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文武訓 / 文訓下之末

一書を讀まば玩味すべし。只一とほり讀みたるのみにては、其こゝろを自得しがたし。よくしづかに心にあぢはひて其理を知るべし、くはしく熟すべし。多くむさぼり見るべからず。益なし。一書をよんで、つゞまやかに、其要を守るはまことによし。廣くして守なきにまされり。されども、義理は廣大なり。ひろく學ばざれば義理詳ならず。熟せずして要約をも失ふ。たとへばあみを以て鳥をとるに、鳥のかゝる所は只一目なれど、あみ廣からざれば鳥かゝらざるが如し。學ひろからざれば、要を知りて守りがたし。

新字:一書を読まば玩味すべし。只一とほり読みたるのみにては、其こゝろを自得しがたし。よくしづかに心にあぢはひて其理を知るべし、くはしく熟すべし。多くむさぼり見るべからず。益なし。一書をよんで、つゞまやかに、其要を守るはまことによし。広くして守なきにまされり。されども、義理は広大なり。ひろく学ばざれば義理詳ならず。熟せずして要約をも失ふ。たとへばあみを以て鳥をとるに、鳥のかゝる所は只一目なれど、あみ広からざれば鳥かゝらざるが如し。学ひろからざれば、要を知りて守りがたし。

書き下し

一書を読まば玩味すべし。只一とほり読みたるのみにては、其こころを自得しがたし。よくしづかに心にあぢはひて其理を知るべし、くはしく熟すべし。多くむさぼり見るべからず。益なし。一書をよんで、つづまやかに、其要を守るはまことによし。広くして守なきにまされり。されども、義理は広大なり。ひろく学ばざれば義理詳ならず。熟せずして要約をも失ふ。たとへばあみを以て鳥をとるに、鳥のかかる所は只一目なれど、あみ広からざれば鳥かからざるが如し。学ひろからざれば、要を知りて守りがたし。

現代語訳

書を読むなら味わって読むべきです。ただ一通り読んだだけでは、その心を自分のものにすることは難しいのです。よく静かに心で味わって、その道理を知るべきです。詳しく熟させるべきです。多くをむさぼり見てはいけません。益がありません。書を読んで、簡潔にその要点を守るのはまことによいことです。広く学んで守るところのないのにまさります。けれども義理は広大です。広く学ばなければ義理は詳しくなりません。熟さないうちは要約も失います。たとえば網で鳥を捕るとき、鳥がかかるのはただ網の目一つですが、網が広くなければ鳥はかからないようなものです。学問が広くなければ、要点を知って守ることは難しいのです。

解説

読書の量と質についての益軒の考えがよく分かる一節です。まず、ただ通読するのではなく、静かに味わって自分のものにせよと言います。一方で、要点だけ守ればよいという考えにも反対し、広く学ばなければ本当の要点は分からないと説きます。鳥がかかるのは網の一目でも、網が広くなければ鳥は捕れないという喩えは見事です。資格試験の勉強や仕事の知識でも、要点だけの詰め込みは応用がききません。広さと深さの両立を目指したいものです。

この章句が説くこと

読書玩味博学要約学問

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