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文武訓 / 文訓下之末

一世間人の好むわざ、皆友に對し、或は從者を俟ちて行はる、我ひとりなしがたし。棊をかこみ連歌し、太刀をつかひ矛をふり、弓を射馬に乘り、音樂を奏し漁獵するの類皆しかり。只、讀書のみ獨なして、友を用ひず、古人に尙友する樂ふかし。いまだ見ざる書をよむは、良友にあへるが如し。すでに見る書を讀むは、故人にあへるがごとし。

新字:一世間人の好むわざ、皆友に対し、或は従者を俟ちて行はる、我ひとりなしがたし。棋をかこみ連歌し、太刀をつかひ矛をふり、弓を射馬に乗り、音楽を奏し漁猟するの類皆しかり。只、読書のみ独なして、友を用ひず、古人に尚友する楽ふかし。いまだ見ざる書をよむは、良友にあへるが如し。すでに見る書を読むは、故人にあへるがごとし。

書き下し

一世間人の好むわざ、皆友に対し、或は従者を俟ちて行はる、我ひとりなしがたし。棋をかこみ連歌し、太刀をつかひ矛をふり、弓を射馬に乗り、音楽を奏し漁猟するの類皆しかり。只、読書のみ独なして、友を用ひず、古人に尚友する楽ふかし。いまだ見ざる書をよむは、良友にあへるが如し。すでに見る書を読むは、故人にあへるがごとし。

現代語訳

世間の人が好む遊びは、みな友と向き合ったり、供の者を待ったりして行うもので、自分ひとりではしにくいものです。碁を打ち、連歌をし、太刀を使い矛をふり、弓を射、馬に乗り、音楽を奏で、漁や狩りをするたぐいは、みなそうです。ただ読書だけはひとりででき、友を必要とせず、古人を友とする楽しみが深いのです。まだ見ていない書を読むのは、良い友に会うようなものです。すでに見た書を読むのは、古なじみに会うようなものです。

解説

多くの娯楽は相手や道具が要るのに、読書だけはひとりで古人と友になれる、と益軒は説きます。「尚友」は『孟子』に出る語で、昔の人を友とすることです。初めての本は新しい良友、読み返す本は懐かしい旧友という喩えは、読書好きなら誰もがうなずくでしょう。人づきあいに疲れたときや、ひとりの時間が増える老後にも、本は変わらずそばにいてくれる友です。孤独を楽しみに変える方法として、今の私たちにも役立つ知恵です。

この章句が説くこと

読書楽しみ友尚友孤独

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