文武訓 / 文訓下之末
一書生は、書を多く讀みたるまでにて道理を知らず。文士は、詩文をかざりてたくみに作りたるまでにて實用なし。是を學問とするは非なり。かくのごとくなる用なき人を學者とおもひ、すべて、經史の學の實用あるをもすてて、無用の學と同じく心得て貴ばざるは、無學の人の不智なり。
新字:一書生は、書を多く読みたるまでにて道理を知らず。文士は、詩文をかざりてたくみに作りたるまでにて実用なし。是を学問とするは非なり。かくのごとくなる用なき人を学者とおもひ、すべて、経史の学の実用あるをもすてて、無用の学と同じく心得て貴ばざるは、無学の人の不智なり。
書き下し
一書生は、書を多く読みたるまでにて道理を知らず。文士は、詩文をかざりてたくみに作りたるまでにて実用なし。是を学問とするは非なり。かくのごとくなる用なき人を学者とおもひ、すべて、経史の学の実用あるをもすてて、無用の学と同じく心得て貴ばざるは、無学の人の不智なり。
現代語訳
書生は、書を多く読んだというだけで道理を知りません。文士は、詩文を飾って巧みに作ったというだけで実用がありません。これを学問とするのは誤りです。このような役に立たない人を学者と思って、経史の学問の実用あるものまでも捨てて、無用の学と同じように心得て貴ばないのは、学問のない人の知恵の足りなさです。
解説
ただ本を多く読んだだけの書生や、詩文を飾るだけの文士を学者と思ってはいけないと益軒は言います。さらに、そうした人を見て学問全体を役に立たないものと思い込むのは、学問を知らない人の誤りだと指摘します。一部の悪い例から全体を否定してしまう誤りは、今もよく見られます。「勉強しても役に立たない」と言う前に、本当の学問とは道理を知り実際に生かすものだと考え直すことが大切です。学びの価値を正しく見極める一節です。
この章句が説くこと
学者学問実用道理書生
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