらくは、みづからおごりて士をあなどり給ひし故、明智がうらみおこる。自智ありとして、われひとりの智を用ひ、いさめをふせぎ給ひし故、平手中務いさめかねて自殺す。物をかろんじ給ひし故、敵をあなどりておそれず、用心なくして、京都本能寺の要害なき所に、小勢にて留まり給ひし故、明智其備なきをうかゞひ知りて、不意によせ来りしかば、ふせぎがたくて弑せられ給ふ。理にあたれる古人のことば、必ず違はず。

書き下し

只うらむらくは、みづからおごりて士をあなどり給ひし故、明智がうらみおこる。自智ありとして、われひとりの智を用ひ、いさめをふせぎ給ひし故、平手中務いさめかねて自殺す。物をかろんじ給ひし故、敵をあなどりておそれず、用心なくして、京都本能寺の要害なき所に、小勢にて留まり給ひし故、明智其備なきをうかがひ知りて、不意によせ来りしかば、ふせぎがたくて弑せられ給ふ。理にあたれる古人のことば、必ず違はず。

現代語訳

ただ残念なのは、自らおごって士を侮られたので、明智の恨みが起こったことです。自分に知恵があるとして、自分ひとりの知恵を用い、諫めを拒まれたので、平手中務は諫めかねて自害しました。物事を軽んじられたので、敵を侮って恐れず、用心もなく、京都本能寺の要害のない所に小勢で留まられたので、明智がその備えのないのをうかがい知って、不意に攻め寄せてきたため、防ぎきれずに殺されました。道理にかなった古人の言葉は、必ず違わないのです。

解説

前段の『呂氏春秋』の三つの戒め(驕る・自ら賢いとする・物を軽んじる)を、織田信長の生涯に当てはめます。家臣を侮って明智光秀の恨みを買い、諫言を聞かずに平手政秀(中務)を自害に追いやり、油断して本能寺に小勢で泊まり討たれた、というのです。益軒は信長の武勇と功績を認めたうえで、この三つの欠点が命取りになったと分析します。優れた実績のある人ほど、驕りと独断と油断に気をつけよという教えは、経営者や指導者にとって重い戒めです。

この章句が説くこと

驕り油断信長諫言指導者

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