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文武訓 / 文訓下之末

又賢父兄あれども、其いましめをふせぎ、良師あれども其敎をうけず、書をよむことをこのまざれば、いたづらに日をむなしくするのみならず、無賴の惡少年を友とし、酒色をこのみ、美食をむさぼり、博奕し、淫樂をこのみ、非禮を行ひて學問をきらひそしり、道義をこのまず、一生おろかにして身ををはる。わが身のさいはひも富貴も一も用にたゝず、をしむべし。むかしもろこし張憲武といひし人、十一の可惜說をつくりて、昔、貧しき人の書を讀むことをこのみしこと、今の人、家富み師あれども、書を讀むことを好まざるは惜むべきことなり、といへり。

新字:又賢父兄あれども、其いましめをふせぎ、良師あれども其教をうけず、書をよむことをこのまざれば、いたづらに日をむなしくするのみならず、無頼の悪少年を友とし、酒色をこのみ、美食をむさぼり、博奕し、淫楽をこのみ、非礼を行ひて学問をきらひそしり、道義をこのまず、一生おろかにして身ををはる。わが身のさいはひも富貴も一も用にたゝず、をしむべし。むかしもろこし張憲武といひし人、十一の可惜説をつくりて、昔、貧しき人の書を読むことをこのみしこと、今の人、家富み師あれども、書を読むことを好まざるは惜むべきことなり、といへり。

書き下し

又賢父兄あれども、其いましめをふせぎ、良師あれども其教をうけず、書をよむことをこのまざれば、いたづらに日をむなしくするのみならず、無頼の悪少年を友とし、酒色をこのみ、美食をむさぼり、博奕し、淫楽をこのみ、非礼を行ひて学問をきらひそしり、道義をこのまず、一生おろかにして身ををはる。わが身のさいはひも富貴も一も用にたたず、をしむべし。むかしもろこし張憲武といひし人、十一の可惜説をつくりて、昔、貧しき人の書を読むことをこのみしこと、今の人、家富み師あれども、書を読むことを好まざるは惜むべきことなり、といへり。

現代語訳

また賢い父兄がいても、その戒めを拒み、良い師がいてもその教えを受けず、書を読むことを好まなければ、いたずらに日を空しく過ごすばかりか、無頼の不良少年を友とし、酒色を好み、美食をむさぼり、博打をし、淫らな楽しみを好み、非礼を行って学問を嫌いそしり、道義を好まず、一生愚かなまま身を終えます。自分の幸いも富貴も、一つとして役に立たず、惜しむべきことです。昔、中国の張憲武という人が「十一の可惜説」を作って、昔は貧しい人が書を読むことを好んだのに、今の人は家が富み師がいても書を読むことを好まないのは惜しむべきことだ、と言いました。

解説

前の段の続きで、条件がすべてそろっていても本人に学ぶ気がなければ、悪い友に流され、酒や遊びにおぼれて一生を無駄にすると益軒は嘆きます。張憲武の「可惜説」を引いて、貧しい昔の人が学んだのに豊かな今の人が学ばない逆説を示します。恵まれた家庭の子が必ずしも伸びるわけではないのは、今の子育てでもよく見られることです。環境を整えるだけでなく、学ぶ楽しさや目的を子ども自身が感じられるように導くことが親の大切な役目だと教えます。

この章句が説くこと

学問子育て富貴悪友読書

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